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未来に告げる過去の歌  作者: 別格
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今から未来へ

夜、目を閉じて見ることがある。

思い浮かぶのはいつも同じ情景だ。

可憐な髪、赤い目、華奢な手足、明るい笑顔そして白いドレス。

なぜいつもこの情景なのだろうか。

それほどあの後の事件が印象深かったのだろう。

彼女と出合ってからすでに二十六年もの月日が流れた。その間に様々な事が起こった。楽しいことも、悲しいことも。

今になって事の顛末を書き記す気になったのにはちょっとした理由がある。

多くの者が死に絶え大地が血で染まり、灰塵に帰したあの日から二十年の月日がたった。

二十年という区切りには何の意味もない、すべてが一つに纏まり、新体制が軌道に乗り、将来について考え始めたからである。

これを気に過去の歴史を紐解いて見たのだが、人間というのはどんなに酷い事件があっても喉元を過ぎれば忘れてしまうらしい。

もちろんあんな悲劇は二度と起こさないという誓いを忘れるはずがない。私は、そう信じたい。

だが、もしかすると、いつの日か、人々の記憶が風化してしまった未来に、私たちは同じ轍を踏んでしまうのではないか。そういう危惧も、私は捨てきれないのだ。

それで、急に思い立ってペンをとりこの手記の下書きを書き始めたのだが、やはり二十年という月日は私たちからあの日のことを忘れさせているのだろう。事実、一番関わっていたといえる私でさえ所々記憶が虫喰いのようになっているのだ。なので、私は何人かの関係者にあたって調べて見たのだが、人の記憶は自分の都合のいいように改変されるらしく、共通の体験が、しばしば矛盾していることがあった。

なので、ここから書かれるものは私の一方的な解釈であり、歪曲されているかもしれないことをここで伝えておく。

ともかく、最近巷で話題になっている小説の手法を真似ることによって、私が体験したことを細部まで忠実に描写するつもりだ。その時の感情、情景を伝えることができればいいと思う。

この本は私で保管し、いつかまた同じことが起こる時まで受け継ぐつもりだ。

これが読まれることはないといいのだが。

自己紹介がまだだった私の名前はアリステア=アルザス。アルザスという国の王である。

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