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17.盗賊ハガネル

俺の名はハガネル。見習い盗賊ハガネルだ。

背が高い割に体の線が細く、ハリガネなんてバカにするやつもいるがそんなの俺は気にしない。

人の価値など、そいつが何を成したかで決まるものだ。見た目や職業など関係ない。


その日俺はいつものように冒険者ギルドに来ていた。もちろん依頼を受けて人の役に立とう。なんてことは全くもって考えていない。ギルドの看板娘エイミーが目当てだ。


「よう、エイミー。調子はどうだ?もし良かったら少し俺と話さないか?」


「ハガネルさん...。いつも言ってるじゃないですか。勤務中は忙しくてそんな暇は無いんです。依頼を受注しないのならお帰りください」


「つれないねぇ。だがそんなエイミーも悪くないぜ」


「はぁ、いい加減にしてください。あんまりしつこいとギルドマスターを呼びますよ」


「...剣聖ユディエルか...。分かったよ。また日を改めて来らぁ」


「...」


チッ。やつの名を出されちゃ引き下がるしかねぇ。

しかし、少しくらい相手をしてくれても良いじゃねぇか。こっちはなりたくも無い見習い盗賊なんぞに就職させられて、何も悪い事はしていないのに世間から白い目で見られるわ女には避けられるわで散々な人生なんだ。


はぁ、盗賊なんかじゃなく剣士の才能でもありゃぁなぁ...。世の中は不平等で、理不尽だぜ。


エイミーにあしらわれたものの、行く当てもない俺はギルドの隅の椅子に腰掛けギルド内をぼんやり眺めていた。


ふと気づくと、いかにも新人だと分かる冒険者が何やらエイミーと揉めているようだ。嫌がるエイミーに無理矢理言いよってるんじゃないだろうな...。俺のエイミーに馴れ馴れしく近づきやがって。


俺はそいつに気づかれないように聞き耳を立てる。


「そ、そんなわけないじゃないですか!お盆いっぱいのワームがそんな小さな袋に入るなんてありえませんよ!」


「あっ。シーッ!シーッ!あまり大声出さないで!」


...俺は見てしまった。新人冒険者がワーム討伐依頼を受け終えて報告に来た所を。

そしてその新人冒険者が腰に下げている異常な巾着袋を。


あんな代物を手に入れたら一体どれくらいの値段で売れるだろう...。確実に一生遊んで暮らせるだけの額にはなりそうだ。それだけの金持ちになればエイミーだって思い通りになるに決まっている。


「クックックッ、どうやら俺にもようやく運が向いて来たようだぜ」


ギルドの奥に入って行くエイミーと新人を見て俺は人知れずほくそ笑むのだった。



***



夕方、俺は見慣れない部屋の一室で目覚めた。

あぁ、宿屋のベットか。ステータスを確認した後いつの間にか寝てしまっていたようだ。

今何時だろう?部屋には時計のような物は見当たらない。

エルモナルには時計という物が無いのか?


どうしよう。このまま夜飯にしてそのまま明日まで寝てしまっても良いが...。


いや、やっぱりウェインと試し斬りの約束をしているし、ささっと済ませてしまうか。


ギルドが閉まっても困るし、飯より先に手頃な魔物の情報と、あれば依頼も受けてしまうか。

ギルドはすぐそこだしな。


俺は装備を整え、宿屋の二階から降りギルドへ向かった。



「うわぁ...」


ギルドの中に入ると、そこには1日の依頼を終えた冒険者で溢れかえっていた。

魔物の匂いと血と汗の匂いが入り混じっているのか、結構臭う。

浄化もメジャーなスキルではないのだろうか...。

次からは空いている時間に来ることにしよう。


しかし、こんな混雑時にエイミーに話を聞くのも申し訳ないな。依頼ボードの方は割と空いてるし、依頼だけ見ておくか。


そう思い、人混みを掻き分けて依頼ボードの前に進む。


一応Gランク依頼から見ておくか。


...


Gランクはワームの討伐依頼の他には、貴族の屋敷の清掃や、建築関係の作業手伝い、鉱石類の採掘、運搬など、直接命に関わらない比較的安全な依頼ばかりだ。

生活系の依頼は報酬は貰えるけどLVは上がらないとハーマンが言っていたな。


では、Fランクの依頼は...

依頼ボードは、ランク毎に掲示している場所が分けられているので、少し横にずれ、Fランクの依頼に目を向ける。


...



さすがにFランクになると魔物の討伐系依頼が増えてくるな。

その中でも何となく良さげなのはこの辺りか。


・キラーワーム5匹の討伐

・ウルフの討伐

・ゴブリン3匹の討伐

・ホーンラビット3匹の討伐


キラーワーム...ワームの進化系か?キラーって名前からして危険そうだ。

ウルフやゴブリンはおそらく見つかったら襲ってくるタイプだろう。


となるとホーンラビットか。

依頼書にはツノの生えたウサギが描かれている。

地球じゃウサギと言えば可愛い小動物だが、エルモナルのウサギはどうだろう...。

討伐依頼が出るくらいだから、ツノに刺されて死んでしまう人もいるのかもしれない。

地球のイメージのままでいるのは危険と思っておこう。


衝波斬があるしな。遠距離でなんとかなるだろう。


俺は依頼書をカウンターに持ち込もうとしたが...


カウンターはギルド職員を増員して数名で対応しているものの、冒険を終えた冒険者達の報告でごった返している。


また改めてくるか。

ワーム討伐も死骸があれば事後でも依頼達成扱いしてくれたしな。先に討伐してしまっても問題ないだろう。

討伐している間に依頼を他の人に受けられたらどうか分からないが。


そう思い外に出ようとした時、誰かが俺に声をかけてきた。


「シュンさん!」


「あ、エイミー。受付けの仕事は良いの?」


「良いんです!良いんです!それより依頼の受注ですか?どれにします?決まっていたら受け付けますよ」


「え、一応決まってはいるけど...皆こんなに並んでいるのに良いの?」


「良いですよー。ここで私に依頼書を渡して貰えれば!」


とびきりのスマイルでエイミーに言われ、列に並んでいる冒険者達には申し訳ないがお言葉に甘えさせて貰う事にするか。


「それじゃこのホーンラビット討伐の依頼を良いかな?」


「はい!確かに承りました!ホーンラビットはワームの平原を少し南下した辺りに生息しています。発達した後脚のジャンプ力を利用した鋭い角攻撃に気をつけてくださいね!」


「分かったよ。ありがとう。早速行ってくるね!」


俺はギルド内の匂いに堪えきれず足早にギルドを去った。


「あ!ちょっとシュンさん!シュンさん!


...行っちゃった。夜は魔物だけじゃなく盗賊にも気をつけないといけないのに...」


エイミーの心配そうな視線が俺の背中を見送っていた。

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