8話 盗賊
僕が異世界に来て、さらに3日がたった。毎日魔物を狩に行って、果物や薬草の採取の繰り返した。話し相手もいないのに僕、頑張った!でも、そろそろ街に行きたい。話し相手が欲しいし、美味しいものが食べたい!ということで、女神様が言っていたように、東に向かって街道に出て、さらに東に行って街を目指すことにした。因みに今の僕のステータスはこんな感じ、
【Name】ヤマト
【スキル】鑑定Lv10、全言語理解、スキルメニュー、風魔法Lv5、索敵Lv10、生活魔法、空間魔法Lv3、二刀流Lv5、隠蔽Lv10
【SP】106
【称号】女神の加護
僕がいた森で、一番強かったのはDランク魔石のオークだった。こいつらは豚面の魔物で常に群れている。Dランクは、どうやらスキルポイントが10ポイント貰えるので、かなりオークで稼がせて貰った。オークが鞘つきの鉄の剣を持っていたので、今は腰に帯剣している。【二刀流】格好良いと思ってスキルも取得した。あとは、狩の効率を上げるために【索敵】をLv10にし、街に行くことを決意してから【隠蔽】Lv10も取得した。【隠蔽】はステータスを隠したりできる。スキルがLv10に至るのは、極々一部って女神様が言ってたし、僕のスキルがばれたら面倒に巻き込まれそうだったからね。
そろそろ街道に出ようかとしたところで、僕の索敵に反応があった。これは人か?だけど、数が21人と多いな。でもその数が1人、また1人と減っていく。この状況が意味するのは、人が殺されているのではないか?そう思ったので、僕は全速力で街道を走った。
人が争っていると思われる場所まで、残り100メートルをきったところで、人の怒号や金属を打ち鳴らすような音が聞こえる。僕が現場に着いた時点で人数は、12人にまで減っていた。馬車を守る様に3人の男が武器を構えているが、そのうち壮年の男一人は、服装から商人にしか見えない。その男の傍らに倒れている者は、辛うじて生きているようだが重傷のようだ。馬車の中には、あと一人いるようだが生憎馬車の中までは見えない。彼らを取り囲むようにして、7人の見すぼらしい格好の男たちが武器を向けている。男たちのうちの一人を【鑑定】すると、称号欄に【盗賊】とあったので、僕は商人風の壮年の男に向かって、
「助太刀する!」
と大声で申し出たところ、商人は「お、お願いします!」と返してきた。それを聞いた盗賊たちは、「ちっ新手か!」「邪魔すんじゃねえよ!」と怒鳴り、何人か僕に向かってこようとした。人殺しはしたことないけど、こちらを殺そうとしてくる者には躊躇うことはない。一応、殺さないように足を狙ってみるか。
【ウインド・アロー】!
僕は一度に7つの【ウインド・アロー】を目の前に待機させ、それぞれの盗賊の太ももに狙いを定めると、
「GO!」
と、盗賊に向けて一斉に放った。目の前でゴォッ!と鳴り、【ウインド・アロー】が入り乱れて次々に盗賊の太ももに命中する。
「ぐあっ!?」
「なっ!?魔法だと!?」
盗賊から驚きの声があがる。よし、命中したな。ん?一人だけ、片膝ついてるけど無事な奴がいるな。何でだろう?と僕が疑問に思っていると、その盗賊が、
「やってくれたな、このクソガキがっ」
と睨み付けてきた。もう一度【ウインド・アロー】を唱えると、その盗賊の太ももに向けて同じように放った。すると男は、
【マジック・シールド】!
と膜の様な障壁が張られ、僕の【ウインド・アロー】がバシッ!と弾かれた。しかし、盗賊の男は「くそっ、もう魔力が・・・」と言って前のめりに倒れた。どうやら魔力が無くなると気絶するらしい。僕も結構、魔法を使うけど枯渇したことないから初めて知ったよ。倒れた盗賊に向かって、他の盗賊が「お頭!」と声をかけてたから、この男が盗賊の首領みたいだな。そういえば【鑑定】を忘れていたけど、この首領を【鑑定】してみた結果がこちら、
【Name】バルトス
【スキル】土魔法Lv1、索敵Lv1、結界魔法Lv1
【称号】盗賊の首領
この程度だった。普通がどのくらいか分からないけど、あんまり強くないのかなと思っていると商人風の男が話しかけてきた。
「危ないところを助けていただいて、ありがとうございました。私は奴隷商人をしているヤックと申します。」
商人だとはおもったけど、奴隷商人だったんだね。奴隷商人って怪しい雰囲気の人だと思ってたけど、この人は誠実そうだ。っと、その前に怪我人や盗賊をどうにかしないと。
「ご丁寧にありがとうございます。僕の自己紹介の前に怪我人や盗賊をどうにかしましょう。」
と申し出た。するとヤックは「そうですね。詳しい話は後ほどに。」と言ってくれた。僕はまず、倒れて重傷の人に近づき、容態を確認することにした。倒れている人をゆっくり仰向けにすると、16歳くらいの女の子だった。いや、ものすごい美少女だ。貫頭衣を着ているが、金髪の肩までの長さの髪でスタイルも良い。しかも頭に兎の耳があるから獣人だろう。見惚れている僕にヤックさんが、
「この子は奴隷ですが、私を庇って怪我を負ったのです。何とかしてあげたいのですが、回復薬を使いきってしまって回復の手段が無いのです。街まで馬車で半日くらいですが、街まではもたないでしょう。可哀想ですが、もう・・・」
えっ!?死ぬってこと?よく見ると、女の子の右腕が欠損し、腹部にも血が滲んでいる。呼吸が浅く不安定で一見して重傷だと分かる。何とか助けてあげたいけど、僕も薬草くらいしか持ってないしな。【回復魔法】で何とかならないだろうか?スキルポイントがあまり無いけど、そんなこと言ってられないな。今あるポイントでは【回復魔法】のLv5が限界だった。でも、これで部位欠損までは回復できそうだ。僕は魔力を集中し、女の子に向かって、
【リジェネ】!【ハイ・ヒール】!
女の子は眩しい光に包まれるが、光が次第におさまると、右腕が復元し完全に回復した状態で「うぅっ・・」とうめき声をあげた。ヤックさんが僕の後ろで、「なっ!?回復魔法?しかも部位欠損の回復まで・・・。貴方は、いったい・・・」と呟いていた。そして女の子は意識を取り戻し、目の焦点を僕の顔に合わせると、
「貴方は・・・、私はいったい・・・」
女の子は混乱している様子だったが、僕は、美少女は声も綺麗なんだなと考えていたので、返答が遅れ、見かねてヤックさんが彼女に説明してくれた。
「貴女は、私を庇って致命傷を負いました。私達は、盗賊に皆殺しにされそうなところを、この男性に救われたのです。しかし、致命傷の貴女は、街までもたないだろうと思っていましたが、この男性の回復魔法で治癒していただいたわけです。」
女の子はヤックさんの説明を聞き、僕の前で正座をしたかと思うと、土下座をし、「命を救っていただきありがとうございました。この御恩は一生忘れません。」と丁寧に言ってきた。女の子の大げさな行動に僕が焦っていると、ヤックさんが、
「この度、助けていただいた御礼に、この子を御譲りしましょう。」
と、とんでもないことを言ってきた。
※現時点のステータス
【Name】ヤマト
【スキル】鑑定Lv10、全言語理解、スキルメニュー、風魔法Lv5、索敵Lv10、生活魔法、空間魔法Lv3、二刀流Lv5、隠蔽Lv10、回復魔法Lv5
【SP】26
【称号】女神の加護