37.高嶺の花と隠れ肉食系
ガニメデ公国と闇の眷属の話をした後は、エリバンからの移住者の宿屋への割り振りと仮設小屋建設のスケジュール、冒険者と軍の準備の進捗等を確認し、お開きとなった。
宿の割り振りはギルドの方で案内してくれるとの事で、俺は一度エリバンの皆の所へ行き、無限袋に入れていた荷物を全員に返した。
その後、サーシャやエリック、ローニン達と別れの挨拶を済ませると、エイミーが用意してくれた自分の家へと向かう。新築の家だから見ればすぐ分かるとユディエルから聞いていたので、期待を胸に教えられた方向へ歩く。
その家はギルドからウェインの武具屋に向かって行った、そのまた先に建っていた。
「おお...、綺麗な外観だな」
言っては悪いが、エルモナルの街並みを日本と比べると、どの家も一昔前の佇まいをしていたので期待していると言ってもそこまでではなかった。
しかし、エイミーが俺に用意してくれた家は、サイズはそこまで大きく無いが、緑の芝生が敷き詰められた広めの庭が有り、壁は一面真っ白で清潔感のある、見た目が綺麗な二階建ての家だった。
俺の為に用意したそうだが、一体いつの間に建てたのだろう?
「まあ、良いか。庭付きだし、大きさも丁度良い。必要以上に広くても掃除が大変だしな」
浄化があるので掃除の心配は無いのだが。
俺は貰った鍵で中に入り内装を確認する。
新築と言うだけあってどこも綺麗だ。
有り難いけど、家具が何も無いな...。
ゴブリン討伐の報酬は家具一式にしよう。
ベットだけでもあれば宿屋にお世話にならなくて済むんだけどな...。
「近所だし、ウェインに家具屋の場所でも教えてもらうかな」
俺はそう思い立ち、早速ウェイン武具屋へと向かった。
「おーい、ウェイン。いるかいー?」
無遠慮にウェイン武具屋に入って行くと、店の奥にウェインがいた。
と、もう一人。黄色いポニーテールの女の子が。
「あれ?エイミー?」
「あっ、シュンさん⁉︎な、な、何でここに⁉︎」
「いや、ちょっとウェインに会いに...」
ここは商品陳列棚の奥だ。関係者以外立ち入り禁止区域だ。...つまりそう言う事だろう。
ギルドの受付嬢が武具を買いに来たわけじゃ無いだろうし。
ウェイン。いわゆる隠れ肉食系男子だったわけか。
「シュンさん⁉︎剣の鞘はまだなんです。すみません!」
「ああ、うん。良いのだよ。また今度で。あ!こうしちゃいられない!俺は家具屋に行かないといけないんだった!じゃあそう言う事で、お二人さん。またね!」
俺は二人の返事を待たず、棒読みのセリフを吐き、白々しくお店を去った。
高嶺の花だと思ってたのに、やるな。ウェイン。
武具屋を出た俺は、仕方ないので道行く人に家具屋の場所を教えて貰い、金貨2枚でキングサイズのスプリングが効いた豪華なベットを購入した。一人で広いベットに寝るのが夢だったのだ。
無限袋に買ったベットをしまい、家具屋に驚かれたが、愛想笑いで誤魔化しギルドへ向かう。
手持ちが少なくなったので魔物を換金しなくては。
ギルドはお昼休みなのか、職員もまばらだ。
いつか見た、エイミーじゃない受付嬢に挨拶し、いつもの如く奥のジドールを訪ねる。
「ジドールさん。お昼中にすみません。素材の買い取りをお願いしたいのですが、今大丈夫ですか?」
「おう、シュンじゃねぇか。久しぶりだな。噂じゃゴブリンを1000匹倒したらしいが...。あれはダメだ。金にならんゴブリンは買い取れんぞ」
食後の一服をしていたらしいジドールは、煙管を置くと立ち上がりこちらに目を向ける。
「ええ、知っています。これはどうです?」
俺はオーク30匹の死骸を例の如く並べ始める。
「おいおい、こりゃあ...!」
オークの相場は分からないが、群れでいたのでランクD相当だ。多少期待できるはず。
「カッカッカ!さすがはシュンだ!毎回期待を裏切らず驚かせてくれる!」
ジドールは急に上機嫌に笑い出した。
「まさか、ランクEのオークとは!しかもこれだけの群れ...ランクD相当の戦闘難易度だ。さすがに苦戦したんじゃ...いや、無傷だな。とても人間業とは思えんな...」
「あはは、まあ...、査定の方をお願いしますよ」
半笑いで頼むと、ジドールも苦笑いでオークを査定し始める。
「ふむ、全くの無傷で倒してる者もあるの。一体どうやったんじゃ」
「水魔法で溺死させてみました」
「なんと...。水魔法でそのような事が出来るとは...」
ブツブツ呟きながらも全ての査定が完了したようだ。
「終わったぞい。首を刎ねられているのも状態が良い。一匹5万、全身の状態が良いものは剥製にして装飾品に使われたりもする希少品だ。一匹20万ってところかの」
おお!溺死させたのは予想以上に成果となったようだ。
「5万が25匹。20万が5匹、合計で225万ゼニルだ...。相変わらず稼ぐのう...。まあ普通の冒険者はそんな便利な入れ物持っておらんからの。素材として使える価値のある部分だけを持って来たり、討伐証明部位のみしか持ち帰れん。魔物をまるまる全て売り捌けるだけでも相当換金効率が良いわな」
「はは...」
「まあ、こっちもこいつらを素材に加工して売り捌くからな。その分ギルドも儲けが出るのだから有り難い話しだ。おお、そうそう、シュン用にここの報酬用の資金も少し多めに持てるように申請しておいたぞ。200万くらいならすぐ用意できる。少し待っとれ」
ジドールはそそくさと事務所に入って行き、程なく手に革袋を持ち出てきた。
「225万入っとる。一応勘定してから受け取ってくれよ。大金だからな」
俺は袋を受け取り中を覗く。中には金貨が2枚と、金貨より少し大きく厚みのある白金貨が2枚、銀貨が5枚入っていた。
「白金貨...初めて見ました。100万ゼニルですか?」
「おう、そうじゃ。くすみのある銀貨より一層美しい光沢じゃろう」
確かにジドールが言う通り輝き具合が銀貨とは別物だ。
俺は腰に下げた無限袋に貨幣をしまった。
「有難うございました。また宜しくお願いします」
「おう、こちらこそありがとよ!また魔物を大量に持ってきてくれよ!」
ジドールに礼を言い、ギルドを後にする。
「ギルドも今は忙しいだろうから、ランクアップ試験はゴブリン騒動が落ち着いてからにするか」
俺はギルドの近くにある宿泊に使っていた宿屋の食堂で昼飯を済ませると、自宅に戻り買ったばかりのベットを出し勢いよく倒れ込んだ。
「あ゛ー。なんか色々あって疲れたなー」
俺はデカいベットにうつ伏せのままうとうとした。今日はこのまま久しぶりの休日にしよう。
俺は眠気に素直に従い、瞼を閉じ眠りに着いた。




