6話 初戦闘
風魔法の練習をするため、比較的広い場所に移動し、木を的にすることにした。取得している魔法は頭の中でイメージできるようで、問題なく使えそうだ。僕が右手の平を木に向けて、
【ウインド・アロー】!
と唱えると、木から「ビシッ!」と音が鳴った。木を見てみると直径5㎝位の穴が開いていた。
「結構、威力あるな。当たり所が悪ければ人でも致命傷じゃないか?」
さすがLv5。魔法の使い方には気をつけないといけないな。僕はさらに魔法を複数同時に発動してみたり、切断系の【ウインド・カッター】を試してみた。小一時間くらい試していただろうか、魔法のLvに応じて威力や精度が変わりそうだということが分かった。
魔法が使えるのは楽しいな!結構、魔法を連発してたと思うけど、あまり魔力が減った気がしないな。魔力を使っても、すぐ回復している気がする。女神様の加護のおかげかな?魔法が、これくらい使えるなら魔物相手でも何とかなるだろう。陽が高くなってきたし、お腹も空いてきたので食料調達に行きますか!
【鑑定】をしながら食べれそうな物を探し、森をかき分けて歩いていると、リンゴや椎茸が見つかった。多分【全言語理解】が翻訳してくれているのだと思うけど、【鑑定】したら本当にリンゴ、椎茸となっていたんだよ。一緒の所にはできない食べ物だと思うけど、そこは異世界だからと深くは考えなかった。リンゴはともかく、椎茸は火をとおしたいな。火を起こせるようなスキルはないかと【スキルメニュー】を開くと、【生活魔法】を見つけた。【生活魔法】はファイヤーで火種、ウォーターで飲み水、クリーンで洗浄と使えそうで、SPも5ポイントと少なかったこともあり、すぐに取得した。森から薪と枯れ葉を持ってきて【生活魔法】のファイヤーで火をつけた。川でリンゴや椎茸を水洗いしてきて、椎茸を木の枝にさし、火をとおした。
「それでは、いただきます!」
お腹が減っていたこともあり、僕はすぐに完食した。味の方は、まあ素朴な味だよね。一応、お腹も一杯になったし魔物の討伐に行きますか!寝床の安全を確保したいので【索敵】の範囲の魔物を討伐するつもりだ。とりあえず最初だから一体の所から行ってみようか。
物音をたてないように注意しながら、魔物の一体に近づいてみると、倒木に腰掛けて何か果物の様な物を咀嚼する人型の魔物がいた。その姿は子供くらいの身長でボロ布を纏っており、醜悪な顔をしていて肌が緑色の一見して魔物だと分かる。一応、【鑑定】してみると、
【種族】魔物、ゴブリン
【スキル】剣術Lv1、繁殖Lv2
【称号】なし
と表示された。よし、魔物の様だし倒してみるか。ある程度ゴブリンに近づいてみると、こちらに気付き、
『ギャギャッ!』
と、持っていた果物を投げ捨てると、どこから出したのかナイフを構えて僕を威嚇してきた。僕を獲物と見ている様な目だな。それなら遠慮なく倒すと決め、風魔法を準備する。ゴブリンがどれくらいの強さか分からないから、首、腹、足の三点撃ちを狙う。威力も強めにして、
「【ウインド・カッター】!」
と唱えた。すると、バシュッとゴブリンから音が聞こえたと思ったら肉片が飛び散った。完全にオーバーキルだな。僕は吐きそうになるのを堪えながら周囲を警戒し、ゴブリンだった物に近づいた。肉片となっていたが、顔からゴブリンであったとかろうじて分かる。ゴブリンが持っていたナイフが足元に落ちていたので、クリーンをかけて手に持ってみたところ、素材の剥ぎ取りには丁度良さそうに感じる。
「そういえば、体内に魔石があるんだよな?」
あまり死体を漁りたくはないけど、しょうがない。体の中心、腹の辺りだったと思われるところに、茶色のビー玉くらいの石を見つけた。クリーンをかけて【鑑定】してみると、
【魔石】ゴブリンの魔石、Fランク
であると分かった。何かに使えるかもしれないし一応持っておこう。ズボンのポケットに魔石を入れ、他に使えるものがないかと見ていると、ボロ布の袋があり、中を確認すると銅貨が三枚入っていた。ゴブリンは人間が持つような物を身につける様な習性でもあるのか?どちらにしろ、思った以上の収穫になった。
まだゴブリン一体しか倒してないけど、ステータスを確認しておくか。血の臭いのする場所を離れ、自分の【鑑定】をしてみた。
※現時点のステータス
【Name】ヤマト
【スキル】鑑定Lv10、全言語理解、スキルメニュー、風魔法Lv5、索敵Lv5、生活魔法
【SP】47
【称号】女神の加護