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ロストカラーズ  作者: あすか
第三章 不死王討伐
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閑話 シエラの訃報

今回から三章になります。

ですが、今回は閑話。本編は次回から開始となります。

「そうか…やはり死んでおったか」


 随分前に気配が急になくなったと思っとったが、やはり死んでおったか。

 くせ者揃いの魔王達の中で、唯一の友だったのじゃが……。

 妾の貸し与えたヴィーヴルからも連絡が途絶えておるから、きっとあやつも死んでおろうな。あやつは役に立ったのじゃろうか?


「シエラの最後がどうだったか、詳しくは分からんのか?」


「はっ。それが何分どこにも情報が流れておりませんので……この話も、最近攻め入ったと言うエルフ共から聞いたことでございます」


 報告書に目を通す。人間の国がシエラの死亡を確認とるため、愚かにも城へ攻め入って返り討ちに遭ったと書いてある。

 エルフ共はどうやら冒険者のようで、人間の国から逃げだし、自国に帰る前に拉致して話を聞いたとある。自白の魔法を使ったため、信憑性は確かのようじゃ。


 エルフには自白されたことを忘れて解放したとある。エルフは仲間意識が強いから、殺したら後々面倒になる。……仕方なしか。


「人間どもは何故シエラが死んだのに返り討ちに遭ったのじゃ? あそこの戦力はそれほど大きくはないだろう?」


 シエラの側近のシルキーは強かった。じゃが、おそらくシエラと共に死んでおろう。……いやあの者なら生きておるやもしれぬ。しかし一人ではどうしようもあるまい。


「それが……新しく城の城主になった男が、もの凄く強かったと。人間の冒険者や兵士どもが束になっても敵わなかったと言っておりました」


 城の中に男がいたと? ……なるほど、確かにシエラは死んでおるようじゃ。


「他に何か情報はあるか?」


「はっ、エルフ共は知らなかったようですが、どうやら同時に人間の兵が二千ほど城に攻め入ったようです。が、そちらもたった一人の男に返り討ちに遭ったそうです」


「ほう。人間が二千程度、妾なら造作もないことじゃが、妾以外でこの国にそれが出来るものが何人おるものやら。その者のことは詳しく分からんのか?」


 多少の差なら力押しでやられるじゃろう。じゃが、相当の力量の差がなければ、二千の差は埋まらぬはずじゃ。それとも広域魔法で一斉に始末したのか? であれば魔力だけあれば何とかなるやもしれん。


「生き残った兵は、どうやらその者に呪いをかけられたようで、詳しいことは何一つ話せないと。呪いを解こうにも解くことが出来ないそうです」


「呪いを解くことが出来ないじゃと?」


「はい。呪いを解こうと解呪の魔法を唱えたり、薬を飲まそうとしただけで呪いが発動し、さらに外部にまで伝染する始末です」


 ふむ。興味深いの。返り討ちにした実力もそうじゃが、解呪すら出来ない呪いとは聞いたこともない。余程強力な呪い魔法のようじゃな。

 しかしここまで強力な魔法となると、名のある者のような気もするが。


「そちはその男について何か心当たりはあるか?」


 妾は隣におる側近のラミリアに声をかける。


「いえ、存じ上げません」


「ふむぅ? この者は一体何者かのぅ」


「陛下、この事が関係しているか分かりませんが、あの辺りの情勢はかなり変化しております」


 ラミリアとは逆隣におる、参謀のハーマインが報告する。


「どのように変化しておるのだ? 申してみよ」


「はっ、ここ一年で急速に赤の国が滅びに向かっております。そして、それには不死王が関わっていると報告があがっております」


 人間の国が滅びようと勝手じゃが、魔王が関わっているとしたら話は変わってくる。


「何? 不死王……ヘンリーの方か? 詳しく申してみよ」


 同じ不死王でもあの隠居ジジイが何かするとは思えぬ。きっと若造の方じゃろう。


「現在、人間の民が村ごと消える事件が多発しているようです。その為、あの国では食料は激減しているようです」


「それとヘンリーが何か関係があるのか?」


「不死王は最近人間を大量に眷属化していると報告があがっております。おそらく人間の行方不明は不死王の仕業かと推測されます」


 あやつは生き物を殺してアンデッド化させ、支配に置くのだったな。全く陰湿な奴じゃ。同じヴァンパイアでも隠居ジジイはそんな真似はせなんだ。


「ヘンリーは何故今そんなことを始めたと思う? 奴が本気ならば何時でも出来たことではないのか?」


 あやつならやろうと思えば何時でも行えたはずじゃ。今それを行っておる理由はなんなのだ?


「それは……恐らく、不死王は以前より虚空が死んでいたことに気がついていたのではないでしょうか? それで戦力を増強し、虚空の領地に攻め入る気ではないかと存じます」


 虚空……シエラの通り名じゃな。世間では首なしなどと蔑称で通っておったが……久しぶりに聞いたがあやつにピッタリの名じゃった。


「ふむ。おかしいと思わぬか? シエラが死んだと知っておるなら、邪魔立てするものはおらぬだろう? 人間から戦力を奪わずとも、直接攻めればよかろう?」


 それとも……まさか新しく住み始めた男というのは、ヘンリーすら敵わぬ男なのか? 馬鹿な。妾には足元にも及ばぬが、それでも魔王の一人じゃぞ。……ヘンリーは何を知って、何を考えておるのじゃ?


「うーむ。このままでは埒があかぬ。それにヘンリーが戦力を増やすのも面白うない。シエラのことも詳細は分からんと……いっそのこと直接見てみるかの。よし、今からシエラの城に向かう!」


 善は急げじゃ。さっそく準備することにしよう。


「「「なっ!?」」」


 何故そんなに驚く必要があるのかのう?


「お待ちくださいエキドナ様! そんな誰かも分からないものに直接会おうとなど……おやめ下さい」


「何故止めねばならん? 分からぬから行くんじゃろうが」


「危険です! わざわざエキドナ様が行かなくても、部下に命じて探らせればよいではありませんか?」


 その言葉を聞いて妾はラミリアを睨み付けた。


「そなた……何が危険だと申すのだ? よもや妾が名も知れ渡っておらぬ者に害されると申すのか?」


「いえ……とんでもございません。エキドナ様に敵う者などおるはずがございません。ですが……」


「くどい! 妾に敵うものがおらんのなら良いではないか。それに我が友シエラが死んだとなれば花でも添えてやらねばなるまい」


 妾はそう言うと立ち上がり命じる。


「準備が出来次第出発する。表にグリフォンを準備させとくのだ」


 それだけ伝え、妾は自室へ戻った。

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