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45.紋次郎と孫娘

「なんでよ⁉︎おじいちゃんがどうしてもって言うから来てあげたのに!私だって街に残って皆と一緒にガルヴァリを守りたかったのよ?」


玉座の間の前まで来ると、中から紋次郎と話しているらしき女性の声が聞こえて来た。

この人の順番が終わるまで中に入れないのだろう。中の会話が聞こえてしまう事に悪いと思いつつも、案内役の兵士が無言で動かないので俺も扉の前で待機する。


しかし、紋次郎さんをおじいちゃんと呼ぶなんて、孫娘だろうか?


「まあまあ、落ち着け。儂の話を良く聞くのだ。あのままガルヴァリにいたらお前の気性ではまた無茶をしたであろう?あそこには剣聖ユディエルがおる。任せておけば大丈夫だと考えたのだ」


「無茶とは何よ?いくらユディエル様でも一人ではどうにもならないこともあるわ!そんな時だからこそ私も残るべきだったのよ!おじいちゃんが私を必要としないなら今からでも遅くないわ!すぐガルヴァリに戻らなくっちゃ!」


「ローザ!落ち着けと言っただろう。もうお前が居なくても大丈夫だと儂が言ったのは、危機は既に去ったと言う事なんじゃ」


ローザだって...?まさかあのエルミナ・ローザか?


「...どういうこと?詳しく教えて」


「やれやれ、やっと落ち着いてくれたか。良いか。これから話す事はとても信じられんだろうが嘘偽りのない真実だ。心してきちんと最後まで聞くように」


「分かったわよ。どうぞ」


「ふむ。まず、そうだな。最近ガルヴァリに現れた凄腕の新人冒険者は知っているか?」


「ええ。噂だけはね。常識離れしすぎていてとても信じる気にならない噂だけど」


「そうか。儂もその者の話を聞いた時は到底信じられなかったが、どうやらそやつは本物らしい」


「本物?」


「うむ。おそらくお前が聞いた噂話は真実じゃ。そしてその者は今回のゴブリン大襲撃を一人で、しかも一晩で解決したらしい」


「何ですって⁉︎」


「儂も信じられんかったが、ユディエルから儂の所へ連絡が来たのじゃ。そやつが一人でゴブリンの大軍団を退け、街を救った。とな」


「そんな...。けど、ユディエル様がそんな嘘言うわけないし...」


「そうじゃ。しかもその数日前には、あのユーバーからも儂のところへ連絡が来たのじゃ。国に危機が迫りし時はその者を頼れ。とな」


「ユーバー⁉︎あの世界最強のSランク冒険者が⁉︎」


「うむ。その者はユディエルとも親交があったようでの。儂も一度会ってきたばかりだったのじゃが、若い普通の新人冒険者に見えたがのう...」


「ふーん。...それで?」


「ユディエルからの報告によると、人類側は街も人も全く被害無く敵を全滅させたそうじゃ」


「え⁉︎街も破壊されず、死傷者も無くゴブリン達を全滅させたの?」


「さよう。ゴブリンは少なくとも10万匹はいたそうじゃ。それを一人で。しかも一晩で倒し街を救ってくれたのじゃ」


「10万...そいつは何者なの...?」


「ふむ。実際会ってみるかの?」


「え?」


「シュン!そこにおるのであろう。入れ」



なぜ分かったんだ?


俺は慌てて玉座の間へ入る。


「しっ、失礼します。すみません。盗み聞きするつもりでは無かったのですが、順番を待っていたら聞こえてきてしまったもので...」


「ふっふっ。良い。おぬしの事を話していたのだしな。しかしやはりおぬしに一週間はかけすぎであったか。激戦の後にも関わらずもうクロノまで来てくれるとはの」


「いえ、お気遣いありがとうございます」


「...シュンくん。あなたが噂の凄腕新人冒険者、なの?」


「ローザさん。すみません。あの時は時間もなさそうだったから詳しくお話しできなくて...」


「なんじゃ、二人は知り合いか?」


「いや、知り合いと言いますか、街に入る時に少し話した程度で...」


「そうか、ローザよ。こやつがシュン。ガルヴァリの煌星シュンじゃ」


「シュンくん。ごめんね。私あの時知らなくて。シュンくんがガルヴァリを見捨てたみたいな言い方しちゃって...」


「いや、俺の方こそきちんと説明もせずにごめん」


お互い謝り、誤解が解けた所で微笑み合う。


「うぉほん!あー、時にシュンよ。今回はゴブリン大襲撃の功績を称え表彰するために呼んだのだが、それとは別にもう一つ用件があってな。聞いてくれると嬉しいのじゃが」


俺は慌ててローザから目を逸らし紋次郎に向き直る。


「な、なんでしょう?」


「うむ。実はのここクロノでは毎年冒険者の戦闘技能向上の為、闘技大会を開催しておっての。アスリアのみならず、諸外国からも冒険者や精鋭の騎士等が参加するのだ」


「はぁ...」


「今年はガルヴァリの事があったからの。中止の発表をしようと思っておったが、シュンのおかげで無事開催できそうなのじゃ」


「はぁ...」


「急な話なんじゃがの。何ヶ月もかけて準備してきて、三日後に予選開始。本戦は一週間後なのじゃが、是非これに儂の推薦枠で出てはもらえないだろうかの?勿論予選は免除じゃ。優勝賞品も望みの物を出来る限り用意しよう!」


「ええっ⁉︎俺が陛下の推薦で...ですか⁉︎」


「おじいちゃん...。よからぬ事を考えてるんじゃないでしょうね?」


横で聞いていたローザが紋次郎をジト目で睨む。


「な、何をバカな。言ったであろう。これはあくまで技能向上を目的としておる!つまりは、シュンの為、シュンと相対する者の戦闘技能向上の為なのじゃ!」


「ふーん。...なんて言ってるけど本当はどうせまた外国の冒険者とか、来賓相手にシュンくんの強さを見せて自慢したいだけなんでしょ?大きな大会だものね...」


紋次郎に目をやると...。どうやら図星のようだ。


「くっ。すまん!シュンよ!これは国同士での無用な争いを避ける為に必要なことなのじゃ!アスリアにはこれだけ強大な力を持った冒険者が居ると知れ渡るだけでも、それは大きな抑止力となるのじゃ!」


「なるほど。そういう事ですか」


「シュンくん、こんなの出なくても良いわよ。人の都合も聞かずに...。勝手なお願いなんだから」


「むっ。ローザよ、そう言わんでくれ。これはアスリアの民を守る為でもあるのじゃぞ?」


「だからそれが勝手だって言ってるのよ。どうしてシュンくんがそんな重荷を背負わなくちゃいけないの?」


「ぬぅ...。どうじゃ、シュンよ。勿論無理にとは言わんが...。出て貰えると助かるんじゃがの...」


紋次郎の声が徐々に小さくなり、最後の方が良く聞こえない。立派な着物を着て、オールバックの威厳ある顔立ちだったはずの菊一紋次郎陛下が、ローザの前ではやけに小さく見える。


「分かりました。どこまで出来るか分かりませんが、参加してみます」


「おお!そうか!助かる!何、これは本来の目的は本当に戦闘技能の向上じゃ。魔法で、殺人や手足を失うような大怪我はしないようになっておる。安心して参加してくれて良いぞ!」


魔法、凄いな。そんな魔法があるなら、魔物討伐の時に応用して安全に狩りが出来そうだが...。


「シュンくん!良いの⁉︎」


「あ、うん。まあ、他の人達の実力も見てみたいしね」


「はぁ、見た目は可愛い顔して、やっぱりきちんと男の子なのね...。良いわ。おじいちゃん!シュンくんを参加させるなら、私も出るからね!」


「な!何を申すか!お前にそんな危険な事させられる訳がなかろう!」


やっぱり危険なんじゃないか...。


「何を言ってるのよ!この私の、元Aランク冒険者、死を呼ぶ踊り子と言われた、エルミナ・ローザの実力を忘れた訳じゃないでしょう?」






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