51.クロノ大闘技大会予選会③
「いやー、初戦から文字通りアツい戦いだったね」
「...シュン。全然上手くないわよ」
「くっ、手厳しいな!」
「ふふふ」
予選会Aグループの試合が終わり、俺達二人はなんとなく街を散策がてらぶらついていた。
「あーあ、次のBグループの予選会は明日かー」
「一日1グループなんだね。すぐ終わっちゃったし、一日でもっとやれそうなのに」
「そうねぇ...。まあ、主催者が身内の私が言うのも何だけど、何日かに分けてやった方が、その都度観戦料を取れるから運営側も儲かるんじゃない?」
「そういう事情もあるのか...」
「多分ね」
ローザがやれやれ、と言った表情で笑う。
と、その時。
「⁉︎」
久々に感知Ⅱが敵意を持った人物を自動感知した。
「ローザ。そのままの速度で歩きながら聞いて」
咄嗟にローザに小声で声をかける。
その人物はだいぶ離れた後方から少しずつ距離を縮めてきている。近付かれる前に引き離しても良いが、相手が既に敵意を持っているという事は、解決しない限り安心して外を歩けないと言う事だ。
「どうしたの⁉︎」
ローザは驚きつつも、ごく自然に辺りを警戒している。
「俺に敵意を持った誰かが後ろから着いて来てる」
「えっ⁉︎」
「振り向かないで!まだだいぶ離れた所にいるけどね」
「...どうして分かるの?」
「感知スキルさ。それは今は置いておいて、とりあえず追跡者をここで早めに処理しておきたい。ちょっと脇道に逸れて人気のない所へ行こう」
「分かったわ。この先の裏に丁度寂れた広場があったはずよ。少し狭いけどそこで良い?」
「ああ、そこで良い。行こう」
俺はローザの案内で横道に入り、少し歩いた所にある狭い空地に入ると、追跡者と、周囲に人がいない事を感知Ⅱで確認する。
裏道に入った俺達を見失うと思ったのか、追跡者は移動速度を上げ、程なくして空き地へとやって来た。
そいつはフードで顔を隠し、もはや隠れる様子もなく普通に歩いて近づいて来る。ローブを羽織るように着ているが、隙間から見える鎧を見ると魔導師ではなさそうだ。
「やれやれ、流石に追跡はバレていましたか」
「...だいぶ離れたところから様子を見ていたようだが...。俺に何か用か?」
「ふっ、そんなに警戒していただかなくても大丈夫ですよ。今からここで騒動を起こそうなんて気はありません」
「...」
「闘技大会の決勝でいずれ戦う事になるでしょうしね。今日は客席であなたを見かけたものですから、是非ご挨拶をと思いましてね」
「そっちは俺の事を知っているようだが、自分は名も名乗らず顔も見せずに挨拶とは、ずいぶんじゃないか?」
「おっと、失礼。それもそうですね」
男がフードを取る。ウェーブのかかったベージュの髪に少し眠たそうな二重の目、鼻筋が高く通っていて、いわゆるイケメンの部類だが、目の下のクマと常に余裕のあるニヤついた口元が好きになれない。
「私、ガニメデ公国から今回の闘技大会に参加しに来ました、シュトロームと申します。予選会グループCの参加者です。以後お見知り置きを」
恭しく、丁寧に深く頭を下げる。ガニメデ公国ってユディエルと紋次郎が怪しいって言ってた国だよな...。そんな所の人も参加してるのか...。
「そうか。知っているだろうが、ガルヴァリのシュンだ。お前が誰だか知らないが予選会を勝ち抜けたら決勝で戦うのを楽しみにしているよ」
「ふっ、それはありがとうございます。そちらのお美しい御令嬢もかなりの実力者とお見受けします。お相手することがあれば宜しくお願い申し上げます」
「ええ。分かったわ」
「...どうやら私はお邪魔なようですね。それではまた後日」
そう言うと、男は再びフードを深く被り背を向け去って行った。
「行っちゃった...。一暴れしてやろうと思ってたのに拍子抜けね」
「...」
「なんだかイケすかないヤツだったわね。...ちょっとだけカッコ良かったけど」
「...」
「...」
「...」
「...ちょっとシュン?冗談よ?」
「ローザ。決勝でヤツと当たったら...絶対油断するなよ」
「え?」
何故だか分からないが...。
シュトロームの事を観察眼Ⅱで見る事が出来なかった...。
「嫌な予感がするな...」




