足りない力
ニルスが転生魔法を発動したことにより光の帯が上がり始める。近くの光を見るとギルドマスターのクリスもその一人だった。
転生魔法とは、前世の記憶と力を呼び戻す禁忌の魔法である。カズトがこの地に呼ばれる魔法は転成魔法であり違う魔法である。カズトの転成魔法は死んだ肉体をその地に合わせて構成し魔力を引き出す。一方ニルスが行った転生魔法は今世に生きる人々の記憶を前世の記憶とリンクさせ当時の魔力と力を呼び戻すことで今世に生きる人々の記憶を奥底に追いやり封じ込める。
カズト「止めるぞあれを」
リカ「わかってるよ」
二人は魔法を止めるためにニルスに向かい飛び立つ。がシュテンに空間魔法にて拘束され封じ込められる。それも無理もない幾度の戦いで疲労しているにも関わらず魔力や炎を無理やり放出しているためそこまでの体力もない。
ニルス「見ているといい……我らの憎しみによりこの世界はまた1つとなる」
「それは感心せんなニルスよ強力三重」
シュテンはニルスの魔法を守るためその人物の攻撃を受け止める。空間魔法が解除され下に降りる。
ニルス「おや久しいのラグナ陛下」
ラグナ「まったく懲りないのぅニルスにシュテン……いや酒呑童子よ」
シュテン「貴方は少し老けましたね……エルフですが変わらないようですが」
1000年前にの大戦時に鬼人と戦った英雄の一人である。
ラグナ・ヒュース・アルカディア
アルカディア王国建国に携わったエルフであり、初代国王。
フェルト姫はその雲孫にあたる。500年前までは国王としてやっていたが孫に譲った。それからは隠居していた。魔力は少し減ったものの現役当時の力は衰えてはいない。フェルト姫も少しではあるがエルフの血が混じっている。
ラグナ「またしてもあの悲劇を繰り返すつもりか」
シュテン「あなたには関係のないことでしょう。これは私たち鬼と人の問題……エルフのあなたには引いてもらいましょう!」
ラグナとシュテンが衝突する。凄まじい魔力がぶつかり合う。カズトとリカは立ち上がろうにも力が入らずただ見ているしかなかった。
ラグナ「鈍ってしょうがないの……」
ニルス「それで鈍ってるのですか……」
ラグナ「そうじゃよ500年も隠居してれば鈍ってしょうがない」
ラグナは肩を回しながらシュテンを見つめてそう言う。
シュテンは刺魔法にて串刺しを試みるがその刺がラグナの筋肉魔法の増強による肉体強化で刺さらなかった。
ラグナ「さぁ行くぞ」
ラグナとシュテンの拳がぶつかり合う。どこぞの強戦士のごとくあちこちに移動しながら戦いあう。ラグナがシュテンの顔にヒットする。シュテンはラグナの鳩尾にヒットするがそれでも戦いは続いている。
シュテン「どうしました?力が弱まってますよ」
ラグナ「お前こそ目覚めるのが早かったんじゃないか?」
お互いの顔に拳がぶつかると両者が吹き飛んだ。
シュテン「時間稼ぎも楽じゃありませんね……」
ニルス「シュテン様終わりました」
シュテン「さぁ絶望の開演だ!転生魔法起動!」
術式をニルスからシュテンに使用権を渡した。両手を広げると術式が回転し始める。光の帯が収縮し近くにいたクリスだが、刺繍が浮かび上がり角が生えた。