104.革命軍会議
「ちょ!ちょっと待って!今トゥクルって言った⁉︎」
ラウダの口から語られるザダルとレイルの昔話にすっかり聞き入っていた俺だが、少し前にハーマンから聞いた名前が出てたことに驚きの声をあげる。
「む?左様。現竜王ザダルと結託し竜人族を使って下界を支配しようと企むロクでもない輩だが…。シュン殿、知っているのか?」
「ええ、まあ、少しだけ」
竜人族は俺達の世界を下界と呼ぶのか。今はどうでも良いが。
「そうか。まさか仲間…などということはあるまいな?」
ラウダの目つきが今まで以上に鋭くなる。
「いや、敵です。そいつは、その闇の眷属に二人いる大幹部のうちの一人です」
確かルイザの世話役ミルコの話だと闇の眷属の大幹部はトゥクルとバルカンの二人だった。
「そうか、シュン殿は闇の眷属についても明るいのだな。帝国軍は明らかに闇の眷属と手を組んでいる。そちらの情報も持っているのなら尚のこと心強い」
「シュン。でもおかしいわ。私達が聞いたトゥクルは人間のはず。100年も前の話に出てくるなんてあり得ないんじゃない?」
俺の隣で話を聞いていたローザが不自然なことに気付く。
「確かに…どういうことだ…?」
「そうか、人族にしては寿命がおかしいのか。我らは人族と言ったらユーバーしか知らんからのう。普通の人族は100年生きる事はないのじゃな?」
長い時間を生きているであろう革命軍元帥ハークライツでも、人間の事はあまり知らないらしい。となるとここに集まっている竜人族の幹部達も人間や魔人族の事は良く知らないのだろう。
「ユーバー。闇の眷属って昔からある組織なのか?」
「いや、それが…。あの組織の事は私もよく分からん。最近動きが表立つ事が増えてきたが、いつから存在しているかまでは掴めていない」
「私達魔人族の間でも闇の眷属についてはあまり知られておりませんでしたね…」
まだ闇の眷属に所属していた頃のハーマンが、ゴブリン大襲撃を扇動したことから、闇の眷属と魔物を産み出す魔人族とが繋がっている事は明らかだが、シュトロームは魔人王の命で動いており、闇の眷属と直接の繋がりは無かったようだ。
「む?貴殿は、魔人族とな?」
「これは失礼。ご挨拶が遅れました。私シュトロームと申します。正確に言うと人族と魔人族のハーフです」
シュトロームは椅子から立ち上がると、片手を胸の前に当て丁寧にお辞儀をした。
「な、なんと!異種族間同士でも子を成せるのか」
ハークライツが横に座る大将で愛娘のサリオスに目をやる。
人族のユーバーと竜人族のサリオスは夫婦だが、子供がいるとかは聞いた事がない。
あれ?でも竜人は卵から孵るから、竜化した者同士じゃないと子孫を残せないんじゃなかったっけ?
まあ、今はそれを話す時じゃ無いけど。
「魔人族か…。サリオスから聞いたが、この戦いの後には魔人族を倒しに行くのであったな。…それなのに、その…仲間にも魔人族がおるのだな…」
「ええ、色々事情があるのです」
「そうか、深くは聞くまい。しかし…。実の所、我々は未だに外の世界に疎い。魔人族とやらも聞いた事はあってもどういった者達なのか良く分からんのだ」
「魔人族は魔物を産み出し、人族を滅ぼそうとしている者達です。そいつらも闇の眷属と手を組んでいます」
「魔物を産み出すだと⁉︎」
『ザワザワッ!』
闇の眷属の話しついでに出てきた魔人族の情報に会議室の竜人達がざわつく。
「待ってくれ。ドラゴニアにも遥か昔から魔物はいる。魔人族がこの地にも始めからいたと言う事なのか⁉︎」
確かにラウダの言う通りだ。先程の昔話にはドラゴンリザードなる魔物も出てきていた。
「分かりませんが…。そう言う事なのかもしれません」
「魔人族も厄介な存在だな…。しかし、やはり最も警戒すべきは闇の眷属…帝国軍のみならず魔人族とも繋がりがあるとは、一体どれだけの組織なのか…。元帥、もしかすると、ヤツらは我々が考えている以上に危険な存在なのかもしれませんね」
「う、うむ…。ザダルのやつ恐ろしい者達と手を組んだ物じゃ…。我らの戦に魔人族まで絡んで来る事はなかろうが…。シュン殿、闇の眷属と魔人族の事もう少し詳しく教えてくれんか?事によっては作戦を練り直す必要がありそうじゃ」
「分かりました。ただし、ガイアがこの戦いに参加する条件は変わりませんよ?」
「おお、少数精鋭で頭をとるのじゃな。分かっておる」
「元帥⁉︎」
「ラウダ、まずは情報じゃ。戦で最も重要な物は情報なのじゃ。テーブルに並べられた情報を整理し、考え、最善の策をとる。基本中の基本じゃ。
最善の策が、全軍進撃なのかガイアの方々の力を借りる事なのか、それは後から考えれば良い」
「…わ、分かりました。シュン殿、ザダルの恐ろしさはまだ話し足りないが、竜人族の中でも規格外だという事は分かってもらえただろう。それでも考えは変わらないか?」
「はい。変わりません」
「そうか、ではこれ以上は何も言うまい」
その後俺達は闇の眷属幹部だった頃のハーマンが指揮した、エリバン駐屯基地襲撃から、ゴブリン十万匹を率いたガルヴァリ大襲撃の話、魔人族シュトロームと戦ったクロノ闘技大会、決勝後に闇の眷属の拘束から解放したハーマンとミルコから聞いた話など、事細かく革命軍の方達に話して聞かせた。
「なんとなんと…、ガイアの面々は皆とんでもない力を持っておるようだ」
俺達の話を聞き終えたハークライツはさも感心した様子でラウダとサリオスを始めとする革命軍首脳陣とアイコンタクトをとる。
「シュン殿、この最果ての街バゴの北にレーベ山脈という山がある。その辺で近頃コカトリスという魔物が大繁殖しておってな」
?…何の話だ?
「良ければそこで少しでも己を鍛えてはどうじゃ?」
「急に何です?」
「いや、今の話を聞いた上で、我らはこれからまた軍議じゃ。ガイアの四人には少しヒマ潰し、いや、ゴホン。その…自己鍛錬をする時間を…とな」
「ああ、そういう事ですか。分かりました」
「パパ!…ごめんねシュンくん。実はコカトリスには実際私達も困っているのよ。そんなに強い敵じゃ無いから適当に数を減らして貰えたら嬉しいんだけど…」
「あはは、大丈夫ですよ。こちらも実を言うと戦いの前にもう少しレベルを上げたかったので」
「レベル?強さの事?なら丁度良いかも。コカトリスは巨大な鳥でね。完全体になれない竜人には厄介な相手だけど、完全体になった竜人にとっては美味しい魔物なの。戦時で完全体の竜人が定期討伐に行けなくなって困ってたのよ」
竜化すると巨大なレッドドラゴンになるサリオスが言うと、経験値が美味しいのか文字通り食べて美味しいのかどっちか分からないな…。
「ただ、今の状況、いつ帝国軍が襲ってくるかも分からない。時間が無いわ。今から明日の昼くらいまでお願いできる?」
ハークライツ暗殺未遂、いや、帝国軍からしたらハークライツは死んだと思っているかもしれない中で確かにいつ襲撃して来てもおかしくない。
そんな危機迫る状況で時間制限付きの魔物狩り…。これはもしかして。
「あ、一応何匹倒したか、数も数えておいてね。足の速いレイルに送り迎えはさせるわ」
やはり、俺達の力を測ろうと言う訳か。話だけじゃ信じきれないか。
まあ、自分達の命運が掛かっているんだもんな。俺達がコカトリスにやられたら全軍進撃するのだろう。サリオス…。ガイアには夫のユーバーもいるのに…。
これが戦争か…。
「分かりました。一つ確認したいのですが…」
「なんじゃ?」
「コカトリスは全滅させても問題ないですか?」
『ザワザワッ』
俺の質問に竜人族がザワつく。突拍子もない質問だったか…?
「ゴホンッ。まあ、レーベ山脈以外にもヤツらはおる。全滅させても問題は無い」
「分かりました。では、時間もありませんので早速行ってまいります」
「うむ。すまぬの。健闘を祈る」
こうして俺達ガイアの四人は、自分達の戦力を証明する為、コカトリス討伐に向かう事になった。
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