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107.レーベ山脈


レーベ山脈に着いた俺達は、月明かりに照らされた岩山の前に立っていた。壁のようにそそり立つ神の山とは違い、緩やかな斜面が広く、長く続いている。雲一つ無い月夜に照らされた岩肌には背の高い木は一切見当たらず、大きな岩だけが散乱するゴツゴツとした殺風景な山々だ。


「ここがレーベ山脈…」


「ハッハッハー!いかにもコカトリスがいそうであろう?我はここで待っておるが、もう少し山を登るとヤツらの縄張りだ。気をつけるのだぞい」


「分かった。ここまでありがと。帰りも宜しくね」


「承知!くれぐれも石にならぬようにの!」


「ああ。じゃあちょっと行ってくる!」


「うむ!」


俺はすかさず感知に意識を移し、周囲の様子を窺う。


だいぶ離れた山の上の方に、三匹纏まって何かしらの魔物がいる。


まだこちらは見つかっていないので輪郭は緑色だ。


「あれがコカトリスかな…?」


「シュン、いたの?」


「ああ、それっぽいのが結構上の方に三匹だけいる」


「感知か…、つくづく羨ましいスキルだな」


「あはは、エト神とユーバーのおかげだね」


「で、どうします?作戦は何かあるのですか?」


皆がガイアのリーダーである俺の言葉を待つ。


「そうだな…。まずは敵単体での強さを把握しておきたい。感知しながら近づいて行こう。神眼で見られるまで近づいたら敵の情報を共有する。敵対範囲に入って奴らが俺達に気付いて向かってきたらエデンを展開するね。あまり強くなさそうなら流れで戦闘。強そうだったら石化に気をつけつつこちらから見て右から順に一匹づつ倒して行こう」


『了解』


こちらの想定した通りに敵が動いてくれれば良いが…。


まだ距離があるため、俺達は割と早足で山道を登り始める。


道は無いものの、草木がないおかげで歩きにくさは感じない。


広い道のような坂道を軽い足取りで快調に登る。


やがて暗闇の中、肉眼でも遠くに何かがいるのが見えて来た。


「よし、いたぞ。皆一旦ストップだ」


「え?どこよ?」


「私にもまだ何も見えませんが…」


「シュンの体は目も良い上に夜目も効く、私達よりはよーく敵も見えている事だろう」


「どこまでも異常な体なのね…」


軽くディスられた気がするぞ…。


「ごほん。静かに」


『…』


「神眼!」



コカトリス

ランクB

LV55

武器:石化嘴 石化爪

防具:鋼の羽毛

耐性:水、氷、毒、麻痺、石化

弱点:無



「LV55。ランクB、嘴だけじゃなく爪も石化効果があるみたい。唾液というより体液が危険なのかな?」


「ふむ。もしかすると爪の先に体液を出す器官があるのかもしれないな」


「こわっ。エデンが無かったら絶対戦いたくない相手ね」


「まあ、でも普通に戦闘に入るで良さそうな気がするね」


「ですね。魔物の中では強い方なのでしょうが、おそらく私達の相手ではありませんね」


鋼の羽毛で防御が高そうなことと耐性を伝え、俺達は更に前へ進む。


感知範囲内には未だにその三匹しかいないようだ。


と、その時、三匹の輪郭がほぼ同時に敵対を示す赤に変わった。


「気づかれた!エデン!」


シュワワワー!


暗い岩肌の道に光のサークルが立ち上がる。


「よし!皆気合い入れて行こう!」


俺はルーン・コアを抜き、武器と防具に雷属性を付与する。体全体が黄色に輝き、バチバチと稲妻が弾けだす。


「よーし!行くわよ!デゼル!」


ローザの魔具、カタールのデゼル・ファングが闇夜の中漆黒に煌く。


ユーバーは不可視の双剣インビジブルを、シュトロームは大きさを自在に操作できる大剣ロードインパクトを軽々と構えた。


…改めて見ると、仲間達とんでもなく頼りになるな。


全員が魔具持ち、レベル、熟練度もトップクラスだ。


コカトリスくらい余裕で倒せないとな!


空を飛ぶコカトリスは、そのレベルに相応しく猛烈なスピードでこちらに向かって来た。これだけ派手に光っていたら良い目印なのだろう。


どんな鳥なのかと思っていたが、迫り来るその姿をよくよく見てみると怪鳥と呼ばれるのも頷ける。


頭から脚先まではスリムな鶏、翼は羽毛のないドラゴンのような形をしており、広げた翼は端から端まで10メートルはあるだろう。


「でっかいニワトリだな…」


「エール!」


ローザのバフで全員のステータスが上がる。


「衝波斬!」


「ミンストレル・エクステンド!」


「ツイン・シュート!」


「炎術!ファイアチェーン!」


各々の遠距離攻撃がコカトリス達に襲いかかる!


ゴオオオオォォッ!


「ギッ⁉︎」

「クアアッ⁉︎」

「ギャギャッ⁉︎」


グバーン!


俺達の攻撃に慌てて進行方向を変えようとした怪鳥達だったが、空中での急停止も間に合わず三匹とも誰かしらの攻撃が命中し、不自然に翼をバタつかせながら地面に落下した。



………



「えっと…」


「倒した…よね?」


「うん。感知で見ても死んでるね」


初撃で三匹とも呆気なく沈んだ。


「ちょっと余裕あるみたいだし、魔笛で集めようかな?」


「そ、そうね、集めて範囲攻撃でやった方が良さそうね」


あまりに呆気なく倒せてしまったので肩透かしをくらったような気分だが、それだけ俺達が強くなったと言う事なのだろう。


一応ボロボロになったコカトリスの死骸をコスモ・コアに収納し、その姿を頭に浮かべながら魔笛Ⅱを吹く。


「魔笛か…。私達には何も聞こえないのですね」


「うむ。シュンが思い浮かべた魔物にしか届かない音が出ているらしい」


「魔物を探す手間が無くなるって、冒険者にとっては最高のスキルよね…」


「同じ魔物が大量に集まるからな。属性もワンパターンで対応できるし、レベル上げには最適のスキルだな」


仲間達が魔笛の効果を褒めるものだから、調子に乗って長く吹き続ける俺。


「ね、ねえシュン、いつまで吹くの?」


「魔笛は長く吹くだけ効果範囲も広がる。まだ吹いていると言うことは感知範囲にまだ魔物が見えていないのだろう」


「し、しかし…。シュンさん、もう一旦止めても良いのではないでしょうか?少し長すぎるような気がしますが…」


実は感知で見ると遠くに結構敵対反応がある。大量に集めて皆を驚かせてやろうという魂胆だ。


こんなに大量に、どこに生息していたのかと思うほどのコカトリスの大軍勢が迫る。敵対反応を示す真っ赤な輪郭が怒涛の勢いでこちらに向かって来ている。


「よし、もう良いかな。結構な数が来るから、皆頑張ろうね!」


俺は努めて軽い口調で皆に声をかける。


「結構な数ってどのくらいよ?」


「ふふ、来てからのお楽しみー」


「シュン、やりすぎてはいないだろうな…?」


「なんだか私、嫌な予感がいたします…」


俺の悪戯っぽい顔を見て三人とも何か感づいたようだ。


「ふふ、あ、念の為に。エデン!」


俺は誤魔化すように、さっきとは別のところにもう一つエデンを展開する。


「ソウルイーター!」


魔物を大量に倒す時はこの魔法が役に立つ。


MPが一気に枯渇するが、MP自然回復のおかげですぐに万全の体制に戻った。


「いよいよ本番ってわけね!ミンストレル・オーラ!」


ローザのデゼル・ファングがオーラを纏い射程が伸びる。


「ローザさん、そんな長い刃、間違って私達を切らないで下さいよ?」


「ふふ、心配ご無用!このオーラは味方には当たらないから」


「なっ⁉︎そんな便利な効果が…。普通じゃないのはシュンさんだけじゃないですね…」


「ちょっと!あなたには言われたく無いわよ」


「ふふ、これは失礼しました」


「お前達、ふざけて無いで真面目に行くぞ。そろそろ接敵だ」


山の上の至る所から巨大な怪鳥達の熱り立った叫び声が聞こえて来る。


「また随分と呼び集めてくれたな…」


声の出どころがあまりに多く、思わず気圧されそうになるが、ガルヴァリのゴブリン大襲撃の時と違って、今は心強い仲間が三人もいる。


「ふふ、最強の仲間が三人もついてくれてるからね、俺もつい強気になっちゃったんだよ」


俺の言葉に三人が仕方ないな、といった様子で笑う。


「ふっ、やれやれ…。ローザ!シュトローム!ヤツらは魔笛を使ったシュンしか目に入っていない。私達はシュンの負担が減るように周りでガンガン数を減らすぞ!」


『了解!』


「さあ!ガイア初のPT戦、一丁やってやりますか!」


俺達は改めて気合いを入れ直し、コカトリスの大軍勢を迎え撃つのだった。




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