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47.ローザと戦闘訓練

「待って!ローザ!もう少し手加減して!」


俺とローザはクロノの闘技場へ来ていた。

闘技大会の予選出場者は大会前に闘技場を使用することはできないが、本戦にシードされている選手は他に使用者がいなければ自由に使えるらしい。

しかも魔法の力で怪我をすることもないそうだ。


「ふふ、シュン!どうしたの⁉︎ガルヴァリの煌星の名はただのお飾りなのかしら⁉︎」


笑みを浮かべながら余裕の表情でローザが両腕に着けたカタールを振るってくる。


踊るような動きに合わせて攻撃に転じるその様に一切の隙は無く、洗練された一流の踊り子ならではの動きだ。


キンッ!

キィィン!

キィィン!


「くそっ!」


あまりに素早い連続攻撃に、俺は魔法剣でローザの攻撃を受け止めるのが精一杯だった。


「おかしいわね?どうやって一晩でゴブリン10万匹を倒したのかしら?」


「くっ!ライトニング!」


近接戦闘は不利と見た俺は、連続で襲いかかる剣撃に耐えながらバックステップでなんとか距離を取り魔法で活路を開こうとするが...


「甘いわ!」


「⁉︎」


ローザが刃を立て右腕を前に出すと、カタールの根本の小手の部分が黄色く光り、ライトニングを吸い込んでしまった。


「ふふ、ごちそうさま。これはお返しよ!」


そう言ってローザがカタールを振ると、ライトニングが俺に襲いかかる。


「!なんだって⁉︎」


ドッ!


「ぐあっ!」


予想外の出来事に、回避が一瞬遅れ、胸部にまともにライトニングの一撃を受けてしまった。


ズザザッ!


俺は後方に5メートル程吹き飛び尻餅をつく。


「ごほっ!ローザ、その武器は一体...」


「ふふ、これはデゼルファング。アスリア王家に先祖代々伝わるマグよ」


「マグ?」


「...煌星だなんて大層な異名持ちなのに、マグを知らないの?」


「う、うん」


「そう。...マグって言うのは古代文明の遺産とでも言うのかしら。現代では、その作り方はおろか材質が何で出来ているのかさえも分からない強力な武器の事よ」


「ふーん...」


「このデゼルファングは今やって見せたように魔法を吸収して好きな時に発動できるの。いわゆる特殊な武器ね」


「特殊か、ちょっと見せてもらっても良いかな?」


「...特別よ?」


ローザはデゼルファングを外し俺に渡す。

相当希少な物だろうに。俺の事を信用しすぎなのか、それとも俺程度ならいつでも倒して武器を奪い返せると思っているのか...。


「マグって貴重?」


「当たり前じゃない!今現在発見されているのはそれを含めても世界にたったの3個しかないわ」


「えっ。そんなに貴重なんだ...」


「デゼルファングの他には双剣インビジブルと大剣ロードインパクト、他の二つは私も見た事がないわ」


「ふーん...」


渡されたデゼルファングを良く見てみると、確かに不思議な力を感じる。真っ直ぐ伸びたその刃は息を呑む程に美しく、見つめ続けていると今にも意識が吸い込まれてしまいそうだ。小手の部分は表面も縁も漆黒に彩られ、オニキスのようなその輝きは、とても古代の物とは思えない。


「とても綺麗だね...」


「ふふ、そうでしょう?なかなかの審美眼のようね」


「あはは、鑑定も使えるしね。そうだ、折角だからきちんとスキルで見てみようか?」


「え?シュンって魔法を使えるのに鑑定士なの?思いっきり非戦闘職じゃない...。って言うかマグともなるとそもそも鑑定は不可能よ?」


「む、そうなんだ...。まあ俺の職業に関しては少し特殊だから気にしないで。それに俺の鑑定はスキルレベルがⅡだから、一応見せてみて」


「?鑑定にスキルレベルなんてあるの...?」


「まあ、普通はないかも...。けどガルヴァリのウェインって言う、ギルドお抱えの武具屋も鑑定IIが使えるよ」


「ふーん。まあ、なら見てみてちょうだい」


ローザは未だ半信半疑なようだが...


「鑑定II!」


契約者:ローザ・キクイチ

名称:デゼルファング

種類:カタール(魔具)

効果:攻撃力2倍 素早さ2倍 獲得経験値10倍

特殊効果:左右其々に一発づつ、魔法・スキルを吸収し任意のタイミングで使える

代償:近しい者の命

右:モンジ・キクイチ

左:ミシェル・キクイチ


「なんだ、これは...」


「どうしたの?まさか見れたの?」


「見れたけど...」


そう言ってから俺は気付く。


しまった、見れなかった事にしておいた方が良かったか...。出会って間もない人間が知って良いものでは無い気がする。どう誤魔化したものか...。


「シュン、鑑定結果が見えたんでしょう?教えてよ」


ローザが凄んでくる。


「...」


「何を躊躇ってるか知らないけど、どうせシュンが教えてくれなくてもガルヴァリのウェインさんに見て貰うから同じよ?」


「そうか...なら、正直に話すよ。その前に、モンジさんとミシェルさんって...?」


「!どうしてシュンがお父さんとお母さんの事を知ってるの?」


「やっぱりそうか...。ご両親は今どうしているの?」


「父さんと母さんは...私が子供の頃に病気で亡くなったわ」


「そうか...変な事聞いてごめん」


「どうしてシュンが謝るのよ。もう小さい頃の事だし...、それにほら、私にはおじいちゃんがいるしね」


ローザが寂しさを紛わすように微笑む。


「そうか...」


「それで、なぜデゼルファングを鑑定した直後にそんなこと聞くの?」


俺は再び躊躇ったが、正直に話すことにした。


「ローザ、マグって言うのは魔法の武具か悪魔の武具のどちらかだ。もしかしたら後者かも知れない。確かに性能は物凄い物があるけど、その力を得る為には大きな代償を必要とするみたいなんだ」


「まさか...」


「...俺が見た鑑定結果は、魔の具と書いてマグ。攻撃力と素早さ2倍、経験値10倍。左右其々のカタールに魔法やスキルを吸収して好きな時にそれを使える。そして...」


「...」


ローザに見つめられる。


意を決し俺もローザの目を真っ直ぐ見ながら言う。


「代償として、近しい者の命...」


ローザは驚き、目を見開く。


「右はモンジさん。左はミシェルさん...」


「そんな...」


ローザは左右一対のカタールを見つめその場にしゃがみ込む。


「お父さん、お母さん...」


「ローザ、すまない。こんなショックな事、言うべきじゃ無かった」


目に浮かべた涙を拭いながら、ローザは首を横に振った。


「ううん。良いの。私もこの武器には何かあるんじゃないかと疑っていたの。だって、ご先祖様達だって家族や友人を何人も無くしているんですもの」


「そうなの?」


「ええ、ご先祖様達も半信半疑だったから、曰く付きであっても、この武器の力に取り憑かれ、その魅力に勝てずに、代々継承してきた過去があるのよ」


「そうなんだ...」


「お父さんもこれを継承した時に、私の二人の兄が魔物に襲われ亡くなったの。その時はこの武器のせいと気付く事は出来なかった...」


「...」


「けど、よくよく考えてみると...。父がおじいちゃんから王座を引き継ぐ事になって、戦いから身を引く時に私がこれを父から受け継いだんだけど、父と母が亡くなったのはそのすぐ後だった。こんな恐ろしい武器、世に出てきてはいけない物だったんじゃ...」


「...」

















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