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50.クロノ大闘技大会予選会②

戦闘開始と同時に隣の選手に襲いかかる者、両隣の選手を警戒する者、漁夫の利を狙い周囲の状況を見る者、行動はそれぞれだったが、一人特に目立つ行動を起こした者がいた。


タッタッタッタッ!


深緑のローブを纏ったその人物は、単身舞台中央に向かい走り出した。



魔導師か?俺なら下手に追わないが...



三人の屈強な戦士風の男達がローブの選手を背後から追い出した。


「へっ!いきなり背を向けるとは!バカなやつめ!」


「ククッ!バトルロイヤルでは背後を取られるのは致命的!まずは一匹、さっさと片付けるぞ!」


「了解っ!」



なるほど。どうやって同じグループになったかは分からないが3人組ってわけか。さて、どうなるか?


「くらえっ!」


「死ねえ!」


「おらあっ!」


丁度舞台中央で足を止めたローブの人物は背後から襲いかかる三人には目もくれず、罠にかかった獲物を予定通り仕留めるかのごとく、落ち着いた様子で両手を広げた。


「ふむ...三人だけか...。まあ良し。フレイムサークル!」


ゴオッッ!


ローブの男が手を広げると同時に、帯状の炎が男の周りを高速で回転しながら、襲いかかる三人を呑み込んだ。



「あっ!」


「ぎゃあ!」


「ぐわっ!」



一瞬にして全身を炎に包まれる三人の戦士。


「とどめだ...。フレイムピラー!」


今度は男が開いた両手を、空間を持ち上げるように上にあげる。

すると、男の周りを回っていた炎の輪が上に伸び荒々しく燃える大きな炎の柱となった。


『おおおおお!』


『きゃー!』


『わあああぁ!』


観客席からは派手な魔法に対する歓声と、凄惨な光景に対する悲鳴が入り混じる。


「いきなり凄いな...」


「ええ、フレイムから派生する別々の魔法を連続して使うなんて、相当の手練れね...。あの選手、侮れないわよ」


と、その時、三人の選手が炎の柱から同時に弾き出され、舞台中央から芝生エリアまで一気に吹き飛んだ。

...と言うよりは何か見えない力に引っ張られたようにも見える。

真っ黒焦げの三人が緑の綺麗な芝生にボロ雑巾のように投げ出されると、観客席の最前列に等間隔で設置されていた黒水晶が淡く光り、三人の選手はたちまち優しい白緑の光に包まれた。と思った瞬間、光は消え、そこには装備のコゲや肌の火傷も一瞬で完治した三人が呆然とその場に座り込んでいた。



シールドは舞台の上だけか。しかし、魔法の回復力は凄いけど、シールドを出るまでは普通に痛みとかはありそうだな...。



「序盤からド派手な魔法が炸裂!異国の魔導師グラン選手、いきなり三人を倒した!」



ヘイズ。実況もするんだ。なんだか娯楽の側面が強いな。まあ、観客から観戦料取ってるんだから当然か。



「異国と言うな!我は隣国アレグリア随一の魔導師、グラン!Aグループ優勝は我が頂く!」



今の間にも舞台上では激しい戦いが繰り広げられており、負けた選手が次々と芝生エリアに弾き出され、残りは10人程となっていた。


「意外と勝負がつくの早そうね」


「そうだね。あのグランって人も高ランク冒険者なのかな?」


「うーん。一応Aランク冒険者でも世界に数人しかいないから多分Bランクあたりじゃない?」


「そうか。しかし、モズって人も、ローザもAランクだし、これって実はかなりハイレベルな大会なのかな?」


「そうね。おじいちゃんもシュンを他国に見せびらかす事で国力がどうとか抑止力がどうとか言ってたし、国を代表するくらいの気構えでいた方が良いかもね」


グランも隣国随一と自分で言っていたな...。俺もシードされてるって事はアスリア代表みたいなものなのか...。


...もうそんなに強くなっていたとは...。



「さあ!一瞬にして残りの選手の数が半分になった!ここから各選手どう動くか!目が離せないぞ!」


他に目立つ人もいないようなので、グランの動きだけよく見ておくか。


と、舞台上の外周にいた選手達が一斉にグラン目掛けて走り出した。


どうやら、戦いながらもあの火柱を見て、全員がタイマンでは勝てないと判断したようだ。


しかし範囲攻撃を得意とする魔導師に、対多数はあまり意味が無いぞ...。


「チャージアロー!」


ヒュン!

ヒュン!

ヒュンッ!


中心に向かう選手達の中の一人から、観客席まで風切り音が聞こえる程の物凄い勢いを持った矢が数本、同時に鋭くグランに襲いかかる。


が...


「フレイム!」


ボッ!


グランの放った炎の魔法は、それらの矢を全て焼き捨て、そのままの勢いで弓を放った選手を襲う。


「くっ!」


女性の弓使いの選手はなんとか躱そうとするが...


ゴオオオッ!


「ああああっ!!」


グランの炎からは逃れられず、断末魔の叫び声もろとも、炎にその身を包まれた。


「フレイム!フレイム!フレイム!フレイム!」


その後もグランは休む事なく魔法を連発する。


「ぐあっ!」


「ぎゃあぁ!」


「たすけっ!ぐわっ!」


グランに向かう選手達は次から次へと炎に呑まれ、ついには誰一人中央に辿り着く事なく、各々が炎に襲われた場所で苦しみながら地面に転がりのたうちまわっていた。


「圧倒的だな。魔法の威力もコントロールも半端じゃない...」


「さすが自分で自国の随一だなんて言うだけの事はあるわね」


「ああ、決勝で当たる時は要注意だな」


舞台上では、選手達が炎に飲まれた順に芝生エリアへと引っ張り出され、グランのみが舞台上中央に残っていた。


「そこまでーッ!予選会Aグループ、勝者はアレグリア随一の魔導師ッ!グラン選手に決定致しましたーッ!!」


『おおおおおーッ!』


『わあぁぁー!』


ヘイズの終了の合図とともに観客席は割れんばかりの歓声に包まれ、舞台上の勝者を大きな拍手で讃えていた。






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