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ロストカラーズ  作者: あすか
後日談
459/468

日本編⑮

今回からシオン視点に戻ります。

 日本滞在二日目。


 自分の部屋で寝たわけではないが、それでも我が家での就寝は何とも言えない懐かしい気分を味わえた。


 今日は午前中の内にミサキ達を空港まで送る。と言っても、車でなく地下鉄で一緒に移動するだけだが。


 今回俺たちが滞在する期間は五日間。すでに一日経ったので残りが四日。

 最終日は買い逃しや帰還の準備に忙しいと判断して、全員で団体行動の予定。

 そのため、自由時間としては今日からの三日間となる。その三日間を俺、姉さん、トオルの三人が日替わりで引率することになった。

 三人でまとめて見ないのは……やはり俺達だって自由時間が欲しいからだ。

 俺だって墓参りに行きたいし、ルーナとシーナと三人だけで過ごす時間が欲しかった。

 だから今日は俺、明日は姉さん。最後にトオルが引率することになった。

 最初を選んだのは、残り二日をゆっくりしたかったってのもある。墓参りは姉さんも一緒だからトオルが引率日の日にした。明日は完全オフとなる。


 しかし俺は現在少し後悔している。何故なら今回の引率は最初が一番辛いからだ。なにせカラーズ組は初めての日本だ。多少の知識はあるものの、実際に体験するのは今日が初めて。常識ゼロの状態といえる。


 その上、急遽王女も参加することになった。てっきり王女は王子と女王と一緒にヒカリの家へ向かうと思っていたのに……。

 王女は夜にヒカリの家で合流することにしたそうだ。まぁ状況的にはお見合いの場みたいな感じだろう。となれば王女は居場所に困るはず。

 だとすれば国の為にもこっちの世界を見て回ること。それが私の仕事だと言っていた。適材適所なんて難しい言葉も使っていたが、要は遊びたいだけだと思う。とにかく一人増えたことにより、さらに面倒になった状態だ。


 残りのメンバーは、ソータはトオルと出かけるらしい。どうやら事前に予約していた商品の引き取りが云々言っていた。クミンはお留守番。流石に一人はこの家に居ないとマズいかもとの判断だ。

 姉さんはセラと二人でお出かけ。何処に行くかは知らない。

 王子と女王はヒカリが迎えに来るのをこの家で待機。お昼前に迎えに来るようなので、俺達が出発した後になると思う。


 その為、最終的な参加者は引率者の俺、それにルーナとシーナ、アレーナ、ティティと王女だ。シーナは含めないとして、個性豊かな四人の手綱を握ることが出来るだろうか?


 とりあえずミサキ達を送った後は、そのまま地元一番の大型複合施設へ向かう。ファッションから雑貨、書店やアニメショップなどのショッピングエリア。ラーメン店だけで十軒近くある五十を超える飲食店。

 それに映画館や劇場、ステージ、ゲームセンターもある。週末になると、テレビの生放送や、ご当地アイドルのイベントをやってたりする。


 アレーナの食の研究も、ティティのファッション、王女にとっては全てが珍しいはず。それに子供服もあるのでルーナも楽しめるだろう。

 そこに行けば四人の要望を叶えることが出来るはずだ。


 だが、それだけ巨大な施設だと、それだけ人も多い。

 だから俺は四人を集めて注意喚起することにした。


「いいか。四人はこの日本は初めてだ。多少勉強してきたかもしれないが、油断は禁物。何があるかわからないから、絶対に単独行動は禁止だ。分かったな」


 四人は素直にうなずく。……が、俺の今までの経験上、絶対に理解していないと思う。

 いや、頭では理解していると思う。だけど……。


「本当に大丈夫なんだろうな?」


「当然です。わたくしがシオン様のお側を離れるはずがございません」

「あーシオン様。疑ってるの?」

「私はシオン様と違って常識人ですから言いつけは守ります」

「シオン様。わたくしは王族として絶対に約束は守ります」


 俺の疑いに四人は心外だとばかりに言い返す。


「……例えばアレーナ。今から行く場所には五十を超す料理店があるが、途中でいい匂いがしたらフラフラとそっちに行ったりしないか? 勝手に料理店に入ったりしないか?」


 俺がそう言うと、アレーナはそっと目を逸らす。どうやら否定できないらしい。


「今回行く場所は一ヶ所なのですよね? 何故そんなに料理店があるのですか?」


 どうやら複合施設を理解できてないみたいだな。


「とりあえずラーメン店だけでも十軒くらい。他の料理や甘味処もあるし……その施設以外にもたくさん飲食店はある。それこそ空港や駅にもたくさんの飲食店はあるぞ」


「……何故ラーメン店だけでそんなにあるのです? どこも同じなのではないのですか?」


 あっちの世界でラーメンと言ったらアレーナの味しかない。他の者はアレーナの味を真似ているだけ。

 一応味はとんこつ、塩、しょうゆと三種類あるが、みそやとんこつしょうゆのようなものはない。多分どこの店も似たような味と思っているに違いない。


「ラーメンの世界も奥が深いってことだ。アレーナの味とも全く違うと思うから、滞在中に一回はラーメンも食べるといいと思うぞ」


 是非食べ比べして欲しいが、他にも食べたい料理はたくさんあるはずだ。金の心配はいらないが、胃袋の心配はしなくてはならない。果たして一日でどれくらい食べることが出来るだろうか……っとと、そうじゃない。勝手に食べに行かないように注意しないといけないんだった。


「だからアレーナ。ラーメンのいい匂いがしても一人で勝手に入ったりしないこと。絶対に付いてくるんだぞ」


「……分かってますよ」


 思いっきり不満そうだ。こりゃ絶対に守らないな。気がついたらいなくなってそうだ。まぁはぐれてもケータイで連絡を取れるし、最悪転移でこの家に戻ってこれる。迷子の心配はしなくてもいいが、問題なのはそこではない。


「いいかアレーナ。もし一人になったときに、知らない男にナンパされても、絶対に相手を張り倒さないこと。分かったか」


 アレーナは日本人には見えないが、かなりの美人だ。そんなアレーナが一人でいたら、外国人だろうが、絶対に声をかけられるに違いない。


「……シオン様は私をなんだと思っているのですか? 別に張り倒しませんよ」


「アレーナ。相手を甘く見るなよ。今日日のナンパは滅茶苦茶しつこいぞ。それを暴力に訴えずにあしらうのは本当に難しいからな」


 一回断ったくらいで引き下がるのならここまで問題にはしない。だけどアレーナくらいの美人ならナンパ男もしつこいだろうし、たとえ引き下がったとしても、その後何人も声を掛けられるはずだ。

 あのゼロにすら物怖じしないアレーナがしつこいナンパ男に対してどういう態度をとるか……あまり考えたくない。


「とりあえず言葉が通じない振りでもしたら、少しはマシになるだろうから、飴の効果を切って向こうの言葉で話せばいいかもしれない」


「はいはい。分かりました分かりました。せいぜい気をつけますよ」


 アレーナはどこか投げやりに答える。……面倒くさくなったな。まぁ実際に被害に遭ってみないと分からないか。


 次はティティと王女だ。二人もアレーナ同様油断したらすぐに居なくなりそうだ。


「二人も絶対に勝手な行動をしないように。珍しいオモチャや用途不明なものがあっても近づかないように」


「……ねぇシオン様。アレーナ様に比べると、私達への注意がちょっと子供っぽくない?」


 ……オモチャと食べ物。どっちもどっちだと思うが。


「あと……はぐれても迷子センターには行かずにすぐにケータイで連絡するんだぞ。それから補導されたら留学中の学生で、今日はホームステイ先の人と買い物に来ましたって言うんだぞ」


「……やっぱり子供扱いしてるよね!? なんでアレーナ様はナンパで私は補導なのさ!!」


「……妥当な判断だと思うが?」


 どう見たって王女とティティは高校……いや、中学生だ。確かにこれだけ可愛かったら中学生でもナンパされそうだが、どちらかというと補導される可能性の方が高いと思う。


「あっ、あと誘拐にも気を付けろよ。お菓子をあげるって言われても付いていっちゃ駄目だぞ」


「ぶーぶー。シオン様の意地悪。そんなことするわけないじゃん」


 ティティが頬を膨らませてむくれる。うん、実にあざとい。

 でも流石にちょっとからかい過ぎたかな。


「まぁそれならちゃんと問題ないことを証明してくれよな」


 ちゃんと言いつけを守ってくれれば後でいくらでも謝ってやろう。


「よし、じゃあ次の注意事項だけど……」


 だがそこでルーナが待ったを掛ける。


「あのーシオン様。わたくしには何もないのですか?」


「……注意してほしいの?」


「そりゃあわたくしだってナンパされたときの対処法とか……」


「いや、ルーナはナンパされないよ。それに補導……というか、ルーナの場合は職質になるな。それもないだろうし……第一ひとりで離れることがないだろ? 強いてあげるなら、子供服売り場で羽目を外しすぎないようにって感じかな」


「アレーナはナンパされてわたくしはナンパされないのってわたくしに魅力がないから? ……いえ、違います。シオン様が守って下さるからですね!」


「いや、違う」


 俺はあっさり否定する。

 もちろんルーナもかなりの美人だし、歩いているだけで目を引く存在だと思う。だがアレーナやティティ達とルーナでは大きな違いがある。


「ルーナ。よっぽどでない限り子持ちの女性はナンパされない」


 シーナはルーナがずっと抱き抱えているだろうから、ルーナがナンパされることはない。

 そもそもルーナが一人になる状態が想像できない。

 どんなに興味を引かれるものがあろうとも、引きこもりのルーナが見知らぬ土地でフラフラと一人になるはずがない。

 俺が守る守らない以前に絶対に俺から離れるつもりはないだろう。


 とにかく要注意なのは三人。この三人は何があっても目を離さないようにしなくては。

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