閑話 城主不在の城
今回も閑話です。
シクトリーナにいるサクラ視点です。
「いいこと! キャメリアによると、ここに敵が攻めてきているらしいわ! 領土の方の結界がもうすぐ破られるそうよ!」
私は残っている皆に敵の襲撃を伝えた。
「戦うのはエキドナの重奏軍と私。皆はここの防衛を固めなさい。城の中に入っていれば安全でしょう」
「そんな! サクラ様だけ戦わせるなんて出来ません! 私たちも戦います」
警備隊のルミナだ。それ以外のシルキー達も皆が頷いている。
「駄目よ! 貴女たちはこの城の最終防衛戦なの。貴女たちがこの城を離れていったら、誰がこの城を守るの! 私は体が一つしかないから無理よ!」
体が二つあれば……そんなことを思ってしまう。でも仮に二つあったら、一つはシオン達と向こうに行ったでしょうね。
「それに私一人だけじゃないわ。ここにちゃんと助けてくれる人がいるじゃない。ねぇラミリア」
私がそう言うと、ラミリアが頷く。
「そうです。私達重奏軍が必ずや敵を退けて見せます」
「心強いわね。でも無理しないで。一人でも死んだら、エキドナに顔向けできなくなっちゃう。いいこと! 少しでも傷ついたらすぐに撤退しなさい。城に帰れば優秀なヒーラーがいるから、怪我を押して戦うよりも一旦離脱して回復してからまた戦いなさい。たとえ前線が崩れても、それだけは約束しなさい!」
この戦いでは、絶対に誰も味方に死者は出さない。出させない。
「サクラさん……分かりました。お前達も聞いたな! 絶対に死んではならないぞ!」
ラミリアが重奏隊を鼓舞してくれる。うん、頼りになる!
「サクラちゃん……無理はしないでね」
「ヒカリもね。あんたは怪我人を治すって重要な役割があるんだから、絶対に危ないことはしないでよ! あなたがやられると、それだけで全滅だってあり得るんだからね」
「っ!? うん、気をつけるよ」
ヒカリは戦闘じゃ役に立たないって、いつも言ってるけど……それ以上に大切な役目を担っている。信じているからね。ヒカリ。
「アンタたちも。しっかりヒカリを守りなさいよ!」
私はヒカリの隣にいるセラやグリン達に激を飛ばす。
「任せてください姉御。絶対にヒカリの嬢ちゃんは俺達が守ってみせる。なぁ!」
「おお! 嬢ちゃんには指一本触れさせないですぜ!」
「ヒカリちゃんには世話になってるからな。まぁ任せてくれってなもんだ」
「それより姉御の方こそ気を付けてくださいよ」
「頑張ってください姉御!」
「姉御!」
「姉御!」
そう言って始まる「姉御」コール。
「うるさい! 姉御って呼ぶなといつも言ってるでしょ!!」
ったく。なんで私が姉御でヒカリが嬢ちゃんなのよ! 同い年なのよ!!
「ふふふ、姉御……。いい呼び方じゃないですか。私たちもそうお呼びしてもいいですか?」
「良い訳ないじゃない! 姉御なんて呼び方は全面禁止よ!」
全く……。考えてみれば、ラミリアの方が年上なのに、なんで私の方が姉御になるのよ!
「……はっ!? もしかしてラミリア……。あなたやっぱりシオンのこと狙ってるわね?」
「はぁ! どうしてそうなるんですか!」
「だって私のこと姉って……シオンの嫁になるからじゃないの?」
「違うに決まってるでしょうが!! 全く姉弟揃って、変なところでボケボケなんだから……」
「ちょっと。シオンはともかく何で私までボケボケなのよ………ちょっと待ってよ! 何でシオンがボケボケなのをラミリアが知ってるのよ!」
「それは……あっそうだ姉御、移動はどうします? ヒポグリフを一頭貸しましょうか?」
「だから姉御じゃないってのに……って、今誤魔化そうとしたわね。いいわ、後でハッキリとさせてやるんだから。それで、移動手段よね? それなら心配ないわ。こんなこともあろうかと、先日捕まえたやつがいるの。ねぇあの子達連れてきて!」
私は一番遠い位置にいたサイラッドに声をかけた。
「はい姉御! で、どっちでしょうか?」
「だーかーらー。あの子達って言ったでしょ! どっちもよ。両方使ってあげなきゃ可哀想でしょ」
「は、はい、少しお待ちください」
サイラッドが慌てて駆け出す。もう、元は兵士なんだから気を利かせてくれなくちゃ困るわよ。
しばらくするとサイラッドが二匹の魔物を連れてやってきた。
「姉御お待たせしました」
「ありがとう。ねっ、これが私の乗り物。可愛いでしょ?」
「……可愛いでしょじゃないですよ。どうしたんですかこれ!」
「えっ? 先日テイムしたんだけど?」
「テイムって……いやいや、サクラさん。貴女何考えてるんですか! ほら見てください。ヒポグリフが怯えてるじゃないですか!」
「あら本当。不思議ねぇこんなに大人しい子達なのに」
「「ピーー!」」
二匹? それとも二羽かしら? 二頭かもしれないわね。まぁどっちでもいいわ。この子たち体の割には超音波みたいな高音の鳴き声なのよね。
「それ……ロック鳥じゃないですか! しかももう一匹は……まさかと思いますが、フェニックスってやつじゃないですか?」
「そうなの? ただの色違いじゃないの? だって似た体してるわよ」
「色違いって……そんな訳がないでしょう! どうみたって炎を纏ってるじゃないですか!」
「そんなの些細な違いじゃない」
「ちっとも些細じゃないですよ!」
「ほら、シオンにプレゼントしたあれ。グリフォンの白いの。あれと似たようなものよ」
「だからあれはグリフォンじゃなくて、レア種のホーリーグリフです!」
「レア種でもグリフォンでしょ。じゃあこの子もロック鳥のレア種なんでしょ」
「そのレア種ってのが問題なんですが……まぁいいです。サクラさんに話しても詮ないことでした」
なんか諦められたようにも聞こえるけど……でもそういう小難しいことは、トオルとでも話せばいいことよね。
「まぁ種族なんて何でもいいわ。私はこの子たち、えーと、名前なんだっけ?」
「岩男と熱男です、姉御」
「そうだったわね。ロック鳥だから岩男と熱そうだから熱男」
「ねぇサクラちゃん。その名前、もうちょっとさ。どうにかならないの? 正直言ってシオン君よりも酷いと思うよ」
「う、うるさいわね。じゃあ今度もっといい名前を考えるわよ。今は時間がないからいいでしょ別に」
私にネーミングセンスがないのは分かってるわよ。シオンのことを笑えないのも……だから魔法に名前も付けないんだから。
「……サクラさんが姉御の理由が分かった気がします」
何よラミリア。どういう意味なのよ。ったく失礼しちゃうわね。
「もういいわ。さっさと行って、さっさと帰ってきましょ」
早速私は岩男の方へ乗る。熱男の方は……熱そうだし今度ね。
「よし! じゃあ行くわよ!!」
私は大空へと飛び出した。
――――
「あーウヨウヨいるわね。これって、反対側も同じくらいいたらヤバいわね」
「流石に森の中を抜けるのは至難の業ですし、飛行部隊がそんなに多くはないはずですから、多分ほとんどの勢力がここにいるはずですよ」
「なら安心ね。それにしても……敵がアンデッドじゃないのはどういうことなのかしら?」
相手が何の種族か分からないけど、どうみてもスケルトンやレイス、ゾンビのようには見えないわ。……あれがヴァンパイアなのかしら?
「ヘンリーは確かにアンデッドの王ですが、ヘンリーが治める不夜城には、アンデッド以外の魔族もいます。主に夜に活動する魔族なんですが、サキュバスやインキュバス、ナイトメアや人狼がそうですね」
サキュバスやインキュバスって、エロい魔族よね。ナイトメアは良く分からないけど、人狼って……。
「ねぇ? 人狼って獣人じゃないの?」
魔族と一緒に活動するの?
「狼の獣人もいますが、それとは別物です。人狼は昼間は人の姿、夜にだけ狼の姿か狼の獣人に変化します」
「ああ、要は狼男ね。夜になったら変身するのね。満月だけじゃないんだ」
リャンファンみたいに獣人はずっと姿が変わらないから、狼の獣人は常に狼男なのかな?
「満月の時が一番強いと言われてはおります」
「ふーん、で、今日は?」
「……まだ夜には早いですけど、満月でしょう」
なら満月の今日を狙ってきた? それとも偶々かしら?
「って!? 何でこの人たちは昼に攻めてくるのよ! 夜に強くなるんでしょ!!」
そもそも奇襲するなら、ますます夜の方がうってつけじゃない!
「えっ? そう言えば……なんででしょうね?」
ラミリアにも分からないみたい。でも疑問に思うってことは、普通なら、夜に攻めて来るのが当然みたいね。
「もしかしたら、何か理由があるのかしら? ……ちょっと気になるわね。私ちょっと話を聞いてくるわ」
「えっ? ちょっと! サクラさん!? あーもう。やっぱり姉御じゃないですか!!」
遠くからラミリアの声が聞こえてくる。やっぱり姉御って……姉御って、もしかして蔑称なのかしら?
とにかくラミリアのことは気にせず、私は敵の方へ向かう。
「ねぇーー! ちょっとアンタ達-!」
私のかけ声に驚いて手を止める敵。まぁいきなり話しかけたらそうなるわよね。
「ねー! 何で夜じゃなくて、こんな時間に仕掛けてきたの-?」
「ちょっと-!! サクラさん直球過ぎますって!」
後ろから追いかけてきたラミリアから怒られる。
「いいのよ。こう言ったのは、真っ正面から素直に言った方が、本質が分かるのよ!」
「あー、この人やっぱりエキドナ様と同じタイプの人だった。いや、エキドナ様は最初は猫かぶる分まだマシかもしれない」
ラミリアが頭を抱える。
「失礼ね。それじゃあ私がまるで脳筋みたいじゃない」
「みたいじゃなくてそう言ってるんです! 脳筋以外の誰が、正直に敵に理由を聞くはずないでしょう!」
……ラミリアの言い分に、不覚にも納得してしまった。確かに賢い人は、探りながら情報を仕入れている。ルーナなんかはその典型的な人物だろう。
「えっ? まさか私って脳筋なの?」
「今頃気がついたんですか!? 遅いですよもう。ほら、敵がこちらのことジッと待ってますよ」
あっそうだ。呼び掛けてるんだから、待ってるのは当然よね。
「……」
敵はこっちをじっと見つめて話してこない。というか、攻撃もしてこない。……一体何考えてるのよ!
「あーー! もう! 何で話さないのよ! 何? これもう全部倒しちゃったらいいの?」
私は我慢できずに叫ぶ。
「だからそんな脳筋の姉御発言は控えて下さい」
「イヤー! 姉御を馬鹿の代名詞みたいに言うのは止めてー!」
そんなやり取りをラミリアとしている間も敵に動く気配はない。
「……ねぇ。何でこの人達、全く喋らないの?」
普通敵が目の前で騒いでたら、何かアプローチするわよね?
私は改めて敵を見る。この人は何の魔族なんだろう? 男で夜に力が増す魔族。やだ! インキュバスだったらどうしましょ! もしかしてヤラシイことされちゃうんじゃない?
ん? ふとよく見ると男の人が何か喋っている? 何々?
『う、え、の、つ、か、い、ま、を、ど、う、に、か、し、て、く、れ』
口パクだから確証はないけど……上の使い魔をどうにかしてくれ?
上を見る。空を飛んでる魔族がいる。随分と色っぽい女性だ。ギリギリな服装にスタイルは抜群。おまけにちょっと大人な色気のありそうな顔付き。多分サキュバスだろう。
私がきっとあんな格好をしたら……やめとこう。想像してまで惨めな気持ちになりたくはない。
だけど一つだけ言わせてもらうと、断じて私のスタイルは悪くない。ただ周りが良すぎるだけ。
「サクラさん? 多分見てる場所が違うと思いますよ。いくらコンプレックスがあると言っても、こんなとこでまで発揮しないで下さい」
失礼ね! コンプレックスなんてないわよ! でも、そうツッコんだら負けだと思うから絶対にツッコまない。
ってか、エキドナの話だと、普段の服装からは想像がつかないけど、この子。スタイルがかなり良いらしいわ。
しかもそれをシオンが誉めたですって! あの子一体何を考えてるのかしら!
だってスタイルが良いことを知ってるってことは、その……見たってことでしょう? 一体どんな状況なのよ! もしかして触ったりしたの? ……私も触ってみていいかしら? じゃない! この間はなんか上手く誤魔化されたけど、帰ってきたら覚えてなさいよ!
で、何だっけ? ああ、見てる場所が違うって言ってたわね。サキュバスじゃないとすると……あっ、まさか後ろの方にいるコウモリのこと?
あーなるほど。この人たちは監視されてるから何も出来ないのね。じゃあとりあえずあのコウモリをどうにかすれば良いんだけど、生憎私じゃ攻撃が届かないわね。岩男に乗って言っても、逃げられるだろうし……って、岩男がなんとかしてくれないかしら。
「ねぇ岩男。あそこにいるコウモリだけ攻撃できない?」
すると岩男は「ピーーー!!」と大きく鳴く。多分これって高周波攻撃なんじゃないかと思う。
あっコウモリが落ちてくる。やっぱりコウモリってそっち系の器官が発達してそうだから、ダメージになっちゃったのかな? それとも別の攻撃だったのかな?
シオンやエキドナは従魔と話をしてるみたいだけど、私はまだこの子たちと話が出来てないのよね。何でだろう? 嫌われてるのかな?
「ふぅ、やっと話せるようになったか」
コウモリがやられたのを確認して、目の前の敵がようやく声を出す。
「やっぱりあのコウモリが使い魔だったのね」
「ああ、おかげでようやく監視から逃れられた。礼を言う」
「で、早速だけど、どう言うことなの? 今から戦うの?」
「せっかく解放されたのに、なぜ戦わねばならぬ。これだから脳筋は……」
さっきの会話を聞いていたのね。って、何で初対面の人にまで脳筋と呼ばれないといけないのよ! でも今むきになって否定すると、本当に脳筋みたいだ。
「そもそもがだ。ようやく話が出来そうなヤツが来たかと思えば、まさかの脳筋とは……しかも、目の前で漫才を始める始末。流石に諦めかけたぞ」
よし、こいつを殺そう。うん、敵だもんね。仕方ないよね。
「止めてください。せっかく話し合いが出来そうなのですから」
後ろからラミリアが私を羽交い絞めにする。何故ラミリアは私がアイツを殺そうとしたことに気がついたのかな?
「不思議そうな顔をしてますが、殺気がただ漏れですよ。見てください彼を。すっかり怯えてるじゃないですか」
怯えるくらいなによ。私を脳筋扱いした罰だわ。
「とりあえずサクラさんは離れていてください。私が事情を伺います」
うーん、ラミリアは優秀みたいだけど、どこか馬鹿にされてる気がするのよね。まぁ戦闘をするわけでもないみたいだし、大人しく待ってようかな。
――――
待っている間、空にいるサキュバスさんを見ていたんだけど、やっぱりあの子たちエロいわね。何がってもう色気が凄いわね。あれは男なら誰でも飛びついてしまうわ。
うん、ここにシオンが居なくて本当によかったわ。いたら目を潰さないといけないところだったわ。
「なんでエロおやじみたいね目でサキュバスを見てるんですか? ……はっ! まさかサクラさんはそっちの……」
戻ってきたラミリアが、そういって後ずさる。
「違うから!! それ誤解だから! ちょっとエロいなーって思ってただけだから」
「その発言がまさにエロおやじなのですが……まぁいいです。話がまとまりましたよ」
「えっ本当? どうなったの?」
「あの人達は、夜まではここに待機してその後帰るそうです」
「結局どういう事だったの?」
「どうやら向こう……ヘンリーの方で、色々あったみたいです。今ってシオンさんやエキドナ様に連絡が付かないですよね?」
「ええ、通信隊が言ってたわ。魔法で妨害されてるんじゃないかって言ってたけど」
「そのようです。で、彼らはシオンさん達用の人質を捕まえるために、ここに攻めて来たそうです」
「じゃあやっぱり敵じゃない」
「待ってください。ただ、彼らは命令で仕方なく来ただけで、本来はやりたくないんです。だから、ヘンリーが倒されさえすれば彼らと戦う理由がありません」
「戦いたくなかったら、ヘンリーの命令なんて聞かなきゃいいじゃない」
「そういう訳にはいきませんよ。あの人達はヘンリーの住む領地に住んでいるのですから。元々彼ら夜魔族は先代の不死王が匿っていた種族達でして。でも、隠居したでしょ? だからと言って、彼らには他に行くところもありませんから、そのまま領地に住むしかない訳で……」
「要は先代がいなくなったからヘンリーに従うしかないってことね」
「そうです。で、最初はヘンリーも先代の領民だからと、特に何も言ってこなかったらしいですが、ただで領地に住んでいるんだから少しくらい働けと、今回駆り出されたようです」
「あー、だから仕方なく攻めてきたと。でも実際に戦う気が無くて……でも見張りがいたって訳ね」
うん、大体の状況は把握できたわ。
「ちょっと思ったんだけど、ヘンリーの本来の部下はアンデッドよね? そのアンデッドや肝心のヴァンパイアはどうしたの? まさか全部シオン達の方にいるの?」
だとしたら、シオン達の方が危険かしら? だって、赤の国の人達もアンデッドになってるんでしょ? 下手したら何万……いえ、何十万も相手にしなくちゃいけないんじゃない?
「赤の国にいるヘンリーの部下は殆どいないそうです。ヘンリーの部下は、殆どが不夜城に待機しているそうです」
「じゃあ何でこっちに来ないの? 本当の部下の方が、確実に私達に攻めるんじゃないの?」
「自分の部下のアンデッドをこちらに送り込んだら、今度は不夜城に残るのが、この人達になるでしょう。そしたら乗っ取られる恐れがあるじゃないですか」
「なるほど。自分の部下じゃないものだけで不夜城を守らせるよりも、攻めさせた方がいいのか」
自分でも人望がないことは分かっているのね。
「で、仕方なく攻めさせたのはいいですけど、やる気はないですよね。でも逆らうと、城を追い出されるから、なら振りだけしようとそんな感じですね」
「あの使い魔がいなくなったから、ヘンリーから連絡を取る手段がなくなって自由にできると。で、何で夜に帰るの?」
「あの人達なりの保険だそうです。もしシオンさん達が倒れていた場合は、ヘンリーに逆らったこの人達はどうなります? だから、使い魔がいなくなっても、しばらく頑張ったという体裁が必要なのです。なんか全部先代の入れ知恵みたいですが」
「先代ってゼロって言ったっけ? シオン達が会いに行ってケンカ売ったっていう」
「それからちゃんと和解してますって。だからこっちには攻めてこないですよ」
「あの人達は本当に襲ってこないの?」
夜になったら強くなるなら、それまでの時間稼ぎかもしれない。
「多分仕掛けてこないと思いますよ。彼ら異常にサクラさんを怖がっていたみたいですし」
「はぁ! 何でよ!」
あの程度の殺気で怖がられたらとんでもない。
「……あの人達、どうやら隠れてサクラさんに攻撃仕掛けてたみたいなんですよね。でも攻撃がまったく効かなくて……だから勝てないと思ってるようです」
「えっ? 私に? 一体どんな攻撃よ?」
攻撃を受けた記憶なんて、全くないんだけど?
「魅了です。ですが、一向に効く気配がないと……」
「あー、それなら効かないかもね。私と同系列の魔法だわ」
「そう言えば、サクラさんも洗脳や魅了の魔法を使うんでしたっけ?」
「そうよ。だからそれ系は自動的にレジストしちゃうみたい。ルーナに聞いたんだけど、洗脳系の魔法って、他の色の属性が使うよりも、ピンクの属性の方が強いみたい」
だからこの間シオンにも効いたんだし。シオンは今後は大丈夫って言ってたけど、シオンのレジストよりもピンクの方が強いとルーナに聞いた。まぁもう絶対にシオンにはかけないけどね。
と、私達の近くにいた敵が騒ぎ出した。どうやら私達の話が聞こえたらしい。
「ピ、ピンク……だと」
「そんな……適うわけないじゃない!」
「よもや生きている内に、あの伝説の属性を持つものにお目にかかれるとは……」
「きっとあの人は私達よりも淫魔に向いてるはず……」
「そうだ! きっとあの人は物凄いビッチなんだ!」
「ピンク属性のビッチ神……」
「ビッチ神……そうだ! あの人はビッチ神なんだ!!」
「「「おおーー! 我らがビッチ神!!」」」
あたりにビッチ神コールが巻き起こる。
「……」
「ぷぷぷ、ほらあの声援に答えてあげないと、ビッチ神さん」
ラミリアが必死に笑いを堪えている。いや、堪え切れていない。
「ふふ、人間てさ。これ以上ないくらいにキレるとさ。逆に冷静になるのね。知らなかったわ」
「さ、サクラさん?」
「アイツ等……全滅させてやる!! もう敵とかそうじゃないとか関係ない!! 絶対に一人残らず生まれてきたことを後悔させながら殺しつくしてやるわ!!!」
「サクラさん! それ全然冷静じゃないですから!! ほら貴方達、少し悪乗りが過ぎるわよ! 夜までとか言ってないで、さっさと逃げないと、本当に殺されちゃうわよ!」
ラミリアが私を羽交い絞めにする。ちょっと! これじゃああいつ等を殺しに行けないじゃない。
「うわー! ビッチ神の御乱心だー!」
「おい逃げろ! ビッチ神に殺されるぞ!!」
「いや、ビッチ神に殺されるなら寧ろ本望だ」
「おい、馬鹿言ってないでさっさと逃げるぞ!」
「いやあああ!! お願い離して!! アイツ等が逃げちゃう!! ダメなの。アイツ等は生かしてたらダメなのーーー!!」
その後のことは私はよく覚えてない。気がついたら、この城に脅威はなくなっていて、メイドやセラ達が異様に私に恐怖していた。




