18話 強敵と騎士、そしてお姫様
王都への行程は順調で、今日には王都に到着する予定だ。『鉄の意思』のナックルさんと話し合い、初日は僕達のパーティーが前を守り、あとは日替わりの交代で殿を勤めた。
「いやぁ、さすが『全能』!索敵とか完璧だし、アイテムボックスもすげえな!」
と、ナックルさんが僕の隣で言ってくる。道中に倒した魔物は、全て僕のアイテムボックスに入ってるからな。魔物の討伐報酬等は折半にすることになっている。・・・ナックルさんの持ち場は殿でしょう?仕事して下さいよ。
僕が呆れていると、不意に僕の【索敵】に反応があった。これは、なかなか強いな。今まで感じたことがないくらい。魔物か何かに複数の人間が襲われているのか?まだ距離があるが、僕達の進路前方であるため、このまま行くと僕達もかち合う。僕は一旦馬車を停めてもらった。
「ヤマトさん、どうかしたのですか?」
馬車から顔を出したヤックさんが、僕に聞いてきた。
「まだ距離がありますが、この先の街道で、魔物に複数の人間が襲われているようです。かなり強い魔物で、恐らく放っておけば、前方の人間は全滅するでしょう。だから僕が先行し、助けるか、魔物を討伐するか臨機応変に対処します。勝算はあります。」
と、ヤックさんに説明する。いざとなれば転移があるし、僕には【風魔法】や【二刀流】のLv10がある。ヤックさんは少し思案すると、
「分かりました。では、私たちは足手まといでしょうから、ここで待機します。ただ、決して無理はしないで下さい。」
と了承した。すると、セシリアとソフィアが「私達もヤマト様について行きます!」と申し出てきた。やはり、こうなるよな。
「セシリア、ソフィア。たぶんあまり時間の余裕がない。僕達は護衛依頼中だ、護衛対象の安全を確保しないといけない。それに、いざとなったら『あれ』で逃げるよ。」
セシリア達なら、僕が転移のことを言っているのは分かるだろう。二人とも渋々ではあるものの「分かりました。」と返事をしてくれた。
「じゃあ、行ってきます。ヤックさん、ナックルさん、あとは頼みます。」
と言い、全速力で前方に向かった。ヤックさん達から、僕が見えなくなった所でショートジャンプを繰り返し、現場に向かう。
馬車は、4台が連なって隊列を組んでいたのだろう。だが、1台はほぼ全壊しており、中央付近の一番豪華な馬車は横転している。その馬車を守るように鎧を着た騎士が隊列を組んでいた。その隊列の前には、1体の魔物がいた。銀色の毛並みの大きな体をしている。金色の瞳は知性を感じさせる。僕がその銀狼を【鑑定】すると、
【種族】シルバーウルフ【亜種】
【スキル】身体強化Lv6、突進Lv3、風魔法Lv6
【称号】狼の王
となっていた。スキル取得が大変なこの世界だと、これは異常だな。僕の【スキルメニュー】以外で、ここまでスキルレベルが高い存在は初めて見る。シルバーウルフの注意を引こうと、切りかかる騎士がいるが、かなりのスピードで全て避けられている。周囲には、十数人の騎士が倒れており、何とか立って戦っている騎士も皆、どこか負傷している様で、明らかに騎士達が劣勢だ。すると、騎士達を鼓舞する様に騎士の一人が、
「一班は牽制、二班は魔法準備!盾役は前に出ろ!何としても姫様を守るのだ!」
と指示を出していた。あの人が、この隊列の隊長だろう。僕はその隊長を追い抜き様「加勢する!」と言って、返事も聞かずにシルバーウルフに向かった。こいつは、あの体格で素早いからな。接近戦は避けた方が良いか。
僕は一瞬で風魔法を準備し、十数個の【ウインド・アロー】を放つ。シルバーウルフは、そのほとんどをかわすと攻撃に転じ、僕めがけて突進してきた。「ちっ!簡単に避けてくるな!」と愚痴りながらも【ショートジャンプ】でシルバーウルフの背後に転移する。
『ギャンッ』
とシルバーウルフが悲鳴をあげた。奴の足を切りつけるものの、浅かったらしい。さらにショートジャンプをして奴から距離をとる。奴の背後には騎士等、誰もいない。取って置きを食らわせるなら今しかない!
「避けられないような、取って置きを食らわせてやるよ!」
僕は今までで最高の魔力をこめる。いくぞ!風魔法Lv10!
【サンダー・レイン】!
辺り一面、僕の目の前を光の濁流が駆け巡り、『バリバリッ!』と音が爆ぜる。ある一定の空間を破壊し尽くすような、荒々しい爆音が続く。やがて嵐が落ち着くと、所々焼け焦げた平地ができあがっていた。その中央に、少しだけ焦げた銀色の巨体が横たわっていた。警戒しながらシルバーウルフに近づくと、虫の息ではあったがまだ生きていた。これで即死じゃないとか、こいつすごいな。僕は感心しながら、「今、止めをさしてやるよ。」と言い、奴の首に刀を突き入れた。
僕はシルバーウルフをアイテムボックスに入れ、馬車に近づこうとしたところで、「止まれ!」と、例の隊長に止められた。助けてもらったのにあたりが強いな。まあ『姫様』とか言っていたし、そういうことなんだろう。関わるのも面倒そうなので、騎士の回復だけして立ち去るか。
「僕は冒険者です。余計なことをしたのなら、謝ります。ただ、怪我をしている人を回復したら、すぐに立ち去りますので。」
僕は返事も聞かず、さっさと終わらせようと、
【エリア・ヒール】!
【リジェネ】!
と、順番に唱えた。まとめて【エリア・ヒール】で回復し、身体の欠損があった人もいたので【リジェネ】を使った。「回復まで!?」とか隊長が言っていたが、
「では、僕はこれで失礼します。」
と言って、さっさと【ロングジャンプ】で、セシリア達の近くまで転移した。転移する前に、隊長が「ちょっと待っ!」とか言っていた気がするけど、すでに転移が発動した後だった。
※現時点のステータス
【Name】ヤマト
【スキル】鑑定Lv10、全言語理解、スキルメニュー、風魔法Lv10、索敵Lv10、生活魔法、空間魔法Lv10、二刀流Lv10、隠蔽Lv10、回復魔法Lv5、眷族化Lv10、危険察知Lv10
【SP】207
【称号】女神の加護
【眷族】セシリア、ソフィア
【Name】セシリア
【スキル】剣術Lv10、身体強化Lv10、生活魔法、隠蔽Lv10、危険察知Lv10、全状態異常耐性Lv5
【SP】103
【称号】ヤマトの眷族
【Name】ソフィア
【スキル】精霊術Lv6、精霊眼、生活魔法、隠蔽Lv10
【SP】36
【称号】ヤマトの眷族




