2話 状況把握
死んだと言われ、更に混乱する僕に絶世の美女は、
『私は、あなたに分かりやすく言うと女神と言って良い存在です。』
『詳しい理由はお話しできませんが、あなたにはこれから異世界に行っていただきます。』
と申し訳なさそうに話しかけてきた。
「えっと、いきなりのことで混乱していて、まず僕がどこの誰かも思い出せないんです。」
僕自身の記憶は無いが、日本の一般的な知識、つまり計算や科学であるとか総理大臣は誰であるとかの記憶はある。
しかし、自分の過去がはっきりしないというのは、こんなに不安になるのだと初めて知った。
・・・記憶が曖昧なので初めてなのか、いまいち自信がないのだけれども。
僕の目の前にいる自称女神は頷くと、
『分かりました。可能な範囲で説明させていただきます。あなたは、非常に善良な性質の魂をお持ちでしたが、あまりにも若く亡くなりました。あなたに幸せになってもらいたいのですが、記憶そのままというわけにはいかない事情があります。また、これから行っていただく世界に変化をもたらして欲しいという理由から、あなたの記憶を一部制限させていただきます。』
何故僕が選ばれたのか、それ以前に何故僕が死んだのか、疑問は多々あるが記憶が無いので、説明されても他人事の様に感じてしまいそうだと思った。だから僕は女神が言うように幸せになることを考えることにした。
「お聞きしたいことはたくさんありますが、これから僕が行く世界のことと何をすべきかを教えて下さい。」
僕が前向きに今後の事を考えたからか、女神は微笑むと、それに見惚れる僕に対して、
『これから行っていただく世界は、【フロンティア】と言い、その名のとおり開拓が進んでおらず、日本の方に分かりやすく言うと所謂【剣と魔法】の世界です。文明レベルも中世ヨーロッパ位で【魔石】という物を体内に有する魔物がいます。その世界に行っていただくだけで、あとは貴方の好きな様に生きて欲しい思います。ただ最初に申しましたように幸せになってもらいたいので、世界を滅ぼすとか悪逆非道の限りを尽くす等は控えて下さい。』
・・・流石、自称女神。世界を滅ぼすとかスケールが違う。僕にそんな力は無いだろうにと思う。
『これから、あなたの名前や年齢、容姿、スキル等を決めた後、【フロンティア】に行っていただきます。こちらの都合で行っていただくので、多少は優遇しますよ?』
!?っそれは、ある程度僕の希望が聞いてもらえるってことだよね?僕は状況も忘れて興奮し、どんなスキルが良いか早速考え始めた。