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46.クロノ食文化

「死を呼ぶ⁉︎元Aランク⁉︎」


「ふふ、エルミナは夜に怪しく美しく光り、同時に生き物を引き寄せるフェロモンを放つの。引き寄せられた者は魔物だろうと動物だろうと人間だろうと、フェロモンを吸っているうちに気持ち良くなって、やがて脳を麻痺させられてその場で死んでしまう。そして死んだ後はエルミナ達の養分として吸収されるのよ」


なんて恐ろしい花なんだ...。気をつけないと...。あ、麻痺耐性向上があるからある程度は大丈夫なのか?


「いや、それより元Aランクって⁉︎」


「踊り子になる前は私も冒険者だったのよ。職業はミンストレル。バードの上位職よ」


「そうだったんだ...。驚いたよ」


「ローザ。それはもう昔の話であろう。今は戦いから身を引き、別のやり方で立派に生計を建てているではないか。もう自分を危険な目に合わせることはない」


「あら、おじいちゃんが言ったんじゃない。大怪我はしないから安心して良いって。ね!シュンくんも私と戦ってみたいでしょ?」


「うん...。Aランクの実力には正直興味があるかなぁ」


「ぬうぅ...」


「陛下、お孫さんを心配する気持ちは分からなくもないですが、Aランクにまで登り詰めた実力者。しかも闘技場では魔法の力で怪我をしないなら良いんじゃないですか?」


「むうぅ...」


「折角シュンくんが出場する気になってくれてるんだから、良いでしょう?って言うかおじいちゃんがダメって言っても私は予選からでも参加するからね!私の戦闘回数をなるべく減らしたいのなら、今ここで参加を認めて予選を免除しておいた方が良いわよ?」


「...シュン。儂はもう観念した。こうなったらローザはなかなか折れん。だったらむしろ背中を押してやるとするわい」


「やったー!さすが国王サマ!話が分かるー!」


ローザが嬉しそうに飛び跳ねる。

素直に喜ぶ様も可愛いなぁ...。


「シュンくん!本戦はトーナメント方式だからいつ当たるか分からないけど、当たった時はお手柔らかにね!」


「ああ、こちらこそだよ」


「ふふ。あっ、そうだ!三日後から始まる予選の様子、一緒に観ない?」


「良いけど、しばらく戦いから離れていたんだろ?戦闘勘を取り戻しておかなくて平気なのか?」


「それは本戦までには取り戻すわ!」


「本戦までってそんなに時間無いような...」


「そうよ。だからシュンくん手伝ってね!」


「えっ、うんー。まあ良いけど...」


「はい、決まり!楽しみだなー!」


戦うのが楽しみだなんて、見た目に反して戦闘狂なのだろうか?

いずれにしても相当の実力者なのだろう。


「ローザよ。戦いの勘を取り戻すのも良いが、シュンにクロノの街を案内してやってはどうじゃ?」


「おお!さすがおじいちゃん、良い事言うじゃない!じゃあ、そう言う事で!シュンくん!これから早速ランチでもどう?前にクロノに来た時に食べ物屋さんは結構回ったから色々良い所知ってるわよ」


「うーん。それじゃ折角だし、お言葉に甘えようかな」


「ふっふっ。儂の城でもてなしても良いが、城での食事と言うものは中々に堅苦しいからの。それよりも外で気楽に楽しんで、クロノの事を気に入って貰えると儂も嬉しい」


「分かりました。お気遣いありがとうございます」


「さー、それじゃー行こう行こうー。ふふふ。楽しみだなー。あっ、じゃあまたね!おじいちゃん!ありがとね!」


「し、失礼します!」


こうして俺はローザに半ば強引に連れられ、ランチを共にする事になった。




「ふっふっ。ローザのやつめ、シュンの事をだいぶ気に入ったようじゃの。二人の仲が良くなって、シュンが儂の身内にでもなってくれたら、これ程嬉しい事はないわい」



***



城を後にした俺達二人は、ローザの案内で大衆食堂のような店に来ていた。

エルモナルでは日本と違い、首都クロノでさえ綺麗で洒落た店は稀で、大概はこういった庶民的な店構えのようだ。


「さー、着いたよ!入ろう」


俺はローザに手を握られている事に緊張しつつ、店へ入る。外観に違わず内装も庶民的だが、清潔感があり雰囲気は良い。

店内には四人程が座れるくらいのテーブル席が幾つか有り、殆どの席が埋まっていた。


「なんか良いなー。俺こういうお店好きかも」


「ほんと?ふふ、良かった」


ローザは嬉しそうに微笑むと調理場にいる店員に声をかける。


「おばさーん。二人なんだけど、席あるかな?」


「あれま?なんだいローザじゃないか。久しぶりだね!元気にやってたかい?」


三角巾を被った恰幅の良い年配の女性が返事をする。どうやら知り合いのようだ。


「見ての通り元気よ!おばさんも相変わらず忙しそうだね」


「ああ、おかげさまでね!最近じゃ闘技大会も近づいてきて冒険者や見物人も増えたからね。有り難い事さ」


「ふふ、良かったわね」


「おっと、それより席にご案内しなくちゃね。ん?んん⁉︎えっ⁉︎ちょっと、あんた二人って、もう一人は男かい⁉︎」


「そうよ。シュンくんって言うの。ガルヴァリの冒険者なんだ」


「初めまして。シュンと言います」


「そうかいそうかい。シュンくん、ローザはこう見えてオテンバ、いや、元気がありすぎるように見えるけど一応れっきとした女の子だ。多少の事は大目に見て仲良くしてやっとくれね」


「は、はあ...」


「ちょ、おばさん変な事言わないでよ!シュンくんが誤解するでしょ!」


「はっはっは。冗談だよ!自分より強い男じゃないと相手にしないと言っていたあんたが、こんな可愛い男の子を連れて来るなんて、珍しい事もあるもんだと思ってね。あ、席はあの窓際の空いてる席に座っておくれ」


「もう、余計な事ばっかり言って。シュンくん行こう」


顔を赤らめたローザが俺の手を引き席へ向かう。ふとおばさんの方を見ると、微笑みながらウインクされた。


「仲が良いんだね」


「もー、恥ずかしい。確かに冒険者なんかやってたくらいだから、体力には自信あるけどさ。女の子だもん、気にしてる事をあんな風に言わないで欲しいよ」


「あはは、良いじゃない。元気で明るい女性って素敵だよ」


「そ、そうかな...?」


ローザが下を向いてモジモジしだす。


クロノの門で初めて会った時とだいぶ様子が違う...しおらしいと言うか何と言うか...。

とても可愛い。


「と、取りあえず注文しようよ。メニューは何があるのかな?」


「あっ、えっとね。ここはオススメのがあるんだー」


「それじゃ俺はそれで良いかな。田舎から出てきて食べ物のこととか良く知らないんだ」


「えっ。そうなんだ。それじゃ、ますます私が役に立ちそうだね!おばさーん!注文お願いー」


さっきのおばちゃんがいそいそと注文をとりに来た。


「はいはい。いつもので良いかい?」


「わあ、覚えてくれてたの?」


「はっはっは、そりゃそうさね!あんた毎日のように通ってくれてたしねぇ。ぱったり来なくなった時は何かあったのかと心配したものさ」


「えへへ、ごめんね」


「良いさ。冒険者なんて職業柄、一所には留まらないものなんだろう?分かってるつもりさ」


「うん。ありがと」


ローザが小さく謝り、おばちゃんが微笑む。


「で、シュンくんも同じで良いのかい?」


「あ、はい。それでお願いします」


「はいよ!すぐ準備するからね。少し待ってておくれよ」


おばちゃんは厨房へ下がると早速調理に取り掛かかる。


「どんな料理なんだろ?楽しみだなー」


「ふふ、ヌーダルって言ってね。ガルヴァリにも他の街にも、どこにも無いクロノの名物なんだ。初めて食べるならきっとビックリするよ」


ヌーダル...まさかとは思うが、地球で言うアレじゃないだろうな...?もし予想通りの場合、エルモナルと地球の食文化が似ていると考えられるが、そんなことがあるのだろうか?

いずれにせよ、ローザとしては俺がビックリして感動するところが見たいのだろう。

ひとつ大袈裟に驚いてみるか。


「へー。楽しみだなー。それならなるべく他のお客さんの食べてる物も見ない方が良いね!」


「ふふ、そうだね。そうしておいて」


それから、お互いの戦闘歴や得意な戦い方、食後の戦闘訓練を何処でどのように行うかなど話しているうちに二人分のヌーダルが運ばれてきた。


「おお!これがヌーダル⁉︎美味しそうな匂いだね!」


「でしょー?あ、待ってね。お姉さんが食べ方を教えてあげるから!」


「はい、よろしくお願いします」


見た目は予想通り完全にラーメンだ。地球でも好物だった。味も一緒ならこれはかなり嬉しい。


「ふふ、まずはね、こうしてスープを少し掬って味をみます」


「ふむふむ、こうかな?」


箸だけでなく蓮華まであり、ローザの真似をするように透き通ったスープを掬い一口口に入れる。


胡椒のようなスパイスが程良く効いた鶏ガラ塩ラーメンのようだ。


「何これ!めっちゃ美味しい!」


味はマジで美味い。地球でも滅多に出会えるモノではない。


「でしょー⁉︎良かったー。美味しいけど珍しい料理だからシュンくんの口に合うか心配してたんだ」


「いや、ほんとに美味しいよ。こんなに美味しいヌーダル初めて食べたよ!」


「ん?これ以外のヌーダルも食べたことあるの?」


「あ!いや、ヌーダルって初めて!いや、美味しいなー。この細いのも食べてみて良いかな?」


「勿論!これはね、麺って言ってね。食べる時はスープを良く絡ませて一気に吸い込むの!」


スススッ



一気に吸うと言った割にかなり大人しめに吸っている。

女の子らしさを演出しているのだろうか?

片側にまとめた長い髪を、片方の手で押さえながら控えめに啜る姿がまたなんとも可愛い。


俺は横目で他の客の様子を窺い、日本と同じように普通に音を立てて食べる客を確認する。


ズズーッ!


そして一気に麺を吸い込んだ。


「んー!麺も美味しい!ヌーダル美味しいー!」


「あはは、そんなに喜んでくれるなんて私も嬉しいな!シュンくんをここに連れて来て良かった」


「はは、こんなに美味しい料理を教えてくれてありがとう。良かったらこれからも色々教えてよ」


「喜んで!」


こうして俺達二人は中々良い雰囲気でお昼の時間を過ごし、午後からの訓練に臨むのであった。






バードの職業ランクアップは以下の通りです。


バード→ミンストレル→ワンダラー


ローザは職業ランク的には2番目と言うことになります。

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