捨てられ少女と巫女の魂
カズト「さてと、こうしておけばまぁ、三十分後くらいにはシンと警備隊が来るかな。うん。」
『瞬◯の炎』でフェルト姫を強制送還する際、一応この生け贄の会場の場所への地図をフェルト姫にくっつけておいたし。
二人を指名して派遣するようにっていう手紙もくっつけておいたから、大丈夫だろう。
リカ「あのさぁ。」
「ん?」
リカ「この子、どうするんだ?」
ため息を吐いていた俺に、リカがそう話しかけてくる。
見ると、先程、商人に連れて行かれそうになっていた金髪の少女がリカに抱きついていた。
カズト「リカ。どうした?その子。」
リカ「なんか帰る場所がないんだって。」
カズト「ふーん・・・」
リカの言葉を聞いた後、俺は少女と目線を合わせるため、しゃがみこむ。
カズト「こんにちは。」
「こ、こんにちは・・・」
カズト「君、お父さんとお母さんは?」
「・・・お父さんとお母さん・・・いない・・・私・・・捨てられた・・・」
うーん。ここでテンプレな捨てられ系か・・・よし・・・
カズト「なぁ。君が良ければ、俺の所に来るか?」
「え?」
俺が言ったことに対し、少女は思わず呆然とした表情を浮かべる。
カズト「実は俺の所にも似たような子が一人いてね。きっと仲良くなれると思うんだけど・・・どうかな?」
対する俺は優しい声でそう続けて話しかける。
「いいの?」
対する少女は未だに不安そうな表情を浮かべながらそう尋ねてくる。
うーん・・・なんか怖がれてるなぁ・・・あ!そうだ!!
少女に信用してもらうため、俺は顔隠しに被っていたベ◯ダーさんマスクを外す。
「!?」
「……」
それでも少女はまだ不安なのか、未だにリカに抱きついたまま、無言になっている。
これはちょっとショック受けるな。
リカ「大丈夫だぞ。そんな怖がらなくても。このお兄ちゃんはこんな格好でこんな所に乗り込んでくるような、あれではあるが……」
おい。ちょっと待てや。リカ。こら。
言っておくが、少なくとも、俺は子どもには優しいぞ。うん。
「うっわー。ベイダーさんの格好でロリコンってないわー。」
「誰がロリコンだ。こら。あと、人の心を勝手に読むな。」
このトリップっ子が。トリップして来て早々読心術を身に付けやがって・・・
リカと俺がそうして言い合っていると、
「フフ……面白い人たち……ですね」
さっきまでリカに抱きついていた少女の目の色が変わりながらそう言う。
「?」
先程までとは違い口数が多くなった。
カズト「君は……」
「驚かせてしまったわね……私はこの子の身体に宿る巫……たまに出てくるのよ」
カズト「巫だと」
巫とは……大昔初代勇者とともに魔王を封印した伝説の人物である。その力は神と同等の力を持つと呼ばれ、半神となっていたが……魔王との戦闘で一緒に封印された。その能力は先読みの力『未来視』と守護の力がある。
「お願いがあります。この召喚を止めてください。出ないと……」
巫は次の言葉を発しようとしたとき、力が尽きたように眠りについてしまった。
カズト「眠ったのか……ソラこの子に付いていてやれ」
ソラを人型に変身した。
『了解……マスター早くいってください私が見てますので』
カズト「わかった……行くぞリカ」
リカ「そうだなぁ・・・そのまえにこの子に名前を付けてあげないと・・・」
名前がないと不便だが今じゃないだろ。
カズト「名前ねぇ・・・お?」
リカ「ん?どうかした?」
カズト「ねぇ。この子って誰かに似てない?」
リカ「誰かって・・・あ。」
その顔はあの短命で知られる大空の子に似ていた。




