25.狼、精算
「あ!シュンさーん。おかえりなさい!」
俺達二人は街に戻りギルドに来ていた。ランクアップの為にレベル20まで上げたかった所だが、ウェインの疲労を考えたらやむを得まい。
「エイミー。ただいま。早速なんだけど依頼達成報告良いかな?」
「はい!シュンさんの事だから、報告はまた大量にありますか?」
「うん。また裏の倉庫で良いかな?」
「分かりました!」
ウェインと共にエイミーの後ろをついて行く。
「シュンさん。あの受付の子エイミーさんって言うんですね」
「え、あ、うん。そうだよ」
ウェインはああいう子がタイプか。そうかそうか。
「いや、別になんでもないんですよ!ただ聞いただけですよ!」
何も言ってないのに顔が赤いぞ。ウェインよ。
「分かってるよ!さ、魔物を査定して貰おう」
「は、はい」
倉庫に入るとお馴染みのじいさんがデスクワークをしていた。
「よう!にいちゃん!また魔物を大量に持ってきてくれたのか?」
「ジドールさん。今日も沢山ですけど、宜しくお願いします」
「おう。任しときな。どれ、獲物は何だ?」
「今日はまずはホーンラビットと...」
言いながら俺は床へホーンラビットの死骸を並べて行く。
最初に狩った1匹とさっき狩ってきた5匹、合わせて6匹だ。
「6匹か。2人PTにしたら多い方だが、にいちゃんにしちゃ少ないんじゃねぇか?」
ジドールはニヤニヤしながら冷やかす様に言ってきた。
「あは、今日のメインはこっちですよ」
そう言って今度はウルフを床に並べ始める。
「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10」
「ちょっちょっちょっ!シュンさん?ウルフはランクFですが、こんな数の群れになったらランクE相当の強敵ですよ!
一度に10匹も相手にしたんですか!?」
「えーと、まだいるんだよね...」
『えっ⁈』
エイミーとジドールが声を合わせて驚く。
俺は次の列にもう10匹。また列をずらし10匹。と言った具合で、合計58匹にもなるウルフの死骸を並べ終えた。
『...』
「えーと...」
固まっている二人に何と声をかけたら良いか、ウェインと顔を見合わせ苦笑いする。
「すみません。査定の方を...」
「...あ、あぁ、しかし、この量は...。ウルフが街の近辺でこんなに大量発生したなんて報告は無かったぞ?」
「あぁ、それは、まぁ、色々あるんですよ!」
「ふぅむ...そんなので納得しても良いものか...。こないだのワーウルフと言い、今回のウルフ大量発生と言い、ウルフ系の魔物達に何か異常が起こっているのかもしれん」
ワーウルフは分からないが、ウルフに関しては異常なのは明らかに俺のせいだろう。面倒なので言わないが。
「エイミー。一応ギルド長に報告しといてくれ。こっちの処理はワシがやっとく」
「わ、分かりました!では、シュンさん失礼します!」
「あぁ。あ!エイミー。こっちはウェインって言うんだけど」
「え?あ、知ってますよ。武具屋のウェインさんですよね?シュンさんとお知り合いだったんですね。冒険者になるなら今後もお付き合いがあるかもしれませんね。宜しくお願いします」
「あ、よ、よろしく」
さっきより更に顔が赤いぞ。ウェインよ。
「では、報告に行きますので」
ウェインの気持ちを知ってか知らずか、エイミーはとびきりの笑顔で去って行った。
「ごほん!さて、数には驚いたが、今回の素材買い取りはあまり期待できんぞ。ほぼ焼けちまってるからな」
「あぁ、やっぱりそうですか。まぁ、仕方ないですね」
「ま、毛皮はダメだが、牙や爪、肉はなんとかなる。まずはホーンラビットを見るか。おおい、お前達!少し手を貸してくれ!」
ジドールはギルド職員を数人呼び、その職員達が手慣れた様子で解体作業を始める。
「切断されてはいるが、ツノは全部綺麗に残ってるし、毛皮の状態もまずまずだ。素材は1匹1000ゼニル。6匹で6000ゼニルだな。ホーンラビットは討伐依頼も出ていたな。3匹が一回分で5000ゼニルか。6匹いるから、依頼二回分で10000ゼニル。合計16000ゼニルだな」
数が少ないしこんなものか。しかしジドールはさっき、二人PTにしたら多い方だと言っていた。更にこの報酬を二人で分けるとなると、普通に冒険者として生計を立てるのはなかなか厳しいのかもしれない。
「さて、問題のウルフどもだな。牙、爪、肉は纏めて2000ゼニル。ウルフの依頼は1匹で依頼達成だ。一回5000ゼニルだな。素材と合わせて、1匹で7000ゼニル。58匹で、えぇと...406000ゼニルか。ホーンラビットと合わせて422000ゼニルでどうだ?」
「はい、充分です。ありがとうございます」
「よし、ちょっと待ってくれよ」
ジドールは倉庫内に併設されている事務所に入り、布袋を手に間も無く戻ってきた。
「ほれ、報酬だ。大金だぞ。一応中身を確認しとけ」
「ありがとうございます。また頼みます」
「おう、こちらこそまたよろしくな!」
俺は袋の中の金貨が4枚あることを確認し、そのうち2枚を自分の袋に入れ、残りを袋ごとウェインに差し出した。
「あの、僕何もしてないですけど...。半分以上あるじゃないですか」
「うん。まぁ、見てもらった通りこのくらい半日で稼げるしさ!鑑定と観察眼を覚えられたのは実はウェインのおかげなんだよね。そのお礼ってことで」
「?分かりました。シュンさんがそう言ってくれるなら遠慮なく頂いておきます。ありがとうございます!」
俺は微笑み、頷いて返す。
「さーて、ウェインもレベル的には一人前になれたし、この剣の鞘の方を進めて貰って良いかな?」
「もちろんです。今度はあんな事にならないように気をつけますね!」
「ああ、宜しく頼んだよ」
そうしてウェインは自分の武具屋に戻って行った。
さて、昼飯でも食べてレベルを20まで上げるとするか。
「あ!良かった!まだいた。シュンさーん!」
「あ、エイミー。どうしたの?」
「あの、ギルド長が緊急のお話があるそうです!二階のギルド長室へいらして貰ってもよろしいですか?」
「あぁ、分かった。すぐ行くよ」
エイミーの様子がさっきまでと違って何やら深刻だ。
俺は嫌な予感を抱きながら、エイミーの案内でユディエルの待つギルド長室へと向かった。




