24話 自己紹介、そして今後
奴隷商館を出てから、一旦屋敷に帰ることにする。僕が後から選んだ4人は部位欠損があったので、ヤックさんの所で治すことにした。ヤックさんにはセシリアの時等でいろいろばれているし、今さらだしね。改めて公言しないようにはお願いしておく。新しい奴隷の皆も、いろいろ聞きたそうにはしていたが、後で時間を設けることを説明しておいた。特にナツメは、言葉が理解できないはずなのに僕が言っていることが分かるのが不思議なんだろう。ものすごい聞きたそうしている。
ぞろぞろと大人数で、しかも皆が貫頭衣を着ているので目立ってしょうがない。いろいろ購入したい物があるが、服を購入できる場所を人に聞いて向かうことにした。服屋に行く途中、
「一気に大人数になりましたね。ヤマト様。」
とセシリアが話しかけてきた。僕もこの集団を連れ歩くのは落ち着かないし増えたとは思うが、これからも増員する予定だしな。
「ま、確かに一気に増えたけど、これからも人手は増やすよ?まだ先の話だけど領地も開拓しないといけないし。だからセシリアも協力してくれる?」
とお願いすると、セシリアは頷き「もちろんです。私がヤマト様に仕えるのは当然のことです。」と微笑んだ。相変わらずセシリアは真面目だな。僕もセシリアに「これからもよろしくね。」と答える。
服屋に着くと、店員の女性を捕まえて全員分の普段着と下着を3着ずつ選ぶようにお願いした。普段から着るものだし、品質は多少良いものをお願いすると「任せて下さい!」とやる気をみなぎらせ、僕とセシリア以外の全員を連れていった。ここの店員も商売魂たくましいな。まあ、かなりの量と金額になるだろうしな。
この店は全て新品のようで、シンプルだが大衆受けの良さそうな服が並んでいる。また、割高にはなるが新しくデザインを言えばオーダーメイドも可能のようだ。僕とセシリアが店内で服を見ながら暇を潰していると、全員の服選びが終わった。皆が着なれないからか「こんなに良いものを・・・」等と一様に落ち着かない様子ではあったが、似合ってはいる。違和感も無いし充分だろう。服の代金を支払い、予備の服を抱える皆を連れて僕とセシリアは屋敷に向かうことにした。
「お帰りなさいませ。ヤマト様。」
屋敷に帰ると、執事のエドワードさんとメイドのアンナが出迎えてくれる。新しい奴隷の皆は、連れてこられた屋敷に驚きながらも大人しくついてくる。
「エドワードさん、アンナ。家の人数が増えますが大丈夫ですか?」
奴隷を購入して増員することは伝えておいたが、一応確認しておく。
「大丈夫です。ただ、皆が身なりが整っていたので驚いたくらいです。」
予備の着替えを抱えて並ぶ皆を見て、エドワードさんはそのように言う。まあ結構買ったしな。
「あと、食事はこれまで通りでよろしいですか?よろしければ、少々食材を追加しておきたいと思います。」
とエドワードさんが続けた。食事は皆と同じものを一緒に楽しく食べたいし、美味しい物が良いからな。妥協はしたくない。
「それで良いです。」
と答えておく。食事の準備が出来次第、例のパーティー会場の様な食堂で皆で食べる。皆、慣れないからか戸惑っていたが、いざ食べ始めるとまるで競争するかのように食べている。食事が一段落したのを見計らって、今後のことを説明することにした。
「皆、食事しながらで良いので聞いて欲しい。今後のことだが、君達にして欲しいことを説明する。」
と言って新しく、仲間入りした奴隷の皆を見ながら言う。皆は食事の手を止め『何をさせられるのか』という様な心配そうな顔をする。獣人が多い男女3人ずつの6人を見ながら、
「まず、君達6人は交代しながらで良いので屋敷の警備をしてもらう。」
と僕の言葉を聞いて6人がお互いに顔を見合わせる。この子達は皆若いし屋敷の警備なんかしたことないだろうからな。戸惑っているんだろう。その中の茶髪の若い男の子が話しかけてきた。因みに犬耳だ。
「ご主人様。私はカイルと言います。無礼を承知でお聞きします。私達は獣人ではあるものの戦闘は素人です。獣人なので身体能力は高いと思いますし、やる気はありますが貴族様の御屋敷を警備したことがありません。そんな私達が役にたつのでしょうか?」
このカイルという子は理知的な子だな。奴隷という身分でありながら、与えられた役目を今の自分達ではできないと判断して、指示した僕に非があるのではなく、自分達の力量不足のせいにして意見具申している。下手したら『奴隷の分際で!』と自らが不利益を被る可能性があったにもかかわらず。よし!
「カイル。確かに君達は戦闘の素人かもしれないけど、やる気はあるんだろう?なら大丈夫だ。その理由は後でまとめて説明するよ。あっ、警備のリーダーはカイル、君にしよう。よろしくね。」
いきなりリーダーに指名されてカイルから「ええっ!?」という声が聞こえたが、僕の「決まりね。」という笑顔つきの圧力に屈指「分かりました。」と返事をしてくれた。
次に30歳代の夫婦と、15歳の男の子、13歳の女の子の4人家族だ。僕が30歳代の男性に目を向けると、
「ヤマト様、私はトーマスと言います。家族全員が一緒にいられるよう計らっていただきありがとうございました。」
と頭を下げ、他の家族も合わせて頭を下げる。
「頭をあげてください。僕は人手が欲しくて皆を購入しましたが、皆が思っているような奴隷扱いはしないつもりです。トーマスさん一家には、メイドと協力をして料理や清掃等の屋敷を管理していただきたいと思います。庭の管理もありますので大変ですよ?」
とトーマスさんに言うと、
「この人数なら何とかなると思います。至らないところがあろうかとは思いますが誠心誠意、恩返しをさせていただきます。」
やっぱりトーマスさんも真面目だな。屋敷の維持管理に適したスキルを取得すればかなり楽にはなるだろう。メイド3人にもトーマスさん達や
次は、元冒険者の男2人、女1人の全員18歳くらいの若い3人組だ。もちろん奴隷商館にいたときに全員の部位欠損等の怪我は治療済みだ。1人目は金髪にスラッとした体格のハンサム、名前を『シヴァ』、2人目は茶髪にがっしりとした体格の盾職『ゲイル』、最後にサラサラの金髪の活発そうな女の子、火魔法使いの『ユマ』だ。シヴァが代表して、
「私達の怪我を治してくださり、ありがとうございました。大変感謝しております、ヤマト様。このご恩は一生かかってでも必ずお返しします。ただ、私達は冒険者としてしか生きる術を知りませんので、どこまでお役にたてるか分かりませんが。」
と、若干不安そうに挨拶をする。何故自分達が購入されたのか、分からないからだろう。
「シヴァ達にもお願いしたいことはある。それじゃあ、これからも僕のことや今後のことを話しておこうか。」
と言って、新しく入った皆を見ながら言う。僕が秘密厳守を含めて皆に全てを話すと、皆一様に驚いていた。またしても代表して、シヴァが話しかけてきた。
「ヤマト様は勇者様なのですか?」
と聞いてきた。いや、見た目で言ったらハンサムの君も勇者みたいだよ?と思ったが、もちろん勇者ではないと否定しておく。
「僕は勇者じゃないよ。僕のスキルについては本当に他言無用でお願いね。これから【眷族化】スキルを使って、それぞれに適した、或いは本人が希望するスキルを取得していってもらう。それと、シヴァ達には【眷族化】した後、ある程度したら別行動を試してもらいたい。僕と別行動をした場合の、スキルポイントの取得がどうなるのかが知りたいからね。お願いできる?」
とシヴァに確認すると、「任せて下さい!」とやる気を見せてくれた。とりあえず明日からは、順番にスキルポイントを稼ぎスキルを取得してもらうことになるだろう。
「これで一通りの話は終わりだから、皆、部屋を決めたら今日は休んで良いよ。あっ、ナツメは少し話があるから残っていてね。」
ナツメには『異世界からの転移者』という称号があるからな。個別に聞いて確認した方が良いだろう。




