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1.馳 瞬一

この物語に興味を持っていただきありがとうございます!


細かい設定とか出てきますが、覚えなくても楽しめるようにしたいと思います。


それでは、シュンのエルモナルでの冒険譚、お楽しみください!





「馳さーん、回診でーす」


夏も近づく心地良い六月の朝、開けられた窓から吹き込む柔らかな風を肌に感じながら、俺、(はせ) 瞬一(しゅんいち)は壁も天井も白一面の病室のベットに横になり、視点も定まらない虚ろな目で天井を見つめていた。


「今日は調子はいかがですか?」


いかにも新人と見てわかる若い看護婦が白髪だらけの年配の医者と共に病室へ入ってくる。


「昨日よりは少しマシになってきたみたいです」


…と、そう言いたいのは山々だが、口が上手く動かず喋る事もままならない。


「あ、ぅぅ、うあぁ...」



...



今日で入院して一週間になる。


毎日診てくれている医者と看護婦に回復の兆しを見せたい所だが、体調が良くなる気配はまるで無い。


呼吸はできるし意識は常にはっきりしているものの、身体は自分の意思では動かず、食事を摂る事も、話す事さえもままならない。


一週間ずっと動けない事と、腕に刺さっている点滴の煩わしさからストレスも溜まる一方だ。


(なんでこんな事になったんだろう...)



***


一週間前...



日々代わり映えのしない仕事を終え、最寄りの駅に降り立った俺は遅い帰路についていた。


高校時代、俺は有名大学の入試に向けて受験勉強に励んでいたが、突然不幸が訪れる。


両親が交通事故で揃って亡くなってしまったのだ。


俺は進学の道を諦め、高校を卒業すると直ぐに地元の小さな会社に就職した。


世の中は理不尽で不公平だよな...。


...まあ良く考えれば当たり前の事だ。現実は、そんなものだ。




親と一緒に住んでいた家に着き玄関の鍵を開け中に入ると、真っ暗な廊下の電気を着け誰も待つ事のない部屋へと進む。


部屋の電気と、寂しさを紛らわせるためのテレビのスイッチを入れ、帰る途中コンビニで買った弁当をテーブルの上へ置き、手を洗いに洗面所へと向かう。


と、その時、突然胸を締め付けるような激しい痛みと共に全身が固まったように動かなくなり、バランスを保てなくなった体がその場に倒れる。


携帯電話がワイシャツの胸ポケットから滑り落ちた。いきなり起きた身体の異変に驚き、恐怖と焦りの中、床に落ちた携帯電話を震える手でなんとか操作し救急車を呼んだ。


テレビから流れるバラエティの笑い声を聞きながら救急車を待つ。脂汗が尋常じゃない。


慌てるな。落ち着こう。...自分に言い聞かせる。


視線は動かせるし、呼吸も出来ている。よし、深呼吸だ。単なる金縛りでした。ってオチもある。その時は救急隊員には謝ろう。肩の力を抜いてリラックスだ。


しかし、先程携帯を操作する為に必死に動かした腕や指はもう完全に動かせなくなっている。体感では10分以上経っている気がするが救急隊員が来る気配は未だに無い。とにかく胸が苦しい。


誰でも良い。早く!誰でも良いから早く来てくれ!


と藁にもすがる気持ちで願ったその時、玄関から部屋へと続く廊下から何者かの気配を感じた。


自由の効かない全身に嫌な鳥肌が立つ。動かせなくても鳥肌は立つんだな。等とバカな考えが一瞬頭をよぎるが、今はそれどころではない。


玄関が開いた音はしていないし、救急車のサイレンも聞いていない。そこにいる確かな存在と視線を感じるものの、目の前に倒れている人間を一向に助けようとしない事から、少なくとも俺を救いに来た救急隊員では無い事は分かる。


玄関の鍵は閉めたはず...!この金縛りのタイミングで不法侵入者⁉︎


視線は動かせるが、あまりの恐怖でそちらを見る事が出来ない。


確かに誰でも良いから来て欲しいと願ったが、即刻訂正だ。


俺を救ってくれる救急隊員の方!今すぐ来て助けて下さい!

極度の胸の痛みと恐怖で薄れてゆく意識の中、待ち望んだ救急車のサイレンの音が遠くに聞こえていた。






お読み頂きありがとうございます。


次回!ファンタジーの始まりです!

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