41.ゴブリン大襲撃報告
「今回は本当に助かった。ありがとう。シュン」
大襲撃事件があった翌日、ガルヴァリからの早馬と無事に合流し、危機の知らせを受けたユディエルが街へ戻って来ていた。
お馴染みになったギルド長室で俺とローニン、バッシュ、シンディとハーマン、ウェイン、4つの出入口の護りについたメンバーが呼び出され、労いを受けていた。
「いえ、俺も不安はありましたが、なんとかなって良かったです」
「いや、被害が全く無くあのゴブリンの大軍団を退ける等、一国の軍隊でも不可能だ。街の危機、ひいては国の危機をも救ったのだから、もはやSランク冒険者として認められてもおかしくない程の大事だぞ」
なんてことだ。バッシュ達に追いつきたくてランクを早く上げたかったが、まさか一気にそこまでの評価を貰えるなんて。
「ありがとうございます。俺も冒険者ランクは早く上げたいと思っていたので、嬉しいです」
「まあ、そうは言ってもお前は今はまだFランクだ。いくつか飛び級は出来るよう本部連中に掛け合うが、いきなりSランクは難しいかもしれん」
世の中そんなに甘くはないか...
「分かりました。飛び級できるだけでも嬉しいです」
「お前たちも街を守ってくれてありがとう」
ユディエルが俺以外のメンバーにも礼を言う。
「いえ、俺達は本当に何もしていません。壁の上からシュンの凄まじい強さを茫然と見ているばかりで...」
ローニンが謙遜でもなんでもなく、ただ真実を伝える。
「本当に凄かったですよ!ついこの間知り合って冒険者になったばかりだったのに、見たことも無い凶悪なスキルを連発して...。強さで言ってもSランクは間違いないです!」
バッシュの言葉に皆一様に頷く。
「見たことも無いスキルか、スキル名は分かるか?」
「獄炎玉と剛雷撃です」
「ふむ...確かに聞いたことが無いな。首都クロノの国立図書館にでも行けば文献があるかもしれんが...。聞いたところによると属性を持った範囲攻撃らしいな?」
「はい。一発でおよそ50メートル四方の範囲に強力なスキル効果があります」
「そうか。一度は見てみたいものだ」
「シュンさん。敵を倒した時に敵から白い光の筋がシュンさんに吸い込まれていましたが、あれは何ですか?」
「そうだ、ウェイン。俺も見たぞ、シュン自身が眩しい程光り輝きながら敵を蹂躙していく様は神々しさをも感じたぞ」
「あぁ、あれは魔法の効果さ。ソウルイーターと言って倒した敵の魂を吸収し、体力と魔力に変換してくれるんだ」
「また聞いたことの無い名前の魔法だな...。効果も凶悪極まりない...。シュン。お前職業は一体何なんだ?」
「えーと...今はまだ職業を貰っていないので無職ですね...」
「無職のスキルなど存在するのか...?」
「無職のままレベルを上げた人なんて聞いたことが無いのでなんとも言えませんねー」
博識っぽい雰囲気のハーマンでも知らないらしい。それはそうだろう。俺の体はエト神が直接作りだした物なので普通とは違う。
「まぁ、前から言ってますけど、俺は異常で特殊なんで!でも皆と敵対することだけは無いですからそこは安心して下さい!」
「それもそうか。シュンについては我々の常識が通用せんことは前から知っている。今更深く考えるのは止めておくか」
いつも思うが、エルモナルの人達ってこんな簡単に納得してくれてるけど、大丈夫なのか?
研究対象とか人体実験とかされたらたまったものじゃないので好都合だが...。
「それはそうと、今回の件は通信魔法で紋次郎に報告はしておいた。シュン。お前のことを表彰したいそうだからクロノまで行って来て欲しいのだが」
「クロノ?」
「おいおい、いくら田舎から出て来たとはいえ首都のことくらい知ってるだろう」
呆れ顔でバッシュが言う。
「ああ、首都ね!知ってるさ勿論!」
初耳だっつーの!
いや、しかし、やっぱり…表彰とかそういうのあるのか...。
「ゴホン。分かりました。それは良いですが、いつまでに行けば良いのですか?」
「馬を飛ばしても三日はかかるからな。準備時間も考慮して一週間は見てくれるそうだ」
「分かりました」
「ここだけの話、お前を正式に表彰することで自分の国の戦力だと、何かと煩い諸外国に知らしめる意味合いが強いのだろう」
「なるほど。まあその事は予想はしてました。準備が出来次第出立しますよ」
「そうしてもらえると助かる。お前なら一日でクロノまで行けるだろうがな。それと今回の事は良い教訓になった。シュンがいてくれたから良かった物の、俺が急遽不在になってしまった時のガルヴァリの危うさが露呈した」
「確かに...」
「そこでだ!バッシュ、シンディ、ハーマン、ローニン、ウェイン!お前たちに重要な提案がある」
「そう来ると思ってましたよ...なんとなく言いたい事は分かってます」
バッシュが諦めた様に言う。その他のメンバーは何のことか分かっていないようだ。
「察しが良くて助かる。バッシュはガルヴァリ冒険者ギルドの副長を頼みたい。呪術師のシンディは援護術指南役を、魔導師のハーマンは魔法指南役、ローニンは街の警備隊の隊長、ウェインはギルドお抱えの武具屋となり兵士達の装備の面倒を見て貰いたい!」
「えええ!」
何のことか分かっていなかったバッシュ以外の4人は驚きの声を上げる。
「シンディ、ハーマン、冒険者としての放浪生活は一旦休止だ。この世で一番尊敬する自分の目標についていられるんだ。分かってくれ」
「うーん。私は良いけど...」
シンディがチラリと横のハーマンを見る。
「...そうだねぇー。ちょっとビックリしたけど。まぁそれも良いか。リーダーの指示には従うよー」
「僕も嬉しい申し入れです!途切れる事のないお客様を確保して貰えたような物ですから!」
ウェインにとっては有り難い話しでしかないだろう。
次に皆の目線が無言のローニンへ向かう。
「ローニン。迷っているのか?今回の件でエリバンの皆をうまく纏めてくれていたじゃないか。適任だと思うんだが...嫌か?」
「いえ、嫌では無いのですが...急だったもので...」
「嫌では無いか。...良いと言う返事と受け取って良いな。では皆頼んだぞ。準備等もあるだろうから、そうだな...一週間後から動けるようにしておいてくれ。バッシュとローニンの指導は俺が直々にやるから覚悟しておけよ」
強引に話を纏めたユディエルがニヤリと笑いながら強い目線で二人を見る。
「シンディとハーマンは戦闘職のギルド職員達に合流し色々教えてやってくれ。実戦経験が少ない者も多い。元々有名PTメンバーだったお前達なら皆も喜んで教えを乞うだろう」
「承知しました」
「了解でーす」
「さて!と、これで俺からの話は終わりだ。お前たち!特にシュン!今回の件では大いに感謝している。ありがとう!お前たちのおかげで何万人という人の命が助かった。これからも街の為に色々頼むこともあるかと思う。一方的なお願いで本当に申し訳ないができる限り協力してもらえると助かる!」
「はい!」
「ユディエル様、俺は特にギルドの役職とかも無いですし、これからも冒険者として世界を旅しても良いですか?」
「...やはりそう来たか。だと思って今回はあえてお前には自由でいてもらおうと考えた。その方がきっと味方でいてくれるんだろう?」
「ふふ、そうですね。ああ、それと、今回の討伐で便利な魔法を覚えたんです」
「ほう。どんな魔法だ?」
「通信魔法と瞬間移動です。いつでも遠くの人と話せるし、行ったことがある街には一瞬で移動できるようです」
「なんだと!?通信魔法はともかく瞬間移動なんて魔法聞いた事が...。いやそれより、シュン程の戦力がいつでもどこにいても自由に動けるということか...」
「とんでもないですね...」
バッシュが呟き、他の皆も驚きの表情で俺を見る。
「通信魔法は個人間で出来るようです。しかも便利なことに相手が通信魔法を持っていなくてもやりとりができそうです」
「...なん、だと?」
「通常の通信魔法は使い手同士じゃないと無理だが...。だいぶ性能が違うぞ...どうなっているんだ?」
「魔法やスキルにもレベルが設定されているんです。魔法のレベルが上がる事で性能が追加されました」
「また聞いた事がない事が起こっているようだな...。皆、もう、シュンだから。で納得することにしよう」
「...そうですね。もうシュンは人外です」
いや、まぁ、うん。神の子だし。反論は無いんだけどさ...。
「さて、一通り驚いた所で解散するか。シュン。なるべく急いでクロノまで向かってくれよ。地図を渡すからそれを見てくれ」
「分かりました。ありがとうございます」
「分かってると思うが、地図は大変貴重だ。くれぐれも大事に扱ってくれ」
「はい。ではこれで失礼します」
「皆もそれぞれこれから忙しくなる。頼んだぞ!」
「はい!」
こうして驚きの報告会は終わり、俺は国王が待つ首都クロノへと向かう事になった。




