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28.駐屯基地エリバン


どれくらいの距離を走っただろう?今までにないスピードで走り続けていると、道の先に小規模な村のような物が見えてきた。


基地と言っていたが、それなりのコミュニティを形成していたらしい。


しかし、建物は軒並み破壊され、燃えた跡がある家屋が多い。


「ゴブリンにやられたか...」


よくよく見ると、ガルヴァリに行くのに使うのであろう馬や家畜の死骸が所々に転がっている。


生き残りはいないか...。


俺は皮服の属性付与を解除し、念の為感知スキルで村の中を見てみる。



「そういうことか!」


結構な数の緑の人影が何軒かの家の地面の下に居るのが見えた。


ずっと隠れているのか?食糧等は大丈夫なのだろうか?


俺は一番大きな家の床に隠された扉を見つけ、ノックする。


「誰かいるか!助けに来たぞ」


少し待つと床の扉が横に少しだけ開き、中から40代くらいの一人の男が顔を覗かせた。


「おまえは...ガニメデ公国の者か?」


「ガニメデ?いや、俺はガルヴァリから来た。冒険者のシュンだ」


「ガルヴァリから?君一人か?この基地の状況を知ってて来てくれたのか?」


「あぁ、そうだ。基地の中には無事な人がまだ何人かいるようだが…食糧は大丈夫か?」


「食糧は後2.3日ってところだ。しかしこの地下シェルターは広くない。何人も狭い所に詰め込まれているせいで、皆の精神状態は限界だ。いつゴブリンどもに見つかるか分からないしな」


やはりゴブリン達の仕業か。


「しかし、助けに来てくれたのに申し訳ないが、君の様な子供一人で何ができるんだ?とても状況が好転するとは思えないが...」


「大丈夫。こう見えてもゴブリンの群れを蹴散らす事くらい出来る。あんたはこの基地のリーダーか?」


「ああ、俺はローニン。このエリバン駐屯基地の警備隊副隊長、いや、今は隊長がやられて俺が隊長か...」


ローニンは哀しげな目で俯く。


「そうか。なら、悪いがもう少し中にいて皆の気持ちを落ち着かせていてくれ。ここらの周辺にいるゴブリンどもを全滅させる」


「なんだと⁉︎バカを言うな!千匹近い大群にやられたんだぞ⁉︎俺達警備隊も精鋭を自負しているが、圧倒的な数の前に戦いようもなく、ほぼ一方的に地下シェルターに逃げるのが精一杯だったんだ!基地とは言え、村規模のこのエリバンが一日で落とされたんだぞ⁉︎一人でどうやると言うんだ⁉︎」


「ふふ、安心してなって。俺は少しばかり異常らしいからさ」


「なんだそれは⁉︎いや、そんな事はどうでも良い!ここまで無事に来れるくらいの力があるなら、ガルヴァリに戻ってもっと大規模な救助隊を呼んで来てくれ!」


「いや、だから大丈夫だってば。もう30分くらい中で待っててくださいって」


「いや、ダメだ!君がどれだけ強いか知らないが、物事にはやって出来る事と出来ない事がある!どう頑張っても出来ない物は出来ないんだ!」


「うーん。困ったな。それが出来るからここまで来たんだけどな...。ここでそれをやるなと言われると、ここまで来た意味がない」


「...そこまで言うなら、俺も一緒に戦おう。こう見えてレベル32の剣士だ。シュン、君のレベルと職業を教えてくれ」


「えっ。...えーと、そ、そんなので人の強さは分からないさ」


素直に言ったらまた止めにかかるだろう。俺は誤魔化すように含み笑いをした。


「不安だな。言いたくないならまぁ良い。危なくなったら俺がフォローしてやるが危険と判断したらすぐ撤退するぞ」


そう言ってローニンは地下から出てきた。

背が高く引き締まった体躯をしている。

爽やかイケメンだ。さぞモテる事だろう。


「分かった。ただ、俺の戦い方は仲間にも被害が出る可能性がある。戦闘中はなるべく俺に近づかないでもらいたい」


「?どんな戦い方をするのか分からんが、まぁ、近づかなければ良いんだな?」


「あぁ、俺に近づくと火傷するぞ」


...事実だが、言ってて恥ずかしいセリフだ。


「...悪いがそういう趣味は無いぞ?」


「いや、俺も無い。今のは事故だ。気にしないでくれ」


「とりあえず基地の外へ出よう。これ以上建物に被害を出したく無い」


「そうだな」



しかし、魔笛を使っても大丈夫だろうか?

レベル32ならある程度自分の身は守れるか?

魔笛なら俺への敵対心を持って襲ってくるだろうから心配ないか。


程なくして俺達二人は基地の外に来た。


「さあ、じゃあ始めるが、俺は任意の敵を呼び集める事が出来る。その能力を使うぞ」


「何?探索して倒して行くんじゃないのか?敵を呼ぶなど聞いた事が無いぞ」


「まぁ、とりあえず俺の戦い方を見ていてくれ」


そう言って俺は魔笛を吹いた。


感知に気を向けると、肉眼では何もいないかのように見えていた森の、四方八方至る所から赤い反応が見えてきた。一体今まで何処に隠れていたのだろう...。


「本当に大群だな...」


程よく敵が近づいてきた所で武器と防具にスキルを使う。


「属性付与!フレイム!属性付与!フレイム!」


身体から熱を帯びたオーラが立ち登り、武器は青白く燃え盛る。


「あちっ!なんだそのスキルは⁉︎」


ローニンは初めて見るスキルに困惑する。


「詳しく説明しているヒマはない。もうそこまでゴブリンの群れは来ているぞ。気を引き締めろ!」


そして俺は覚えたての魔法を唱える。


「ソウルイーター!」


魔力を使い果たし、身体から力が抜けると同時にゴブリンの大群が肉眼で見える程の距離に現れた。


「本当に呼び寄せたのか!たっ、大群すぎるだろ!退避だ!シュン!逃げるぞ!」


俺はローニンに向かいニヤリと笑いゴブリンの大群に向き直る。

基地を背にしているので、前と左右からゴブリンの波が押し寄せてくる形だ。感知で見ると、エリバン基地の外は視界一面真っ赤に染まり、何匹いるのか検討もつかない。


「衝波斬!」


⁉︎ギャッ!


疲労感に襲われながら、なんとか正面のゴブリンの壁に向かいスキルを使う。


衝波斬の範囲内全てのゴブリンが身体を切断され絶命する。

死んだ数匹のゴブリンから光が流れ込んでくる。


「よし。一気に全快になったかな?」


俺は体に力が戻った事を確認すると、今度は魔法を唱えた。


「フレイム!ライトニング!アイス!ウォータ!衝波斬!フレイム!ライトニング!アイス!ウォータ!衝波斬!」


全ての攻撃が一面壁と化しているゴブリン達に残らず命中する。


一つの魔法で5匹以上は倒しているだろう。


感知で基地の入り口まで下がっているローニンの無事を確認しつつ、俺はゴブリンどもを近づける事なく倒し続ける。


「フレイム!ライトニング!アイス!ウォータ!衝波斬!」


絶え間無くゴブリン共を倒し続けているせいで、魂の吸収も物凄いことになっている。


オーラの輝きとソウルイーターの吸収の輝きで俺の周りは一際明るい。


ローニンから見たら俺は眩しく光り輝きながらゴブリンどもを倒し続けているように見えるだろう。




...何回魔法とスキルを使っただろう?基地の周りがゴブリン共の死骸で埋め尽くされてきた。


幸い、予想した通りゴブリン共は俺目掛けて襲って来ているので、ローニンや基地内部に向かおうとする者はいない。


俺は正面の死骸の山に突っ込み、フレイムを付与した剣で手当たり次第にゴブリン共を斬りつける。


ザシュッ!ゴオッ!

ギャッ!


ザシュッッ!ゴオッ!

ギャッ!


斬っては燃え、斬っては燃え、ゴブリン共はただただ俺にやられる為にここへ来たような物だ。


一振りで2.3匹を倒しながら、たまに魔法やスキルを織り交ぜ、体当たりでゴブリン共を燃やす。


そうこうしているうちに、ローニンを見る為に発動していた感知に、赤い影が少なくなってきた。


「はぁ、やっと終わりそうだ」


ソウルイーターで疲労感は感じない物の、作業感が出て来ていた俺は狩の終わりを素直に喜ぶ。


一体全部で何匹倒したのだろう?


そして、この戦闘の後、レベルはどうなるのだろう?

そんな期待を抱きつつ、俺は最後のゴブリンを斬ったのであった。



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