15.ランクアップ試験 後編
試験開始と同時にユディエル教官が猛烈なスピードで距離を縮めてくる。
俺が防御の構えを取る間も無く、ユディエルの剣が襲いかかる。
ギイィィン!
辛うじて剣で刃を受けるが、誰かと剣で打ち合う事など経験の無い俺ではさぞ素人感満載の立ち回りだろう。
「くっ、手が」
おまけにあまりの威力に手が痺れてしまい、剣を持っているのがやっとだ。
「くそっ、せめて一太刀だけでも!」
長期戦では絶対に勝ち目は無い。短期決戦でできるだけ自分ができる事を見せて力を認めてもらうしかない。ステータスも上がり多少は戦えるはずだ。
「おっと!」
俺はユディエルに斬りかかるが、ことごとく躱されてしまう。
その時、ユディエルが俺の斬撃を躱しバランスを崩した。
!チャンスだ!
俺は数少ない隙をつくべく力よりスピードを重視し突きを放つ!
「ふ。まだまだ甘いな」
罠か!ユディエルは俺の動きを予想していたかのように、突きを回避し、逆に前のめりにバランスを崩した俺の背後から斬りかかる。
しかし、予想してたのはこちらも同じだ。
俺は前のめりの状態から踏みとどまらず、そのまま前転してユディエルの攻撃を回避し、振り向きざま切り札を使う。
「衝波斬!」
「なんだと!?」
俺が放った衝波斬は、ユディエルの不意をついた。
ガイィン!
俺が放った斬撃をユディエルは咄嗟に剣で受け、数歩後ずさってなんとか耐えた。
「おい...おまえはまだ無職だよな?」
獲物を狙う鋭い目つきだ。
「...そうですが何か?」
「衝波斬は見習い剣士で覚えるスキルだ。なぜ無職のお前が使える?」
「えっ。そうなんですか」
また異常なところを知られてしまったか?
「あっ!」
気づくとユディエルが目前に迫っていた。
「多少驚いたが、まだまだ地力が伴っておらん!」
ドッ!
横向きにされた剣を胴に受け、俺はそのまま5m程吹っ飛ばされ地面を転がった。
「グハッ!ゲホゲホッ」
腹に鈍痛が響く。苦しく息ができない。
「ヒ、ヒール!」
俺は自分の腹に向かいヒールを使う。
手の先が緑の光に包まれ、その手を当てた腹部から痛みが引いてゆく。
⁉︎
「やれやれ、使えるはずのないスキルの次は使えるはずのない魔法ときたか。しかも回復魔法。もはや何でもありだな」
ユディエルは呆れた顔をして軽く笑う。
「フッ、どういうカラクリか分からんが、エイミーの言う通り確かに規格外のようだな」
そう言ってユディエルは剣を下ろす。
「試験は終了だ。俺を一瞬でも焦らせたやつは久しぶりだ。冒険者シュンのランクFへの昇格を認めよう」
ユディエルから闘気が消え失せたのを見て、俺も全身から緊張が無くなり力を抜く。
「俺はユディエル。剣聖ユディエルだ。このガルヴァリギルドのギルド長だ」
「剣聖⁉︎ギルド長⁉︎」
この人が、バッシュが偉大な人と言っていたギルドマスターか。
そんな凄い人が試験の教官なのか?
「感謝しろ。本来ギルドマスターは試験官などやらん。エイミーのやつが、期待の新人冒険者が来たというから直に見てみたくなってな」
エイミー、ランクアップの話をしっかり覚えてたんだな。
「そうでしたか。光栄です」
「早速ランクF登録をして新たな依頼をこなすと良い。次のランクアップ試験も楽しみにしているぞ」
「はい。ありがとうございました!」
「シュンさん!やりましたね!おめでとうございます」
エイミーが笑顔で駆け寄って来る。
「あぁ、ありがとう」
「にいちゃん中々やるじゃねぇか!さすがワシが見込んだ男だな!」
「ちょっと、ジドールさん!シュンさんを先に見つけたのは私ですからね!」
ジドールも自分の事のように嬉しそうだ。
そんな二人の様子を見て俺もなんだか嬉しくなる。日本じゃ仕事で大成功しても、ここまでの充実感は得られなかったよなぁ...。
「シュンさん!早速ランクF登録をするので受け付けに行きましょう!」
「あぁ、行こう、ジドールさんも応援ありがとうございました!」
「何、また大量の魔物でも持ってきてくれることを期待してるぜ!頑張れよ!」
「はい!ありがとうございました!」




