10.初めての狩り
剣の鞘が欲しい...
さすがに抜身で剣を持っていると、街を往来する人達から警戒の目で見られてしまう。
宿代飯代を稼いだら鍛冶屋だな。
しかし一日5匹じゃ2500ゼニルにしかならない。
朝は抜いたとしても昼夜の飯代で終わってしまう。
宿代をなんとか頑張って捻出しなければ...
俺は目の前に広がる緑一面の大地を見渡し途方に暮れる。草は膝くらいまであるのでワームなる魔物は探しにくそうだ。
「広いなー。草で地面を直接見れないし...」
ガルヴァリの街に来た時に通った道程広くは無いが、東門からも土を踏み固めたような道が真っ直ぐに伸びている。
とりあえず進むか...
諦め半分で歩き出すと、100メートルほど進んだ所で道の脇に赤いナマコのようなものがウネウネ動いていた。
「あれか!いきなりいた!ラッキーだ」
俺はワームの背後?から慎重に近づき右手の剣を一気に振り下ろす。
ザシュッ!
ワームは緑の体液を飛び散らせながら真っ二つになり動かなくなった。
その時、脳裏にまたあのイメージが沸いた。
レベルが上がった!
パッシブスキル:感知を覚えた!
レベルが上がった!
特殊スキル:魔笛を覚えた!
「レベル上がったー!スキルも覚えたー!」
イモムシ一匹倒しただけでレベル3...
エトは大体100倍の経験値が貰えると言っていたから、今ので100匹倒したことになるのか。
転職なんてすぐに出来てしまいそうだ。
しかし、依頼は5匹討伐か...
この死骸、ギルドに持って帰って討伐した事を証明するんだよな...
一匹はさほど大きくないものの、これを手に持って街中を歩くのも気が引ける。
かと言って、新品の皮袋に緑の血が飛び散ったワームの死骸は入れたくない。
俺は唯一持っている入れ物である腰に下げた巾着袋に目をやる。
ま、冒険者なんてやってたらいずれすぐに汚れるんだろうし、いいか!
なるべく血の少ない所を持ち、皮袋にワームを入れようと近づけた瞬間、ワームが小さくなり袋の口に吸い込まれた。
!!
なんだ今の!?まさかいくらでも物が入る的な激レアアイテムか!?
ワームを入れた後の皮袋自体の大きさ、重さは変わっていない。
俺は試しに袋の口に手をかざすが、何も起こらない。さっきの出来事を見て、袋の中に手を入れる気にはなれない。どうやって中身を取り出したら良いんだ?
使い方を知りたい。と心の中で思った時、また自然と理解した。
手をかざして、出したいものをイメージすれば取り出せる。生きたものは入れられない。袋の中は時間の概念が無い。
か、ふむ。
しかし、このイメージで教えてくれるのは自分の体に関することだけではなかったのか?
もしかしてエトが用意してくれた物全般なのか?
そう閃いた俺は剣の使い方を知りたいと念じてみる。
すると...
おぉ!魔法の属性を剣に乗せられるのか。
単純に魔力を込めることで斬れ味、威力を上げることもできるようだ。
ワーウルフの時は心許ない武器に見えたが、とんでもない武器だったようだ。
次に防具の使い方を知りたいと念じる。
ふむふむ。こちらも魔力を込めれば防御力があがるし、属性を付与することもできるらしい。
なんとなくのイメージだか、炎を使う敵なんかの時は水か氷系の属性を付けると良さそうだ。
「エト神すげぇ...まさに神だな」
俺はエト神に感謝しつつワームを出し入れし、簡単に使えることを確認した。
「便利だなー。よし、次はスキルの確認だ。まずは感知、あ、その前に元々持っていたのもあったな。確か...浄化。だったかな?」
名前からして何かを綺麗にするスキルのような気がする。昨日はMPの少なさから使うのを躊躇っていたが、
ワームくらいならスキルを使用するまでもなく倒せそうだし、MP切れを起こしても問題ないだろう。
試しに使ってみるか。
そう思い、ワームの緑の血が着いている地面に向かい使ってみる。
「浄化!」
すると地面の汚れが取れ、何事も無かったような地面になった。なんて便利なんだ。
俺はそのまま剣や服、自分にも浄化をかける。
身の回り全てが綺麗になった。
地味にこういうスキルは便利だよな...
武器防具の手入れの心配も無さそうだ。
さて、次は感知スキルだが、パッシブスキルとあるので、意識しなくても普段から使えているのだろうか?
感知という言葉から、何かを察知する能力と判断し、周囲を警戒してみる。
すると、無数の何かしらの存在が辺り一面の地面の下にいるのを確認することができた。
これは...ワームか?すごい数だな...。しかしこれがワームなら探すのがだいぶ楽になりそうだ。
なんせ敵のいる場所が感覚で正解に分かるのだ。
どうやら感知は生き物の気配を察知するスキルらしい。遠くを見ようとすると、きちんと感知できている。
視認できる範囲くらいは感知が届くのか。街の方を見てみると、高い壁の向こうに沢山の人間がいるのも分かる。
直接見えない場所でも知ることができた。
これもまた便利なスキルだな。
そういえば浄化と感知を使ってみたが、MPは大丈夫なのだろうか?
確かLv1の時はMPが5しかなかった気がする。
Lvも上がったしステータスを確認してみるか。
俺は心の中で自分の能力が知りたい。と念じる。
名前:シュン
種族:人間
職業:無し
称号:神の子
LV:3
HP:90/90
MP:15/15
力:10
素早さ:10
耐久力:8
知能:7
精神力:6
スキル
アクティブ:無し
パッシブ:感知
特殊:浄化 魔笛
魔法:無し
天啓:オールスキル オールマジック エターナルフォース
MPが少し上がっている。しかし消費はしていないようだ。
MPってマジックポイントだよな?もしかして魔法は使うと消費するけど、スキルは消費無しなのか?
よし、試しに…
「浄化!浄ッ...!?」
浄化を連発しようとした時、二回目がすぐに使えない事に気づく。
なぜだ?
「浄化!」
再度使用すると今度は普通に使えた。
スキルは連発できないのか。確かに強力なスキルが何の消費も無しに連発できたら無敵だ。
少し時間を置かなければならないとなると、その間隔を覚えておくことは重要かもしれない。
で、MPは、と、
15/15
おぉ、消費していない。やはりスキルとはそういった物のようだ。
よーし、それじゃ感知で見つけたワームを狩りまくるとしますか!
「っと、その前にもう一個覚えたのがあったな。魔笛か」
魔物に聞こえる笛ということか、なんだか少し怪しい気がする。そこら中の魔物を一気に呼び寄せたらヤバそうだ。効果範囲も何処まで魔笛が届くのか分からない。
こういう時は...魔笛の使い方、効果を知りたい!
心の中で念じる。
魔笛:呼び集めたい魔物をイメージしながら口笛を吹く。短く吹くほど効果範囲は狭く、長く吹くとその効果範囲は広がる。
なるほど。見たことがある魔物限定だが、魔物が選択できるのは良い。調整も簡単そうだ。レベル上げの為にあるようなスキルだ。
ってか、浄化も感知も知りたいと念じればすぐ効果が分かったな。
まぁ、良いか。魔笛を先ほど倒したワームを思い浮かべながら吹いてみる。
すると、半径50メートル程のエリアにいるワーム達から敵意を感じるようになった。
感知は敵対状況まで分かるのか。
しかし、少し範囲が広すぎたか?
地中のワームの数は意外と多く半径50メートルの円状のエリアから軽く見積もっても200匹以上はいそうだ。
そして、今度は先ほどのような不意打ちは出来ない。
明らかな敵意を持ち地表へ出たワーム200匹が俺の方へと向かって来るが、その歩みは遅い。
こいつらはどうやって敵を認識し、倒しているのだろう...?
農作物を荒らすということは基本的には攻撃的なことはしてこないのだろうか?
そんなことを思っていると一番近くまで来たワームの口から糸のようなものが飛んできた。
俺はその糸を軽く回避し、ワームを注意深く観察する。これで獲物の動きを止めるわけか。
止めた後どうするのかは分からないが、次々に飛んでくる糸を回避しながらワームを剣で切り刻んで行く。やはり普通に戦っても全然余裕だ。
こちらへ向かってくる速度も遅い為、適度なペースで狩り続けられる。
ザシュッ!
ザシュッ!
ザシュッ!
ザシュッ!
...
しばらく狩り続け、半分程狩ったところで俺は自分の足が重くなったのを感じた。
しまった!いつの間にか糸が足に絡まってきている!
ワームをよくよく見てみると、どちらが頭か分からないが、こちらに向かっている側の先端に牙のような物が見える。
糸で雁字搦めにされ、身動きが取れなくなった状態で転倒しようものなら、抵抗も出来ずに徐々に牙に喰われるのだろうか?
ワームの糸は、なかなかの粘着力と伸縮性でその場から離れようと試みるが上手く逃げられない。
とにかくこのベタベタが気持ち悪い。
そうだ!
「浄化!」
俺は自分の足に浄化をかけてみた。
すると先ほどまで足に鬱陶しく絡み付いていた糸が綺麗に無くなった。
「やった。これで大丈夫だ!」
ずっと同じ場所で戦っていると、糸がいつの間にか足元に溜まってきてしまう恐れがある。
俺は移動しながらワームを狩り続けることにした。
そうして順調にワームを狩り続け、最後の一匹を狩り終えた時、
レベルが上がった!
魔法:キュアーを覚えた!
レベルが上がった!
魔法:ヒールを覚えた!
レベルが上がった!
アクティブスキル:衝波斬を覚えた!
レベルが上がった!
パッシブスキル:毒耐性向上を覚えた!
レベルが上がった!
レベルが上がった!
パッシブスキル:麻痺耐性向上を覚えた!
レベルが上がった!
戦闘が終わると経験値が換算されるようだ。
...というか、凄すぎだろ...。
一気にLV10だ。しかも色々覚えたぞ。
まぁ、200匹ってことはだ。エターナルフォースで経験値100倍なので、2万匹倒した事になる。
普通は1日5匹程度。毎日5匹倒したとして、2万匹狩るには4000日かかる。一年が地球と同じ365日だとすると約11年...
たった一狩りで、26歳まで休日無しで毎日ワーム狩りしたのと同じくらい成長した事になる...。
恐るべし天啓。そして魔笛...。魔笛があれば誰でもワームなど狩り放題な気もするが、普通は1日5匹程度とギルドのエイミーは言っていた。
魔笛もレアスキルなのか?
そんな予想を立てながら、ワームの死骸を片っ端から回収し、俺は街へと帰還したのだった。
お読みいただきありがとうございます!
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まだまだ面白くして行きたいと思いますので、引き続き宜しくお願いします!




