109.覇王の証(覚醒)
「数値が限界を超えてるって…どういう事?」
ローザが質問する。
「いや、神眼でも皆のステータスまでは見れないから、基本がどうなってるかは分からないんだけどさ。俺の、力とか素早さなんかのステータスが255で止まってたのがまた上がり出したんだ」
「何⁉︎」
エト神と共に俺の体を作り出したユーバーも驚きの声をあげる。
「ステータス数値か…。普通の冒険者は自身のステータス数値を知る事はできん。あのバルカンでさえもそこまでの道具を産み出すには至っていない。ただ、私の知る限りではステータスの最大値は決まっていたはず…」
「ちょっと待ってよ、そんな強さの指標みたいなのがあったなんて…」
「…ステータス、数値化…熟練度やレベルだけでは単純に強さは測れない、という事ですか…」
ローザとシュトロームの様子から、ステータスの概念は、人間にも魔人族にも知られていない事のようだ。
「うむ。シュンはその数値が既に最大値まで達していたが、更にそれを超えた、という事だな」
『なっ…』
「もしかすると…」
思い当たる事があった俺は驚く二人をよそに話を進める。
おそらくだが、レベルが81になった時に覚醒した覇王の証が怪しい。
「心当たりがあるの?シュン」
「ああ、少し待って」
俺は新たに覚えたスキルや魔法達を知りたいと念じる。
・特殊:覇王の証(覚醒)
効果:覇王の秘められた力が目を覚す。その者、力で世界を統べる者なり。
…なんかヤバそう。自分がそんな存在になるなんて想像もしたくない。できれば世界の片隅で目立たず静かに暮らしたいのに…。
まあ、とにかく今はその他も確認しておこう。
・アクティブスキル:コカトリスの息吹
効果:石化効果のあるブレス。その息吹を浴び続けると石化する。
・アクティブスキル:コカトリスの邪眼
効果:コカトリスの息吹の上位スキル。邪眼を見た者は即座に石化する。
コカトリスの石化攻撃を意識したせいか、自分が石化攻撃を使う側になったようだ…。
しかし…目を見ただけで石にしてしまうとは反則的に強いスキルだな。
・魔法:エデンⅡ
効果:自身の仲間のみに効果範囲を限定する。
…これは、ユーバーから敵も回復させるから使い勝手が悪いと聞いたせいか…。
・アクティブスキル:神眼Ⅱ
効果:全てを見通すその眼は未来さえも見ることができる。
…未来が見えるって、無敵じゃん…。あ、でもさっき皆を見た時は特に今までと変わらなかったような?
…まあ、いずれ分かる時が来るかな?
「それにしても、なんだかまた凄い事になったなぁ…」
俺は覚えたスキルや魔法を皆に説明すると、お決まりのように呆れたリアクションをされた。
「おおおぃ!主ら!無事かのー?」
激しい戦闘の後、静かになった所を見計らったのか、レイルが山の斜面の下から駆けてきた。
「レイルー!お疲れ様!俺達は皆無事だよ!」
「そうかそうか、それは良かった!麓から真っ赤な空が見えたが、だいぶコカトリスを倒せたようだの!」
「まあ、うん」
「ハッハッハー!まあ、主らなら石にされる事もなく簡単に奴らを倒せると思っておったがの!」
「シュンがいるもん!当然でしょ!」
ローザが嬉しそうに俺の肩に手を掛け、身体を密着させる。
皆の前で照れくさいので、配慮して欲しい。
…嬉しいけど。
「ハッハッハー!その意気だぞい!朝までまだ時間はあるからの!引き続き石化に気をつけながらできる範囲で狩りを進めるのだそ!」
「あ、それならもう必要ないよ」
「ぬ?なんだ?もう疲れて諦めるのかの?」
「いや、そうじゃない。もう倒す相手がいないんだよ」
「?何を言うか。コカトリスはまだまだ沢山おるはずだぞい。なんせあやつらは山の頂上付近に最も多く生息しておる。奴らの根城はここからまだだいぶ先だぞい」
「レイルさん。ガイアを甘く見ないで頂きたいですね。シュンさんのお力でレーベ山脈にいる全てのコカトリスはここに呼び寄せられ、そして我々ガイアの手によって全て殺されました」
「なっ⁉︎ほっ、本当かの?シュン殿」
シュトロームの説明に、信じられないという表情のレイルが俺に問いただす。
「うん。まあ、さっき言ってた魔笛スキルで、多分全部集められたと思うよ。これくらいの相手ならまあ、俺達ガイアの敵じゃない、かなー。ははっ」
「⁉︎成る程…魔笛か…。俄には信じられぬが…。兄者らが嘘をつくとも思えんしの…」
そう言い、義理の兄であるユーバーを見ながら顎に手を当て少し考え込むレイル。
「あい分かった。我がひとっ飛びして山頂の様子を見てこよう。何、竜化すれば山脈の一つや二つあっという間に越えられるからの!少しの間待っておれ!」
「ああ、それなら俺も一緒に行くよ。帰りは一瞬で戻れるからさ」
「む?そうか、また瞬間移動を使うのだな?助かるぞい」
「うん。あ、そうだ、後は確認するだけだし、ここで待つだけなら皆はバゴの街に戻っておく?」
「えっ、シュンに任せて私達だけ帰るなんてしないよ、私達ももちろん残るわよね!ユーバー、シュトローム」
ローザは相変わらず良い子だなー。
「いや、その、…いかがでしょう?ユーバーさん」
「ローザよ、冒険者たる者常に合理的に動かねばならん。休める時間を与えてくれたシュンの考えを尊重するのが当然だろう」
「そうですね。折角シュンさんが我々のことを思って提案してくれたのですから、リーダーの言う事には従いましょう」
…ガイアの男どもは、気を使うという事を知らないらしい。
まあ、シュトロームの言う通り確かに俺が提案した事なんだけど…。
「でも…」
「あはは、ローザ、良いんだよ。二人の言う通りだよ。それに確認したらまた瞬間移動で一瞬で戻れるんだから、すぐだよ」
「うーん…」
「ハッハッハー!良い良い!それなら我一人で様子を見てこようぞ!主らは全員で先に戻って休んでおくが良い!」
「えっ、それも何か悪いよ。…そうだ、それならこうしよう!」
「ぬ?」
「俺達ガイアは全員でバゴの街に戻る。レイルはコカトリスの確認をしてくれ。で、少ししたら俺からレイルに通信魔法で連絡する。討伐状況の確認が終わったらここに瞬間移動でレイルを迎えに来るから、そしたらレイルと俺でバゴへ帰ろう」
「…なるほど、それなら一番効率良く事が収まりそうな気がするのう」
「うむ。良い案だ。ローザもそれなら良いか?」
「そうね、分かった。さすがシュン。気が利くわね!」
「ふふ、それじゃレイル、頼んだよ」
「承知!では!竜化!」
ブワアアッ!
レイルが空に浮いたかと思うと、その身体が青白く輝く光に包まれ、一瞬にして巨大なブルードラゴンが現れた。
「では、シュン殿、連絡待っておるぞ。半刻もあれば大体の様子は確認できるからの!」
この広大で起伏の激しいレーベ山脈を30分で見回れるとは、さすが竜人族の中でも優れた移動能力を持つレイルだ。
「分かった!じゃあまた後で!」
こうして俺達ガイアは一旦レイルと別れてバゴの街へと戻り、竜人族達に実力を証明する為のコカトリス討伐は終わったのであった。




