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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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閑話 シクトリーナの決着④

今回まで閑話、サクラ視点です。

次回から本編に戻ります。


 あの子達……大丈夫かしら?


 ミカエルが出てきちゃったから、残りの天使を任せちゃったけど……まぁ熱子とオワンもいるし、大丈夫よね?


 それにシクトリーナと繋げっぱなしにしているケータイから、エリーゼの報告があった。向こうが完全に決着がついたから、ルーナがこっちに向かってきてるみたい。

 だったらルーナがたどり着くまで持ちこたえるくらいはやってもらわないと。


 それよりも私はミカエルに集中しなくちゃ。

 どうやらミカエルと一緒にネームド天使も残っちゃったみたいだけど、そのくらいはちょうどいいハンデででしょ。


 仮にケインが相手だったなら、こんなこと考えもしなかったでしょうけどね。ケインの方がミカエルよりもよっぽど手ごわい相手だった。それを証明させてあげるわ!


「さぁ! 全員まとめて掛かってきなさい!」



 ――――


 さて、全員掛かって来いとは言ったけど、私はずっとネームド天使達の攻撃を避け続けていた。

 任せるとは言ったけど……もしあの子達に何かあったらと思うと、やっぱり集中できないのよねぇ。だから私は一応いつでも駆けつけられるよう、自分から攻撃には出られなかった。


 あの子達の周りの天使達は何故か同士討ちをしていた。多分リカの魔法でしょうね。詳しくは聞いてないけど、ヒミカが回復系でリカが洗脳系ってことは知っている。二人の周りをたくさんの盾が守っている。あれがヒミカの魔法の方ね。

 でも二人とも直接的な攻撃魔法を持ってないから見ていてハラハラするわ。


 途中で一人の天使が二人の方へ向かって行った。止めようか迷ったけど、あの天使……普通の天使と少し違ったから見逃しちゃったわ。


 どうやら二人の知り合いの天使だったみたい。何か話しているわね。

 ……って!? 向こうにルーナがいるじゃない!! 遠くで様子を見ているみたいだけど、もしかして出待ちをしているのかしら? もう……来たんならさっさと助けてあげたらいいのに。


 でもルーナがあっちにいるならもう安心ね。いい加減避けるのも飽きちゃったし、私もそろそろ本気を出しちゃおうっと。


 この天使達……全員攻撃が単調なのよね。

 まぁ魔力だけで言えば、私達以外に相手になる人なんていないから、今まではその魔力にかまけてろくな戦いをしてこなかったんでしょうね。


 私は【絶対領域】をもう一度発動させた。

 私は名付けのセンスがないから普段は魔法の名前を付けない。でもこの魔法は私の魔法の中で一番使用するものだから、どうしても会話で必要になっちゃう。そこでヒカリが名付けてくれた。


 この魔法の中では、私以外の全ての力と動きが鈍くなるデバフが掛かる。また魔法にも効果があるから、遠くからの魔法にも平気。

 昔は半径一メートルしか効果がなかったけど、今は十メートルは余裕ね。


 この中では私が絶対の存在。私に勝てる人はいない。だから【絶対領域】なんだって。

 ちなみに名前が決定した後にヒカリがこの魔法を使うときは太ももを露出させないと駄目って言ったから小突いてやったわ。全く何を考えてるんだか。


 さっきのエンジェル達はこの【絶対領域】では身動きすら取れなかったみたいだけど、流石にネームド天使。身動きが取れないってことはないみたい。


「でも……そんな動きじゃ私には勝てないわよ」


 動けるといっても多少って感じ。殆どスローモーションだから子供でも避けられるわ。

 私は一番近い所にいたネームドを魔力を込めた拳で思いっきり殴る。

 私はシオンみたいに沢山の魔法は使わない。身体強化で肉体を強化すればそれだけで十分強いと思う。以前ヒカリにそれを力説したんだけど、脳筋って言われたから小突いてやったわ。本当に失礼よね。


 殴られた天使は一気に地上まで叩きつけられる。あれじゃあ生きてても瀕死でしょうね。よし次を……と狙いを定めると、そのネームドは戦闘中だと言うのに私を見てなかった。私の背後を見て驚いてるみたい。


 気になったので私も振りかえると……空一面銀色に包まれていた。

 何なのあれ!? って銀色だからルーナの魔法なんでしょうけど、表面が銀色のオーロラのようって……あれが【カーテンコール】って魔法なのかしら? 確か中で【銀幕世界】って魔法を使って、逃げられないように【カーテンコール】で閉じ込めるのよね? 【銀幕世界】はシオンとの模擬戦で見たことあるけど、【カーテンコール】は初めて見るからあってるか不明だわ。というか【カーテンコール】であってたっけ? もっと長い名前だった思えがあるわ。


 まぁ名前はどうでも良いけど、ルーナはエンジェル達を一網打尽にしたようね。

 やっぱり範囲魔法は効率が良いわよね。私は単体攻撃……というかこの肉体しかないから少し羨ましいわね。さっきもリカに呆れられちゃったし、もう少し考えた方が良いかしら?


 そんなことを考えいたらルーナがこっちにやって来たわ。もしかして私の獲物も横取りする気かしら?

 ルーナは私の【絶対領域】に入っても変わらずに動いている。流石にルーナには殆ど通用しないか。乗ってるヒポグリフも平気なのはルーナが守っているからよね。私の岩子と同じだわ。


「サクラ様。状況は如何ですか?」


「見ての通り順調よ」


「宜しければわたくしがネームドの相手を致しましょうか?」


「別に結構よ」


 やっぱり横取りする気みたいね。


「ですがドライの戦いはもう終わって、残っているところはここだけですよ。サクラ様がネームドに時間をかけていると、打ち上げに間に合わないかも……それよりはネームドをわたくしに任せてサクラ様はミカエルに専念した方が宜しくないですか?」


「……打ち上げってするの?」


「打ち上げというよりは戦勝祝いですかね。皆様無事に終われたのですからしない訳にはいかないでしょう。もしサクラ様がご自身の力だけで戦うと申されるのでしたら、わたくしはリカ様とヒミカ様を連れてさっさと帰還いたしますが? お二人もそろそろ決着がつきそうですしね」


 私一人仲間外れの打ち上げは嫌よね。……どうしよう?


「ところでそのリカとヒミカは今何してるの?」


 向こうの天使はルーナが全滅させちゃったんじゃないの?


「あの二人は因縁のある天使と地上で……」


 そう言うとルーナは固まった。私もルーナと同じ方向を見ると……。


「ちょっ!? あの二人倒れてるじゃない!! 何があったのよ!」


 そこにはさっきここから出て行ったネームドと三人で横たわっている姿があった。


「サクラ様。ここは話している暇はありません。今すぐにここのネームドを倒して二人の様子を確認しに行きましょう」


「そ、そうね。じゃあネームドは任せるわ」


 確かにここで話している場合じゃないわ。今すぐに片付けて二人を助けに行かないと!!


「ではわたくしはネームドだけ連れてここから去りますね。ここはサクラ様の魔法で動きにくくて仕方がありません」


「全然変わったように見えないくせによく言うわね」


「普通にお話しする分にはそう違いはありませんけど、戦闘となりますと少し辛いものがありますね」


 良かったわ。全く効いてないかと思って少し凹んじゃったわ。

 でも……相手はもっと動かないんだから、多少動きにくくても余裕だと思うけどね。まぁ私にとっても邪魔になるから居なくなってくれた方が助かるわね。


「ではわたくしは行きます。……あっひとつだけ情報を。シオン様の聞き取りによりますと、天使の魔力の殆どは翼に集まっているそうです。ですので翼を斬り落とすと人間とほぼ変わらない力まで落ちるそうですよ。ガブリエルも翼を斬り落とされて負けておりましたし、宜しければ参考にされてくださいまし」


 ルーナはそれだけ言うと、銀の糸のようなものを用意してネームド達に括りつける。そしてまとめて連れて行った。


 翼に天使の魔力が集まってるいる……か。でも翼を斬り落としたとしてもケインは戻ってこないでしょ?


「でも……ミカエル。貴方にはケインの体を返してもらわないとね」


 ミカエルは大剣を構えて私と対峙する。あの大剣……ケインが使っていた物に似ている。ケインは自分の魔法で召喚していたけど、同じ魔法が使えるのかしら?

 私は正面からミカエルを迎え撃つ。動きがどことなくぎこちない。【絶対領域】がちゃんと機能しているようだ。

 私はミカエルの懐に潜り込み思いっきり殴る。


「がはっ!?」


 ミカエルは痛みに耐えかねて大剣を落とす。


「ケインは全く同じ状況で私の拳を受け止めたわよ!!」


 あの時はその大剣で受け止められて、私の方が拳を痛めたのよね。


「それにケインには【絶対領域】は全く効かなかった! なのに貴方はこの程度で弱体化するの!!」


 悶絶しているミカエルを更に殴る。さっきのネームドはすぐに地上まで落ちていったけど、耐えてるのは流石ってところね。


「だけどっ! ケインの力はそんなものじゃなかった。だから……その体を早くケインに返しなさいよ!!」


 私はミカエルの背後に回り込み、手にありったけの魔力を込める。そして手刀でミカエルの翼を斬り落とした。



 ――――


「ケイン……貴方の体は取り返したわよ」


 ミカエルは翼を斬り落とした瞬間、ぐったりと倒れた。

 そのまま地上に落下しようとする体を抱えると、すでに心臓は動いていなかった。ルーナの言う通り、翼に殆どの魔力が宿っていたみたい。


 その体が突然光を放ち始めた。


 えっ!? 何々? もしかして危険!?


 だけど落とす訳にもいかない。どうしよう? そう考えていると光が消えて……そこにはミカエルの姿ではなく、ケインの姿に戻っていた。


「ケイン!?」


 思わず叫ぶがもちろん反応はない。心臓も止まったままだし……ミカエルが完全に消えて元の体に戻っただけのよう。

 でも……良かった。ミカエルの体で弔うよりはケインの体で弔ってあげたいものね。


 デューテ。ちゃんと取り戻したからね。



 ――――


 そういえばリカとヒミカはどうなったの!? ルーナは!?

 まずは地上の二人の方を確認する。……ほっ。どうやら無事みたいね。先ほど倒れていた二人は今は起き上がっていた。ネームド天使の方は倒れたままだから……あっちも終わったようね。


 次にルーナの方を確認する。


「……あの子何やってるの?」


 ルーナの目の前にはネームド天使の……銀像があった。その前でルーナは首をひねっている。

 私はルーナに気づかれないようにひっそりと近づいた。


「うーん。今一つですね。クリスタルのように透き通った美しさを出すにはどうすればいいのか? やはり銀一色では難しいのでしょうか?」


「一体何を悩んでいるのよ!!」


「うわっ!? ……サクラ様。驚かさないでくださいまし」


「貴女が勝手に驚いただけでしょ。それよりも……何をやっているの?」


「えっ? 今はその……新しい魔法の開発を考えておりまして……試しに使ってみようかと」


「それがその銀像なの?」


「ええ。わたくしの魔法で銀化させてみたのですが、今一つ出来栄えが……」


「ねぇ。ひとつ聞きたいのだけど、銀化させる意味ってあるの?」


「それはもう。芸術的でしょう?」


「お馬鹿!! 何が芸術的よ! 戦闘に芸術は関係ないでしょうが」


「いいえサクラ様。今は攻撃にも美しさを求めるべきで……」


「知らないわよ!! というか敵で遊んじゃ駄目だっていつも言ってるでしょう!! シオンに言いつけるわよ」


「そんなっ!? どうかシオン様には内密に……」


 全く……やっぱり怒られるって自覚があるじゃない。


「次やったら承知しないわよ。というか、遊んでいる場合じゃないでしょう。二人のことが心配じゃなかったの?」


 さっき見た感じ大丈夫そうだったけど、元々は急いで助けに行くって話だったはず。


「えっ? そういえばそうでしたね」


「……忘れてたの?」


「忘れていたと言いますか、元々心配してないと言いますか……本当に心配していたら、ネームドなんか気にせずに、真っ先にお二人の元に駆けつけますよ」


 確かに……よくよく考えると別にルーナがネームドを相手にしなくても、リカとヒミカの元に行かせれば良かっただけよね。あの時は咄嗟のことで気がつかなかったけど……ルーナは気がついていたのよね。


「じゃあ二人が倒れていたのは……」


「原因は不明ですけど、サクラ様の従魔が慌てておりませんでしたから、心配しなくても宜しいかと思いまして……」


 確かに二人の近くに熱子とオワンがいたわ。言われれば慌てている様子もなかった。


「ルーナはそれを知ってて慌てた振りをしていたのね?」


 私からネームド天使を横取りするため、ひいては銀化する魔法の実験をするため。


「ルーナぁ?」


「そ、そんなに睨まないでくださいまし。それよりも終わったのでしたら早く戻りませんこと?」


「ルーナ。後でお仕置ね」


「そんなっサクラ様!?」


 全くもう……。偶にはルーナにもお灸をすえてあげないとね。

 でもまぁこんな風に言い合えるってことは、本当に終わったってことでいいよね?

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