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気になる

「お前それって、人間か?」

「…………」

「吸血鬼か?」

「…………」

「吸血鬼って、他にもいたのか?」

「……最初に、言ったし」

 なるほど、確かに子供の頃から聞かされていたとかそういう話はあった気はするし、突然変異とは聞いていたがそれが知り合いの吸血鬼がいないという事に直結するとは確かに言えなかった。

「そうか……友達の吸血鬼が、いるのか」

 宮藤は黙り、俯いていた。だけど所在もわからないとか、なにがあったのか気にはなった。だけどそれを聞くのは、今じゃない気がした。

「おまえ、それ、探さないのか?」

「……探してる」

「じゃあ、行くっていうのは?」

「それも、ある」

 なるほどそういう理由もあったのか。もちろんそれに合わせて生田たちに場所バレしたというのもあるだろうし、まぁ――

「けど、それより、もう……」

 俯いてしまった。また、殻に籠もってしまった。これじゃあ最初に逆戻り――いや、それ以上か。

 原因は、わかっている。

 事はやはり、そう単純じゃなかったか。男と女の違い、とでも言うべきか?

 考える。

「……契約、か?」

「んん、んん」

 俯いたまま、ただただ首を振る。しかしそれは逆にそうだと認めているようなものだった。それに俺はどうしたものか、考えてみる。

 妥協できるか? いまの自分を、相手に合わせて考えられるか?

 答えは、NOだった。

「…………」

 だが、いまの宮藤を放っておけるか。

 それもまた、やはり答えはNOだった。

「…………」

 禅問答か。答えはまっとうに考えても、出ない。どうしたものか。考えるが、だがもう結論が出ないという結論が出ていた。だとするなら――

「……今史?」

「契約は、しない」

 落ち込む気配を感じたので、すぐに続きを話す。

「だが、一緒に仲間を探してやる」

 雰囲気が、変化した。

「…………」

 まるでこちらを、探るようなものに。

 それに俺は、気持ちを入れてしっかりと目を見て続ける。

「ずっと一緒にいるのは、無理だ。俺はそんな性分じゃない。そう言った。それに偽りはないし、すまないがそのために性分を曲げてやることは出来ない。だがその代わりと言ったらなんだが、色々と協力してやる。仲間も探そう。生田――というか魔導連盟に狙われているというなら、それから匿ったりもしてやる。前回も言ったが、血だってくれてやる。だからお前は、行くな」

「……なんで?」

 途方に暮れるような口調だった。何度目だろうか? 俺は何度、宮藤にこの台詞を言わせただろうか?

 借り、と前回は言ったな。

 ただここまで言っておいて、もはや借りではないと自分でも感じていた。

 だから――

「……お前、が、気になるからな」

 ぴょこん、と一瞬耳が見えた気がした。もちろん100パーセント気のせいだが。

「き、気になるって?」

「いやまあお前全然常識ないしそそっかしいし実際本音ぜんぜん言えない臆病もんだしな」

「ふ、ふみっきーボクのこと、気になるの?」

「いやお前話聞けよ」

「ふ、ふみっきーが、ボクのこと!?」

「ていうかいつの間にか俺の呼び方戻ったな」

「ふふふふふみっきーっ!?」

「いやまあ俺の話全スルーだし少しは落ちつけよ」

 迫ってきてた。今度は期待一色の瞳で。ていうかなんていうか野生の獣に近い感じだった。色んな意味で色んな感情が巻き起こされそうだったから、なんとかかんとか宥めようとする。

 というかもう左手、離すべきか?

「ふみっきーふみっきーふみっきー」

「落ちつけ」

 すごい勢いで顔を近づけてきたので、そのおでこに手刀を打ち据えた。

「あてっ」

 と宮藤が右手で押さえる。それに俺は左手首を、離す。それで宮藤は、両手で頭を押さえ直した。

 その上に俺はぽん、と自分の掌を重ねる。

 それを宮藤は、涙目で見上げる。

「……ふみっきー?」

「しょうがないからな。お前は俺が、守ってやるよ」

 ぼそりと呟いた。結局うだうだ考えたが、それが俺の結論だった。まったく茶番もいいところだった。


「ならば少年は、我々の敵だということだね」


 いつだ、と、どこだ、の疑問が同時に噴出する。いつだはいつからだ? の略で、どこだは、どこにいる。

 どこでこちらを見て――なにを、狙っている?

「残念だよ、少年。少年はなかなかに考え方は合うし、嫌いなタイプじゃなかったのだが、立場の差だけはうめられなかったようだね」

「なんだ? なんならまだ考え直してもらってもいいんだが?」

 声の出所が、わからない。まるで5.1chのやり方で臨場感を持って四方から声が聞こえているような気さえした。

 死角に入られるのが、戦闘においては一番マズい。虚をつかれれば、ダメージは実際の威力の数倍から数十倍に膨れ上がる。

 どくん、どくん、と心臓が脈打つ。これだけ不安に駆られるのは、初めてのことかもしれない。それがある種の高揚感すら、生んでいた。

 まるで自分の心臓が、相手の掌の上で転がされてるように錯覚するほど。

「なれば少年、まずはそっちが考えなおさねぇとなあ」

 まるで耳元で囁かれてるようにさえ、感じる。

 振り返る。そこには当然、誰もいない。

 ――どこだ?

「って、どういう意味だい先生?」

 茶化すように、語りかける。敵の姿が見えない以上、届くものはそれしかない。なんでもいいから、揺さぶりをかける。

「わかってるだろう? 中立である以上は、こちらからもどうこうする気はないさ。ただ、吸血鬼にくみすると宣言されると……さすがに、見過ごせんなあ」

 左足が、いきなり沈んだ。

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