9話 奴隷
この子を譲り受ける?僕が美少女を見つめていると、美少女は赤面して俯いた。僕も女の子には興味があるし、美少女なら尚更ある。でも、物の様に譲り受けるというのも抵抗がある。僕がそんなことを思っていると、美少女が、
「セシリアと申します。末永くお仕えさせていただきます。」
と、また土下座をしようとする。何これ?僕結婚するみたいじゃない?僕は慌てて「いや、とりあえず土下座はやめて!」と言うと、ヤックさんが、
「貴方に助けていただかなければ、私達は皆殺しになっていたでしょう。あの盗賊の首領は、この地方で手配されている有名な凄腕の盗賊です。それに、セシリアは貴方に治癒していただかなければ死んでいたと思います。だから、貴方に御礼も兼ねてセシリアを譲ります。貴方なら、奴隷をないがしろにはしないでしょうし。」
有名で凄腕の盗賊って・・・。僕ならそんなことで有名にはなりたくないけど。それに、そんなに強くないでしょ?と思ったが、それなら重傷者は他にいないようだし、盗賊を拘束することにした。ヤックさんがロープを馬車から持ってきたので、動けない盗賊を後ろ手にきつく縛った。それはもう、ほどけないように念入りにね。盗賊の首領、確かバルトスって格好良い名前だったけど、魔法を使われたら厄介だなと思っていたら、ヤックさんが首領に何かスキルを使っていた。気になったので、ヤックさんに聞いてみると、奴隷契約のスキルらしい。
「このスキル所持者は、そんなに多くないので、このスキルを持つ者は大抵、奴隷商人になります。」
とヤックさんが説明してくれた。あんまりヤックさんが悲しそうにしていたので、仕方なく奴隷商人をしているのかと思った。他に能力があれば他の仕事をするだろうし、生活があるからね。奴隷契約は本人が同意するか、魔力が無い等で抵抗ができない状態じゃないと契約できないらしい。魔力の枯渇には注意しないといけないな。
次にセシリアの右手の甲に紋様があり、その紋様を指さし「血を付着させて下さい。」とヤックさんが僕に言ってきた。奴隷には首輪と奴隷紋の二種類があるようで、僕は言われるままナイフで左手の人差し指を軽く切り、セシリアの紋様につけた。そしてヤックさんがスキルを使い、
「これで主人を変更しました。今からセシリアの主人は貴方です。奴隷の衣食住は主人が面倒をみないといけません。」
と言った。本当に僕が主人で良いのかとセシリアを見つめると、嬉しそうに笑顔を返してくれたので、まあ、良いかと思った。僕はセシリアの笑顔を見ていて、物扱いず大事にしようと誓った。
ヤックさんと一緒に戦っていた男性二人は、戦闘奴隷の様で軽傷だった。馬車に乗っていた一人は、奴隷の女性で戦うことができないから馬車に乗っていたらしい。じゃあセシリアは?と思って聞いてみると、戦うためのスキルがあるかららしい。後でセシリアを【鑑定】しよう。セシリアは兎人族の獣人で、エルフと同様、容姿が優れている。エルフが魔法、兎人族が身体能力という違いはあるようだが、奴隷の中では最も高値で取引されるようだ。そんな奴隷を簡単に譲っても良いの?と思ったが、ヤックさんは恩人だからと聞かなかった。
現場には、鎧や武器を装備を身につけた男性の死体が4人いて、彼らはヤックさんが雇った冒険者であることが分かった。それと盗賊の死体が5体、それらを全て僕のアイテムボックスに入れておいた。ヤックさんにはいろいろスキルを見られているけど、今さらだしね。ちゃんと口止めしておくと、ヤックさんは、
「貴方は空間魔法に回復魔法、空間魔法と操り、しかもそれらの魔法を行使しても一向に魔力が枯渇しそうにないなど、貴方の様に何でもできる方は見たことないですよ。」
と呆れていた。盗賊たちを馬が二頭引く馬車に繋いで歩かせ、ヤックさんが御者台に座り馬車の中に奴隷女性、盗賊の後ろに戦闘奴隷の男性二人が続き、盗賊を見張ることにした。僕は、ヤックさんから話を聞きたいので、ヤックさんの隣に座り、セシリアが僕の隣に座っている。御者台ってそんなに広くないから、セシリアが僕に密着することになる。僕に密着するセシリアは体全体が柔らかくて、特に胸が大きいので当たる。本当にありがとうございます。
気が散る僕は、何とかヤックさんから情報収集することにした。僕が常識を知らないのを不審に思われないように、「森で生活していたので、常識に疎い」と言い訳をしておいた。嘘じゃない。僕は数日とは言え、森で生活していたのだから。
ヤックさんから聞いたところによると、これから向かう街は『エスト』という王都と港町の間にある、領主が治めるそれなりに栄えた街らしく、ヤックさんは、エストに奴隷を運んできたようだ。街の出入りには、商人ギルドや冒険者ギルドに加入していない者は銀貨一枚の税金をとられるらしい。僕は、ゴブリンから集めた銅貨があるから何とかなる。因みに貨幣の価値は、
銅貨1枚でパン1個で、以降、10枚毎に銀貨、金貨、白金貨、黒耀貨となり、パン1個が100円として黒耀貨1枚で100万円となる。
黒耀貨とか、そんな大きい単位の貨幣いる?と思ったけど、ヤックさんが言うには大きな取引でしか使わず、平民はまず手にすることはないそうだ。ヤックさんからいろいろ話を聞いていたので、あっという間に時間がたった。人が歩くペースだったが、何とか日没までに壁に覆われた街に着くことができた。
※現時点のステータス
【Name】ヤマト
【スキル】鑑定Lv10、全言語理解、スキルメニュー、風魔法Lv5、索敵Lv10、生活魔法、空間魔法Lv3、二刀流Lv5、隠蔽Lv10、回復魔法Lv5
【SP】26
【称号】女神の加護
【所有奴隷】セシリア
【Name】セシリア
【スキル】剣術Lv2、身体能力強化Lv2、生活魔法
【称号】ヤマトの奴隷