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ロストカラーズ  作者: あすか
後日談
460/468

日本編⑯

 俺は飛び立った飛行機を眺める。

 ミサキ達は大丈夫だろうか?


 いくら実家に帰るだけと言っても、行方不明になっていたんだ。大騒ぎになってもおかしくない。

 特にリカとヒミカはテレビで放送されるくらいの大事件だったそうだ。


 一応問題があればいつでも連絡してくれと伝えてはいるが、それでも一抹の不安は拭えない。


 まぁ既に四人は飛び立っていった。心配してもどうしようもない。

 それよりも、これからのことを考えなくては……俺は目の前ではしゃいでいる二人を見てさっき以上に不安になった。


「わわわっ!? 本当にあんなに大きいのに空を飛んでます」

「ねっ!? すごいよね!!」


 壁に張り付いて大はしゃぎしている二人。もちろん王女とティティだ。

 ちゃんと大人しく出来るとは何だったのだろうか?


 そもそも俺達はミサキ達を送った後、改札を出ずにそのまま目的地に行く予定だった。

 だが、二人が実際に飛行機が飛ぶところを見たいとごねた為、仕方なく一旦地下鉄を降り、飛行機の離陸を見ていたというわけだ。


「あんな鉄の乗り物が空を飛ぶなんて……実際に目にしても信じられません」

「ねっ。あれが魔法じゃないんだから、もう何が何だかって感じだよ」

「……あれ、黄の国へ持って帰れないでしょうか?」

「うーん。流石に無理じゃないかな? あの大きさじゃゲートに入らないと思うよ」

「そうですか。ではここに来るまでに乗った地下鉄……という乗り物も無理でしょうか?」

「そうだね。でもさ、持って帰れないんなら、向こうで作ればいいんだよ!」

「そ、それですわ!!」


 それですわじゃねー!

 そんな簡単に作れたら既に作ってるっての。……いや飛行機だけは俺の一存で作らなかったと思うが。そもそも俺の反対を押しのけて計画された飛行船の実用化がようやく現実味を帯びてきたところだ。飛行機なんてもっと先の話だろう。


 でも……地下鉄はアリかもな。地上よりは魔物の数が少ないから安全だろうし、盗賊とかの心配もない。

 穴堀の魔法が使える人材がいれば、一気に話を進めることが出来そうだ。帰ったらドルク達に相談してみようかな。


「飛行機も飛んだことですし、そろそろ出発しませんか?」


 アレーナが興奮状態の王女とティティを冷ややかな目で見ながら言う。彼女は飛行機には興味がないようだ。

 というよりも料理以外のことに興味があるのかすら疑問だ。空港でも飲食店をずっと眺めていたし……おそらく出発前に注意してなければ、既に入っていたのではないだろうか?

 だがアレーナの言うことももっともだ。


「じゃあ行くか。……おーい! ティティ! カナリア! 次の場所に行くぞ!」


 話し込んでいた二人は俺の言葉に元気に返事をする。


「「はーい! シオンお兄ちゃん!!」」


 俺は二人にお兄ちゃんと呼ばれてむずがゆい気分になる。


 普段呼ばれているシオン様。日本で日常的に様付けさせている人物なんてほとんどいない。

 だから外では様付けを禁止させた。

 もちろん王女も禁止だ。外ではカナリアと呼ばせてもらうことになっている。

 王女――いやカナリアはそっちの方が嬉しかったようで、『これからはずっとカナリアと読んでくださいまし!』と言っていた。まぁ丁重にお断りさせて貰ったが。


「ほらほらシオンお兄ちゃん! 早く早く!!」


 気がつくとアレーナが既に改札の方へと向かっており、ティティ達がそれに続いていた。

 それにしても……ティティ。子供扱いはするなと言ってたが、今のお前はどう見ても子供だ。

 おそらく開き直っているのだろうが……それ、むしろ小学生くらいまで退化していないか?


「さぁ……あ、あなた。行きましょう」


「あ、ああ」


 ルーナが照れながら俺に呼び掛ける。別に夫婦なんだから照れる必要はないと思うんだが……。そんなに意識されると俺まで照れてしまう。

 ……この調子で今日一日乗り越えられるのか?



 ――――


「う…………うわぁ。こ、ここはお城ですか!?」


 目的地を見て、カナリアが目を輝かせている。確かに黄の国の城と大きさは同じくらいか。


「それにこんなに大勢の人が……今日はお祭りですか!?」


「今日は平日だから普段より人は少ないぞ。土日ならこれの倍は賑わっているはずだ」


「これよりももっと多くの人が……」


 そう考えると今日が平日で良かったかもな。あまりに人が多すぎると本当に面倒になっていただろうからな。


「さて、とりあえず何か食べに行こうか。それから色々と見て回ろう」


 さっきからアレーナが不機嫌になっている。空港でも我慢させたし、いい加減何か食べさせないとブチギレそうだ。

 どうやらティティ達も賛成のようなので、俺達は飲食フロアへと向かうことにした。



 ――――


 それからが大変だった。

 飲食店までに向かう間にティティとカナリアがフラフラと寄り道しようとするのを必死で止めたり、どの飲食店でご飯を食べるのか言い争ったり。

 アレーナは俺が話したラーメン店に行ってみたかったようだが、ティティ達は猛反対。ラーメンなんかよりもっとオシャレなご飯が食べたいと言い張った。

 まあここまで来てせっかくのお昼をラーメンで過ごしたくないティティ達の気持ちは分かる。

 だがいい匂いがして、種類の豊富なラーメンの研究をしたいアレーナの気持ちも分かる。

 だがここはアレーナに折れてもらった。この辺は夜になったらラーメンの屋台が数多く並ぶ。アレーナにはそっちに行く約束をし、今回はティティ達の要望を聞いて洋風レストランへと入った。


 空港で無駄な時間を過ごし、ようやく食事を……となると、自分の希望の料理が食べられない。団体行動だから仕方ないとはいえ、この時点でアレーナのフラストレーションは大分溜まっていたと思う。

 食事自体は楽しんで食べていたが、食後は一気にテンションが下がっていた。


 アレーナとは逆にティティとカナリアは絶好調だった。普段のティティならアレーナの様子がおかしいことに気が付きそうなのだが、今日だけはそれどころじゃないらしい。ただ俺の方も二人に付いて回るのに必死でアレーナを気遣う余裕もなかった。


 そしてついに爆発した。


 きっかけはなんとルーナだ。

 途中にあったベビー用品売場。その場所でルーナは一歩も動かなくなった。それどころか、自分から店員に話し掛け色々と質問を開始する。

 次第に他の客とも話始め、気がつくとママさん交流会が出来上がっていた。

 俺が次に行くと言っても、『ここでお待ちしてますので、わたくしに構わず行かれてください』だ。


 ここでアレーナが『ルーナ姉さんが勝手にするなら私も勝手にします』と飲食フロアへ戻ろうとする。

 そしてティティとカナリアは『じゃあ私達も次に行こうか!!』と二人で別の場所に行こうとした。


 もう限界だと思った俺は移動しようとする三人に五分だけ待ってくれと懇願し、応援を呼ぶことにした。


「――それで妾を呼び出したのじゃな?」


「ああ。俺一人じゃどうしようも出来ない。助けてくれ」


 俺はトイレの個室をゲート登録して一旦家に帰り、待機していたクミンを連れてきた。そして戻るまでに簡単に説明した。


「そんなに過保護にせんでも自由に行動させればよいのではないか?」


「それが出来たら苦労はしないよ。……ほら見てみろ」


 俺がたった五分不在にしていただけで、アレーナ達は既に男達から声を掛けられていた。

 三人は凄く鬱陶しそうにしている。手が出るのは時間の問題だろう。


「アレーナ!」


 俺は少し大きめの声でアレーナに話し掛ける。そして男達を見る。


「……俺の連れに何かようで?」


 普通なら俺みたいな優男ひとりがこんな風に挑発的だったら、逆に文句を言いたくなりそうだが、男達は俺に怯んで慌てて逃げ出す。

 言葉に少しだけ魔力を込めていたから、男達には俺がヤクザ並みの存在に感じたことだろう。


「とまあ、こういうわけだ。クミンにはどっちかの引率を頼みたい」


「ふむ。どちらかと言うことは、そなたの嫁はよいのか?」


「……あの調子ならルーナは大丈夫だろう」


 ルーナの様子をちらりと見る。随分と楽しそうに話してやがる。あそこに口を挟むのは難しそうだ。というか、俺がさっきまで居なかったのさえ気づいていたか。

 少なくとも後数時間は大丈夫だろう。


「ではシオンさんは私と一緒に行動するってことで」

「ええー!! シオンお兄ちゃんは私達と行動するんだよ! ねーシオンお兄ちゃん」


 そう言ってアレーナとティティが俺の手を取り合う。……なんだこれ?


「いいですかティティ。私にはどうしてもシオンさんが必要なのです」

「私達だってシオンお兄ちゃんが必要だよ!」

「いいえ。貴女達は一緒に遊びたいだけでしょう? 私にはシオンさんじゃないと駄目な理由があるのです」

「アレーナちゃんは食べてるだけだから、関係ないでしょ。私達は動き回るから男の人が欲しいの」


「ほっほっほっ。シオン、そなたモテモテじゃのう」


「いや、そんなのはいいから」


 なんかいつの間にかギャラリーが増えてすごい目立ってるし……。本当にどうしよう?

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