儀式Ⅴ
「貴女方は相変わらず早いですね……」
先生と三人で話していると桜色の髪をした少女が歩いてくる。私の数少ない友人の一人であるイリヤ・フィールド。瞳は琥珀色で、凛とした目付きだ。
イロハ「問題はないよ。イリヤ」
イリヤ「そうですか……いつも何してるの?」
リリィ「今みたいに話をしてるよ」
イロハ「あいつらの相手をしないためには早く来るしかない」
イリヤ「あいつらって勇者とその取り巻きたちですよね?」
イロハ「あいつらの相手は絶対にしたくない」
断固として嫌だ。なんであいつらは私につきまとうのかしら……本当に勘弁してほしい、出来るなら切り刻みたい。
クロト「タチバナ、ハンドソードをしまえ」
イロハ「あ、すいませんでした」
いつの間にかハンドソードを形成していたようで分解する。魔法が苦手な私に唯一得意とする剣の創造。一応、身体強化魔法も使えるが、そちらは平均レベル。私はこの二つでギルドの依頼をこなしている。
気が付けばクラスの人たちが集まっており、間もなく時間となった。
クロト「よぅし、皆集まったな。これより、授業を始めるぞ」
クズハ「ま、間に合ったぁ…」
クロト「そこの遅れてきた糞野郎、静かにしてろ」
クズハ「く、糞野郎だなんて………」
先生から「糞野郎」と呼ばれて落ち込んだ愚者を放置して授業が始まる。
クロト「まずは使い魔についての説明だ。使い魔は主から魔力を供給してもらうことで傍に具現化できる。供給量はそれぞれで違う。極端に少ないものもいれば、極端に多いものもいる。だから常日頃から一緒にはいられん。また、召喚される使い魔は召喚した者に見合ったものだ。だから才能を持っていればより強力な使い魔は召喚される。ただし、勘違いしてはならんことがある。召喚された使い魔が必ずしも契約してくれるとは限らない。立場を間違えるなよ、立場は同等だ。向こうにも意志がある。気に入れば契約し、気に食わなければ拒否する。
使い魔召喚とは、対話なのだ。下手に怒らせたら食われるからな、実際に食われた奴を見たことがある。
あー、あと、くれぐれも禁忌召喚はするなよ。当事者だけでなく、周りにも被害が出る。」
クズハ「先生、禁忌召喚をしたらどうなるんですか?」
クロト「ああ?死人が出るに決まってる。当事者は確実に死に、周囲にいた奴も只ではすまん。良くて重傷、悪ければ死ぬ。善処はするが、当事者は助けんぞ」
クズハ「そ、そんな!そんなの酷いよ…可笑しいと思わない!?」
イロハ「思う訳がない」
愚者が女々しいことを言っていたから思わず口に出してしまった。この際だから、言ってしまおう。
イロハ「思う訳がない。予めするなと言われていることをした人が悪い。それも周りの人まで巻き込むなんて迷惑甚だしい。そんな人なんていない方がいい。迷惑を振り撒いた人が生き残っていたとしても、邪魔なだけ…殺したいほどにね」