11.荒稼ぎ
「あ、シュンさん。どうしました?」
俺が戻るのが早すぎたので、エイミーは依頼の報告に来たとは思ってもいないだろう。
「あぁ、ワームの討伐が終わったんで、その報告に来たんです」
「えっ?さっき行ったばかりじゃないですか。虚偽報告はいけませんよ?あまり悪質な物だとギルドの業務妨害で罰せられる事もあるんですから!」
「いや、本当なんだ。討伐証明は魔物の死骸で良いかな?」
「それでも良いですが...。見たところ死骸も持ってないですよね?」
エイミーの態度が硬化してくる。
「あ、それはこの袋に入ってるから...」
俺は腰の袋を指し示す。外から見た袋のサイズは小さく、明らかに5匹も入っていない。
「...」
「...何処か死骸を置ける場所はあるかな?」
苦笑いしながら俺は尋ねる。
ゴト
エイミーは無言で金属のお盆のようなものを机に置いた。
「それじゃ...」
俺はエイミーの冷たい視線を浴びながら、袋からワームを取り出しお盆に載せて行く。
5匹載せた所でちょうどお盆がいっぱいになった。
「...」
エイミーはまた無言だか、目の色が明らかに変わった。信じられないような目でお盆の上のワームと俺の腰の袋を何度も見る。
「あの、この袋はちょっと特別で...。見た目はあまり変わらないかもしれないけど、意外と内容量入るんだ...」
やはり激レアアイテムだったか。と思いつつ、苦しい言い訳をする。
「そ、そんなわけないじゃないですか!お盆いっぱいのワームがそんな小さな袋に入るなんてありえませんよ!」
「あっ。シーッ!シーッ!あまり大声出さないで!」
高価な物を持っている事はあまり知られない方が良いだろう。幸いまだお昼前な事もあり、ギルド内にはほぼ人はいなかった。
仕方ない、エイミーには見られたからには正直に話すか。
「実はコレじいさんの形見で、沢山物が入る魔法が付与されてる袋なんだ。あんまり高価な物だと分かると狙われるかもしれないから、内密にお願い」
「あぁ、すみません。見たこともない事だったので驚きすぎて...。そんな便利な物が世の中に存在するなんて...」
どうやら俺が思っている以上に貴重な物のようだ。これは剣や防具についても黙っていた方が良さそうだ。
「ところで、これで討伐依頼は完了で良いのかな?」
「あ、はい。ワーム5匹で2500ゼニルですね。素材の買取もできますがどうします?」
「あ、やってもらおうかな。一匹いくらになるんだろう?」
「ワームの中にある糸袋から取れる糸は生活用品として何かと使えるので一匹200ゼニルになります。5匹で1000ゼニルですね」
「良かった。あと200匹くらいあるんだけど全部良いかな?」
「...?失礼、今なんと?」
「あ、あの...あと200、多分正確にはそれ以上います...」
「にわかには信じられませんが...。ここにはそれだけの数を置ける場所がありませんので、倉庫に行きましょう。」
そう言ってエイミーはカウンターの奥に入り、代わりの受付嬢にカウンターを任せ、倉庫に向かう。
「ジドールさん。すみません。ワームが大量に討伐されたかもしれないです」
倉庫に着き、デスクワークを行っているジドールにエイミーが声をかける。
「おぉエイミー。ワームか。大量とはどれくらいだ?」
書類から顔をあげたジドールが、老眼鏡を外しながら聞いてくる。
「多分200以上はいるそうです」
袋に回収する時に大体でしか数えていなかったし、分断されたものもあるのではっきりとした数字は分からない。
「200?200匹か?にいちゃん昨日バッシュ達と一緒にいた子だよな?何かの冗談か?」
ジドールは訝し気な表情でこちらを見る。
「実は、とても信じられないんですが、シュンさんの場合もしかしたら本当かもしれないんです」
「?ふーん。まぁいい。もしそれが本当なら証拠のワームを見せてみい」
「はい。地面に置いていって良いですか?」
「あぁ、しかし肝心のワームはどこに...」
俺はジドールの疑問の声をよそに、袋からどんどんワームを取り出していく。
地面に並べられていく大量のワームを見て、エイミーもジドールも言葉を失っている。
10匹並べたら次の列に10匹。100匹並べたところで、場所をずらし、同じ要領でもう100匹。
最後に端数となったのは20匹、依頼の5匹と併せて合計225匹狩ったようだ。
「こ、これは一体...。おぬし何者じゃ!?」
「ね!?ね!?だから言ったでしょ!本当なんじゃないかって!」
二人ともだいぶ興奮しているようだ。少しは予想していたがやっぱり大事なんだな...
「あの、聞きたい事は色々あると思うんですが、とりあえずこれを処理してもらって良いですか?あまり人に見られたくないし、話を進めたいので」
「う、うむ。分かった。225匹だな。えぇと200ゼニルで225匹だから...45000ゼニルだな」
「あ、待って下さい。ワームの討伐依頼は常設依頼です。225匹なら全て依頼としてカウントすることができますよ」
依頼の方は一匹500ゼニルだから112500ゼニル。素材の買取りと合わせると15万7500ゼニルか。
「じゃぁ全部そうするように頼みます」
まだ昼前だぞ。討伐と死骸回収で3時間程かかったから、半日で一月暮らせる分くらいは稼いだんじゃないだろうか...
なんて楽な世界なんだ。ワーウルフのような危険な魔物を狩らなくても余裕でボロ儲けだ。
「すみません。スキルについて聞きたいんですけど、魔笛ってスキル知ってますか?」
「魔笛?聞いたことがないな。」
「私も色々な冒険者と毎日話をしていますが、そんなスキルは聞いたことがありませんね。どんなスキルなんですか?」
「あ、いや、俺もじいさんから聞いただけで、効果までは知らないんだ」
やはり魔笛は一般的ではないらしい。これも黙っておいた方が良いか。
「とにかく報酬を用意してきますね。ワームの方はジドールさんお願いします。」
「おう、分かった。小僧には色々聞きたい事もあるが、まぁ次の機会にしといてやるわい。わしもこう見えて忙しいんでな」
毎回報告の時にこんな大事になるのは避けたいが、毎日ちまちま報告を小出しにするよりは早く強くなってバッシュ達と一緒に戦えるくらいにはなりたい。
レベルを上げてランクを上げて強い魔物の依頼を受けたいしな。
そういえばLv10になったからランク昇格試験を受けられるのか。エイミーには今朝Lv1を知られているのでまた驚かれそうだが、あの子だけには俺の仕様に慣れてもらっておいた方が良いだろう。
倉庫からカウンターのあるギルド内へ戻ると、ちょうど報酬の準備ができたエイミーがカウンターに入ってきた。
「あっ、シュンさん。こちらへどうぞ」
「もう準備できたの?」
「えぇ、はい、こちらがワームの報酬合計157500ゼニルです」
「あぁ、ありがとう。ところでランクアップ試験のことなんだけど」
俺は金貨や銀貨の入った袋を確認もせず腰の袋にしまい、エイミーに告げるとエイミーの表情が固まっていた。
「まさか...Lv10になったとか言わないですよね...?」
「実はそのまさかなんです...」




