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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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第293話 引き渡そう

 【毒の霧】が消えるまで様子を見ていると、すぐそばで空間の歪みを感じる。これは誰かが転移をしてくるな。


「やぁシオンくん。状況はどうだい?」


「やっぱりトオルか」


 ここに俺の許可を取らずに自由に転移が出来るのはトオルしかいない。しかしトオルの奴。当たり前のように空を飛んでやがる。多分大気を自由に操れるから……なんてチートだろう。


「今【毒の霧】でネームド以下の天使を全滅させているところだ。まだもう少し掛かるかな?」


「そんなにのんびりしていていいの? ルーナくんに聞いたけど、アズラエルが出たんでしょ?」


 どうやらある程度の状況は聞いてきたみたいだ。


「まぁな。でも今アズラエルはアヴァロンで死の魔法を広げていってる。ここまで届くのにまだ時間はあると思うんだ」


「それはそのまま広げていったらでしょ? 追いかけてきたらどうするの?」


「確かにその可能性もあるけど……アズラエルだって、こんなところにのこのこと出てきたら危険なことくらい分かってるはずだ。このまま範囲を広げていけば、勝手に天使が死んで強くなっていくんだ。安全に範囲を広げれるなら、このまま広げていくと思うんだけどなぁ」


「まぁ現時点ではそうかもね。でもアヴァロンの天使が全滅したら飛び出してくるんじゃないかな?」


「あっ、それでか!」


「えっ? どうしたんだい?」


「いやぁ。何で天使は全員逃げなくてアヴァロンに残ってるのかなぁ? って思ってたんだ。そっか。メタトロンを逃がすための時間稼ぎをしているのか」


 さっき捕まえたネームドの話では、イェグディエルはアヴァロンに残っている。

 殺される危険があるのに、逃げずに残る理由は何か考えてたんだけど……メタトロンを安全に逃がすための時間稼ぎか。


「ふーん。イェグディエルが時間稼ぎをしているのか。じゃあもう少しは大丈夫そうだね」


 まぁ少なくとも霧が晴れるくらいの時間はありそうだ。


「でもメタトロンにはアズラエルの魔法が効かないんだろ? 何故逃がしてるのか……もしかしてジャミングが効かないとか?」


「今までジャミング出来ていたのに、いきなりジャミング出来なくなるとか……どうして分かるんだい?」


「どうしてって……どうしてだ?」


 よく考えたらジャミングの失敗は死を意味する。確かめようがないんだ。


「これは僕の予想だけど、アズラエルがブラフをしたんじゃないのかな?」


「ブラフ?」


「うん。メタトロンに向かって、お前のジャミングなんか効かなくなったぞって。いつでもお前を殺せるんだぞって」


「それ……信じるのか?」


「信じるかどうかだって? だって試せないんだから信じなくても逃げるしかないじゃないか。もしかしたら部下に逃げろって言われたからって理由もあるかもね」


 そっか。嘘だと笑い飛ばすのは簡単だけど、だからと言って本当だったら困るのか。だったら一旦避難して、様子を見てから真偽を判断するって感じかな?


「しかしそれでイェグディエルを犠牲にしてもいいのか?」


 七大天使を殺したら何のためにここまで来たのか……本末転倒じゃないのか? まぁ他の七大天使ももう時間の問題だろう。セラフィエルだってトオルがここにいるんだからもう死んでいるんだろうし。


「それ。僕も気になったんだけど、どうやら七大天使の替えが効くみたいだよ」


「はぁ!?」


「セラフィエルがね。自分の代わりを見つけてもらう……と言ってたんだよ」


「代わりって……じゃあ何で連中はわざわざパラキエルを探していたんだ?」


 七大天使の替え効くなら、さっさと別の天使で済ませてしまえばいいのに……。


「その辺はセラフィエルが話してくれなかったけど、地球では七大天使って色々な説があるんだ」


「色々な説……」


「そう基本的にガブリエル、ラファエル、ミカエル、ウリエルの四人は変わらないんだけど、残り三人は教派とか聖典によって違うんだよ。セラフィエル、バラキエル、イェグディエルはその中の一つだね」


「その中の一つってことは、別の教会やら聖典なら他の七大天使がいるのか?」


「例えばサリエル、レミエル、ラグエルの三人が七大天使になっている聖書もあるし……ザドキエル、アリエル、ハニエル、カムエル、ザフィエルなんかも候補に挙がっているよ」


「……サリエル、レミエル、アリエルってどこかで聞いた天使がいるな」


 リカとヒミカ……それに死んだスバルに入っていた天使だ。


「もし七大天使の補欠がいるとなると、彼女達が候補になってたんじゃないかな? とは言ってもあれだけバラキエルを探していたんだ。簡単に変更は出来ないんじゃないとは思うけどね。例えば……継承制で、完全消滅しないと次が出てこないとか?」


 完全消滅しないと……か。

 天使とは関係ないけど、スーラはアークスライムって種族だ。

 このアークスライムはこの世で一匹しか存在しないらしい。現存のアークスライムが死んだら別の個体が新たなアークスライムとして君臨する。

 もしかしたら七大天使のシステムも似たようなものなのかもしれないな。


「それで……セラフィエルはどうなったんだ?」


「アルファ島の天使は全滅したよ。セラフィエルはこちらに情報を渡さないようにって、最後は自爆してね。少し危なかったよ」


「情報を残さないように……か。徹底しているな。じゃあセラフィエルに関しては何も残ってないのか」


「肉体や鎧まで本当に全て消滅して……最後にこれだけが残されていたよ」


 トオルは小さな……手帳を取り出す。


「サクくんの生徒手帳。本人は人間の頃の記憶なんてないって言ってたけど……これだけは自爆しても無くならないようにしっかりと守ってたみたい」


「それ……本当に記憶がなかったのか?」


 記憶が無かったら必要ないものじゃないか。


「僕も本音を聞きたかったけど……もう誰にも分からないよ」


「そっか……。なぁその生徒手帳。リカとヒミカに渡していいか?」


「うん。僕もそう思って持ってきたんだ。シオンくんから渡してあげて」


 俺は生徒手帳を受けとる。


「さて、僕の方も現状をもう少し聞いてもいいかい?」


 俺は先ほど捕まえた三人のネームドの話を聞かせた。



 ――――


「じゃあメタトロンがあの霧の中にいるのは確実なんだね」


「ああ。自白剤を使ったから間違いない」


「それで……メタトロンを見つけたらどうするの?」


「とりあえず生け捕りにした後で話を聞きたいけど……アズラエルを倒す方が先だろうな」


「でも連れ回ったら殺される可能性があるから大変だよね?」


「うん。だからホリンに連れて帰ってもらおうと考えているんだけど……」


「なら僕がアルファ島に連れて帰るよ」


「トオルが?」


「うん。元々そのつもりでここに来たんだしね」


「……何か変なこと考えてない?」


「変なことなんて考えてないよ。というか、変なことって何だよ」


「いや、分からんけど……」


「僕はメタトロンに話が聞きたいだけだよ。シオンくんだってそうでしょ?」


「そりゃあそうだけど……トオルは何が聞きたいんだ?」


「そんなの沢山あるよ。例えば他に天使の生き残りがいないのか? とか。ホムンクルスの作り方とか。もちろんシオンくんが気になっている召喚についてもね」


「ホムンクルスの作り方なんて聞いてどうするんだ? もしかして……」


「実際に作るかどうかは別にして、天使がいなくなったら無くなる技術の知識は仕入れてとかないと駄目だよ。それに、ゴーレムの技術にも役立つかもしれないしね」


 俺が言い終わる前に先を越されてしまった。確かに天使がいなくなって廃れたら何かあったときの将来が困るか。


「分かった。トオルに任せるよ。だけど……」


「もちろんシオンくんが戻ってくるまでメタトロンは生かしておくよ。あっ、セラフィエルみたいに自爆されちゃ困るから、自白剤と自殺予防の薬みたいなのをくれないかい?」


「じゃあこれを注射するといい。俺の毒魔法【自白剤】が入っている。聞かれたことしか話せなくなるのと、情報を抱えたまま自殺できないように、防衛機能が備わっている。ただ、魔力は無効化されてないから、魔法自体は使える。そこだけは気をつけてくれ」


 思えばこの魔法は最初期に作ったんだよな。まぁ使用したのは数回だけど。


「魔法の無効化は僕の方でするから大丈夫だよ」


 そういえばトオルも魔法無効化が使えたな。


「これは普通の注射と同じように腕にすればいいの?」


「一応体内に取り込めば何処だっていいけど、俺はいつも首筋に打ってる。まぁ俺の場合は注射器じゃなくて人差し指だけど」


「そういえばこの注射器もシオンくんの魔法なの?」


「ああ。だから使ったら捨ててくれて構わない」


 中身を入れる器はイメージ通りに作れるってのはやっぱり便利だよな。


「そういえばティアマトくんにも巨大な注射器を使ってたね。テティスくんに聞いたけど、あれ以来ティアマトくんは先端恐怖症になってるみたいだよ」


「えっ!? 本当に?」


「うん。本人もあまり気がついてないみたいだけどね。無意識のうちに針にビクついたり、ピンクを見るとに攻撃的になったりしているみたい」


「今一緒にしたけどピンクは絶対に俺のせいじゃないよね!?」


 間違いなく姉さんの作ったピンクのクラゲのせいだ。


「全く……姉弟でティアマトくんにトラウマを植え付けるんだから」


 また姉さんと同類扱いされる。でもさ、あれは不可抗力だろ。


「まっ、そんなことはどうでもいいけどね。じゃあ僕はメタトロンを連れて帰るよ」


 自分で話題にしておいて……まぁ俺も忘れることにしよう。


「多分もうすぐで霧が晴れるから、その後で……」

「あっ、面倒だから霧ごとまとめて全部持っていくね」


 そう言ってトオルは魔力を練ると……一瞬にして霧が消え去った。


「はぁっ!? 一体どうやったんだ?」


「霧を空間の箱に閉じ込めて、その空間を転移させたんだよ。霧が晴れたら全く別の場所にいるんだ。きっと驚くと思うよ」


 ……本当にトオルは規格外だな。


「じゃあ僕はもう行くよ。アズラエル戦頑張ってね」


 トオルは俺達がさっき捕まえた三人と一緒に転移で消えていった。

 やはりメタトロンをトオルに預けるのは少し危険な気がするけど……今はアズラエルに集中しようかな。

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