22.ウェインの才能
盗賊とのひと騒動後、一度ウェインの武具屋に戻り、取り返した剣用に仮の鞘を貸してもらった。これで堂々と表を歩けるぞ。
その後、俺とウェインは町外れにある教会に来ていた。
建物自体は少し古そうだが、庭先の植栽などは綺麗に整えられており、清潔感がある。
「ここが教会か。思ったより立派だね」
「いやいや、ここはいくつもある教会のうちの一つですよ。ここガルヴァリはこの大陸の中心都市ですから、街の中央にはもっと立派なエト神信仰の総本山、エト神殿がありますよ」
「へぇぇ。そうなんだ」
お世話になった神様だが、あまり興味を持たないまま教会の大きな扉を開く。いきなり聖堂があるのかと思いきや、中に入るとそこは小部屋になっていて左と右に各々部屋があり、正面には再び大きな扉があった。
「こんにちは。お祈りですか?」
正面扉の横にカウンターがあり、そこに座っていた修道女が声をかけてきた。
「こんにちは。ちょっとこの子の才能を見て頂きたくて」
「こんにちは。よろしくお願いします」
「才能覚醒ですね。畏まりました」
「才能覚醒って言うんだ...仰々しいね」
「ふふふ、神父様は才能の有る無しを見てくださるのは勿論ですが、その才能を開花させてくれるのも神父様のお役目なのですよ」
ウェインに小声で言ったのが聞こえていたようで修道女さんが教えてくれた。
「な、なるほど、それで才能覚醒なんですね!素晴らしいお力ですね。是非宜しくお願いします!」
「はい、では診断料として10万ゼニルをお支払い頂けますか?」
「あ、はい。これで、お願いします」
俺は袋からワーム狩りで得た金貨一枚を見えないように隠しながら袋から取り出し、修道女さんに渡した。
「ありがとうございます。では、正面の扉を開けそのままお進みください。エト神のご加護がありますように」
「診断料ありがとうございます。必ずお返しします」
「あぁ、いいよいいよ!俺が言い出した事なんだし。10万ゼニルくらい半日もあれば稼げるからさ」
「そうですか。ではお言葉に甘えさせていただきます」
そして、二人で扉の前に立つ。俺も入って良いのかな?
「...なんだか少し緊張しますね」
「うん。まぁ、頑張ってどうなるものでもないし、気楽に行こう」
「はい」
俺達二人は扉を開け中に入る。
扉の向こうは日本で結婚式を挙げる時に見るような内装になっていて、祭壇の上に神父が静かに立っていた。
「才能の覚醒だね。こちらへ...」
神父はこちらが何も言わなくても全てを察し、俺ではなくウェインを壇上に呼んだ。
「どれ、...ふむ。君、名前は?」
「ウェインです」
「ウェイン...。目を閉じて気持ちを楽に、深呼吸していなさい」
神父はウェインの額に右手をかざし目を閉じて何かを感じ取っているようだ。
ウェインも目を閉じ静かに深呼吸している。
「よし、君の才能の種を見つけた。今からそれを開花させるぞ」
そう言った次の瞬間、神父の手が神々しく光り輝き、ウェインの額も同じように光りだした。そしてその光は次第に大きくなり、二人を優しく包み込む。
エト神様、ウェインにも良い才能を授けてくださいよ!
才能とはその人が元々持っている資質なので、厳密に言うと授かるものでは無いのだが、つい祈ってしまう。
二人を包んでいた光は少しずつ弱く小さくなり、やがて消えて無くなった。
「...」
「ウェイン、君は全ての物の本質を正しく見る事ができる、鑑定の才能を持っているようだ。これからは見習い鑑定士となり自分を鍛え、人の役に立つ事を行いなさい」
「分かりました。ありがとうございます」
ウェインが見習い鑑定士か。確かに武器を見る目は一流だったよな。
「ウェインおめでとう!」
「あ、ありがとうございます。はは、やっぱり戦闘職じゃなかったみたいです」
やっぱり男の子だもんなー。戦闘職が良かったんだろうなぁ。
「そのようだね。だけど武具屋をやっていくにはだいぶ良い才能だったんじゃない?」
「言われてみればそうですね。武器にしろ防具にしろ価値が分かるのはこれから先役立ちそうです!」
「ふふ、よし、それじゃいよいよ魔物狩りと行こうか!」
「はい!」
あれ?待てよ?他人と一緒に戦う時の経験値配分はどういう仕組みなのだろう?
バッシュ達は三人ともほぼ同じレベルだったけど...。分かるかなー?教えて!俺の知識!
パーティ設定
他人とパーティを組んだ場合、経験値は基本的にパーティ内で均等に分配される。但し、レベル差が開くほど補正が入り同じパーティ内でレベルの低い人には経験値が入りにくくなる。
ふむふむ。なるほど。均等分配ならレベリングも楽かな?
俺は楽観的に考えつつウェインと共に街の外へと向かった。




