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3.神



(ここは、建物の中、だよな?)


荘厳な神殿の中に入ったものの、そこは入る前と同じく辺り一面真っ白で、今開けた扉と目の前の道以外は何も無い。


床から10センチ程高くなっているその道は、正確な直線で真っ直ぐに伸びており、その先は見えない程遠くまで続いている。


建物の中のはずなのに天井が無く、横に目を向けると壁も無い不思議な空間が永遠に広がっていた。


(この道を進むのか...?終わりが見えない...)


何処へ行けば良いのか分からないが、とりあえず目の前の道を進んで行くと、道の先の空間にサッカーボールくらいの光の塊が静止した状態で静かに浮かんでいるのが見えてきた。


そして、光の塊の5メートルほど手前まで近づいた時、視界全体が一瞬強く光ったと思うと、光の塊は消え失せ、代わりに杖を手に持ち神御衣(かむみそ)に身を包んだグレーの長髪の老人が姿を現した。


俺は突然の出来事に驚き、たじろぐ。身体があったら確実に腰を抜かしていただろう。


無言でこちらを見ている老人の表情をよく見てみると一見厳しそうな顔つきをしているが、その目の奥にはとても暖かいものを感じる。


「馳 瞬一君...じゃな?」


「...はい」


「ふぉっふぉっ、その様子だといきなりの事で戸惑っているようじゃの。まぁ、当然と言えば当然じゃが」


病院の医者や看護婦には俺の声は届かなかったが、この老人にはちゃんと聞こえているようだ。さすが不思議ワールド。身体がなくても意思の疎通は普通にできるようだ。


威厳と優しさを兼ね備えた老人は、一瞬だけ何かを考え、ゆっくりと話を続ける。


「今おぬしに起こっていることを少し説明させてくれんかの」


「...」


「そう簡単には受け入れられないかもしれぬが、おぬしは今肉体を失い、意識だけ、いわゆる魂だけの存在になっている」


「つまり俺、いや、私は死んだという事ですか?」


「ふぉ、簡単に言うとそういう事じゃな」


なんだって?俺の死を簡単に、だと?

いくら不思議ワールドとは言え、なんと非常識なじいさんだ。少しだけイラっとするぞ。

ふぉ、って笑ったし!笑い事じゃないぞ。


「意識体相手じゃと感情が丸分かりじゃぞい。...まぁ、そう怒るでない」


話す時の癖なのか、たまに片目を閉じながら老人は続ける。


「おぬしは確かに死んだ。あちらの世界ではな。死を迎えた魂は普通なら一度浄化され、記憶を失った後、また新たな魂として何らかの生物へと転生する。しかしおぬしの場合、ある適性を持っていた為、勝手ながら儂が魂をこちらの世界に呼び込んだのじゃ」


「魂を呼び込む...俄かには信じられませんが、今のこの状況が証拠ですか...。けど、そんな事が出来てしまうあなたは一体何者なのですか?」


「ふぉ、これは失礼。おぬしの説明の前に儂の事について説明するべきじゃったの」


少し勿体振るようにしてその老人は言った。


「儂の名はエト。こちらの世界では神と呼ばれておる...」


言った後、真っ白な歯を見せながら、大袈裟に右手を突き出しサムアップして見せる。


「またずいぶんとフランクな神様ですね...」


多分そうではないかと薄々思っていた俺は、その言葉をすんなり受け入れた。


一度死んで、我ながら物事に対してだいぶ柔軟になったらしい...。





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