49.クロノ大闘技大会予選会①
クロノの闘技場は円形で、舞台を囲むように観客席が設けられており、外側に行く程席が階段状に高くなっている。
戦いが行われる舞台は石造りで、舞台と客席との間は10メートル程はあるだろうか?緑の綺麗な芝生が敷き詰められていた。
客席の最前列には黒水晶の柱が等間隔に設置されている。
芝生の外周をぐるりと一周するように囲んでいる事から、おそらく観客に戦いの被害が及ばないような仕組みがあるのだろう。
意外と規模が大きく、数千人は入るのではないかと思われる観客席は観戦者でほぼ埋まっている。
俺とローザは観客席の前の方に陣取り、闘技場の外で売られていた果実水を手に予選会が始まるのを待っていた。
「予選会はどんな風にやるんだろう?参加人数って多いのかな?」
「さあ?私も参加するのは今回が初めてだから実はあんまりよく知らないのよね」
「そうか。参加費さえ出せば誰でも参加できるんだよね?」
「そうね。本戦のトーナメントも5位までは結構な賞金が出るみたいだし、魔法の力で怪我もしないから、参加する人は多いかもね」
「へー。なら尚更予選会で本戦出場者を決めるのは大変そうだね」
「うん。まあ毎年大体本戦シード選手が優勝してるみたいだから、予選会から出る人達は本戦に出場できれば目標は達成したような物かもね」
「?どういう事?」
「予選会でも優勝すれば、闘技大会の後に傭兵や護衛の仕事を高値で請け負えるのよ」
「ああ、なるほど」
ゴウッ!!
突然舞台上の真上に球状の大きな炎の塊が撃ち上がった。
『おおお...』
ざわついていた観客達が一斉に感嘆の声をあげる。
その火の玉の出所に目を向けると、舞台中央に黒いマントとフードを被った人物が立っていた。
「おい、今のはまさか、炎玉じゃないのか⁉︎」
「ああ、間違いない。だとするとヤツは、炎玉のモズか⁉︎」
周りの観客達が再びざわめき出す。
「炎玉のモズ?」
「ええ、間違いないわね。モズ・フレア。現役の冒険者の中でも炎玉を使えるのは、異常者のあなたを除けば彼くらいね」
「ふーん」
って俺は異常者ですか!ローザさん!
「私と同じAランク冒険者で、確か去年の優勝者よ。噂だとドラゴンも倒した事があるらしいわ」
「おお、ドラゴン...」
やはりエルモナルにはドラゴンがいるのか。ファンタジー好きなら敵ながら憧れる存在だ。
しかし、炎玉って俺の使う獄炎玉の下の下のスキルだよな?それで一人しか使い手がいないAランク冒険者なのか...。
「皆静まれ!これより第99回クロノ大闘技大会予選会を開催する!」
炎玉のモズの声が広い闘技場全体に響き渡る。魔法か何かだろうか?意外と若そうな声だ。
「おおおー!待ってたぜー!」
「年に一度の楽しみだ!すげえ戦いを見せてくれよー!」
モズの開催宣言と同時に観客達のボルテージが一気に上がったようで、会場は歓声と熱気に包まれた。
「モズ・フレアさん。開催宣言ありがとうございました。ここからは私アスリア国クロノ出身ヘイズが司会進行を務めさせて頂きます」
⁉︎いきなりMC入ったと思ったら、ヘイズ⁉︎同じ名前の違う人か?クロノ城の門番ヘイズじゃないよな...?
あのヘイズがどんな声だったか思い出せない...。
まあそんなに大した事じゃないけど。
それよりも、日本にいる時に聞いた、マイクを通した時のような声だが...。
そういった装置があるのだろうか?
「ローザ、この司会進行の人何処にいるか分かる?」
「ん?えーとね。ほら、多分あそこよ」
ローザは俺達がいる席の右前方を指し示した。客席の最前列に関係者ブースのような所がある。一番見晴らしが良さそうだ。
目を凝らしてよく見てみると、見覚えのある人物がマイクのような物の前に座っている。
なるほど、あそこから実況的な事もする訳か。
...門番のヘイズが。
「さあ!それでは早速参りましょう!アスリアのみならず各国から集まった世界の精鋭達が、どのようなハイレベルな戦いを見せてくれるのか!予選会から実に楽しみであります!」
ヘイズ。盛り上げ役もやるのか。大変だな。
「念の為、知らない人のために闘技大会のルールをここでご説明しておきましょう」
ヘイズ。親切。よく聞いておこう。
「予選会はABC3つのグループに分かれており、それぞれのグループ優勝者が本戦、決勝トーナメントへ進出できます。決勝トーナメントでは予選会グループ優勝者3名と、実力を認められたシード選手3名。合計6名で争われます!」
シードは3名か。俺とローザで二人。あと一人は...さっきのモズって人か?
「今回の予選会参加者は各グループ20名!それぞれバトルロイヤル方式で行われ、最後に舞台に立っていた者がグループ優勝者となります!」
「バトルロイヤルか...。視野が広くないといけないから神経使いそうだなー」
「そうね。おじいちゃんにうまくシードにしてもらえて良かったわ」
ローザの言葉に果実水を飲みながら苦笑いで返す。
「説明は以上!最後に、今回もスポンサーとなり会場準備や賞金をご提供いただいた我らが菊一紋次郎陛下に感謝致します」
紋次郎。感謝されてる。あまり王様のイメージが無かったが、一応国王やってるんだな...。
「シュン!何考えてたのよ」
「あ、いや、別に何も...」
「ふーん...」
ローザ。勘が良いのか...?気をつけよう。
「さあ!それでは参りましょう!まずは予選会Aグループ!参加選手の皆さんは舞台上へお集まり下さい!」
ヘイズの掛け声とともに、客席の四方にある出入り口が開き、それぞれから武装した屈強な戦士達が入場して来た。
『うおおおー!』
『わあぁぁー!』
選手入場と共に観客達の歓声が沸き上がる。
出場者をよく見ると、かなり使い込まれた装備を身に付けている者が多い。実戦経験豊富なベテラン冒険者と言ったところか。
戦士達が各々円状の舞台の端に均等に間隔を開け陣取り武器を抜く。
「気絶、若しくは死に至るようなダメージを受けた場合、自動的に魔法で場外へ移送します!降参宣言をした者も同様です!」
「尚、舞台には客席に戦いの被害が及ばないようシールドを張ってありますが、そのシールドを出た瞬間全てのダメージは無かった事になる特殊フィールドとなっております!選手の皆さんは思う存分に戦ってください!」
その説明大事!直前に言う事か!
「それでは!選手達の準備も整ったようです!第99回クロノ大闘技大会予選会Aグループ!戦闘開始ーーッッ!!」
グワーン!
門番ヘイズの気合いのこもった開始の合図と共に、ドラのような大きな音が闘技場内に響き渡る。
こうして、波乱のクロノ大闘技大会は幕を開けたのであった。




