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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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閑話 アヴァロンの異変

今回は閑話。

前半がトオル視点で、途中からティアマト視点になります。

 ティアマトくんとテティスくん。

 二人のお陰で――いや、どちらかというと二人の所為で、アルファ島の戦闘は味気ないことになってしまった。

 僕としてはアルファ島のギミックを試す絶好のチャンスだったんだけど……本当に残念でしょうがない。

 でも今回の本命はメタトロンだから、彼がやられなければ良しと考えた方がいいかもしれないね。それにセラフィエルの部隊が全滅した訳じゃないしね。生き残りで実験を始めようかな。


「イチカくん。全ゴーレムを起動させちゃって」


「畏まりまシタ」


 アルファ島の罠は大きく分けて三つ。


 一つ目は空間遮断。空の至ることろに空間に切れ目を入れる。するとそこを天使が通るとスパっと切断されてしまうんだ。よくワイヤーを使って首を切断させる推理物があるけど、それに似たような罠だね。

 空間の切れ目はゴーレムが操作している。虫タイプの小さなゴーレムが二匹一組となっていて、そのゴーレム虫を点と点とし、直線上に空間の切れ目が生まれるんだ。だから、常に空間の切れ目は移動していて、罠の場所を特定できないようになっている。それに空間の切れ目は見えないから、面白いように天使が引っ掛かってくれた。


 二つ目はゴーレム砲。ゴーレムを利用した自動砲台で弾は各属性の魔法結晶から放たれる魔法弾になっている。これは威力が固定されているからあまり威力がなかったね。当たり所が悪いと致命傷にはなるけど、この砲台で死んだ天使はいなかったようだね。ただこの弾は発射されると透明になるので天使には避けることが出来ないみたい。

 これはここで役立つというよりは、人間の国で野生の魔物対策にピッタリかもしれない。

 天使にダメージを与えるんだから、Aランク以下の魔物なら退治できるだろうし、少なくとも致命傷は与えられる。ハンプールに現れた【時の咆哮】レベルの魔物にもダメージを与えられるだろうし、スタンピード対策にもなるはず。

 ゴーレムだから初期の設定次第で人間同士の戦争に利用することも出来ないし、透明化だけ取り外したゴーレム砲として売り出してもいいかもしれないね。


 三つ目は転移の罠。天使が転移ポイントを通過すると罠部屋に転移される。罠部屋では魔力無効化の結界を張っているので、天使は魔法が使えなくなる。

 そこで戦闘用ゴーレムの能力を実験する。ゴーレムが天使相手にどの程度通用するか確かめるにはピッタリだと思う。


「さて、イチカくん。僕はメタトロンが現れるまで、ネームド天使とセラフィエルを相手に準備運動をすることにするよ。ゴーレム砲の転移弾を使ってネームドとセラフィエルを例の部屋に誘導してくれないかい」


 僕専用の戦闘部屋。キャメリアくんの魔法もジャミングしているからシオンくん達に見られる心配もない。メタトロンがやって来るまで彼らをじっくりと調べさせてもらおうかな。



 ――――


「ティアマト姉様。わたくし達……一体何をしているのでしょう」


「テティス……それを言わないで頂けます? 妾も辛いのです」


 アルファ島にやって来た天使を【クリスタルコメット】で倒したところまでは良い感じでした。

 その後、他の島へ救援に向かいましたが、どこの島も手助けなど一切必要ありませんでした。


 始めに向かったガンマ島では吹雪が吹き荒れ、雷が鳴り響いておりました。あのような状況では近づくことすら出来ません。妾とテティスは何も出来ずに次の島へと向かいました。


 次に向かったファイ島を海から確認しましたが、外からは天使が一人も見当たりませんでした。恐らくゼロ様の結界が使用されていたのでしょう。中に入ることも考えましたが、結界の中は瘴気まみれだとゼロ様から伺っております。結界作動中は絶対に立ち寄らないように言われておりましたので、諦めて次の島へ向かうことにしました。


 最後に訪れたデルタ島では天使は空を飛んでおりませんでした。いえ、数体の天使は飛んでいたのです。ですがエキドナ様が一人で笑いながら相手をしておりました。あれを邪魔しては、後でエキドナ様に怒られてしまいます。それから他の天使ですが、何故か地べたを這いずり回っておりました。そこをシオン様の従魔であるホリン様を始めグリフォンやスライムが仕留めておりました。流石に混ざって攻撃する気はありません。結局、妾とテティスはただ四つの島を一周しただけとなりました。


「こんなことならアルファ島で待機しておれば良かったです」


 そうすればメタトロンの軍勢を相手にすることが出来たかもしれません。

 今から帰ったところで、もうトオル様が相手をしているのでしょうね。


「このままですと、虹のメンバー入りを逃してしまうかもしれませんわ!」


「しかし姉様。ここからどうやって活躍しましょうか?」


「問題はそこです。ひとまずアルファ島へ戻ることにしましょう。もしかするとメタトロンの軍勢がいるかもしれません」


 可能性は低いでしょうけど……もし居なければその時にまた考えることにいたしましょう。



 ――――


「姉様。やはりおりませんね」


 アルファ島へと戻ってきましたが、やはりメタトロンの軍勢はおりませんでした。

 ですが少し様子がおかしいです。アルファ島では現在戦闘が行われている様子はありません。メタトロンの軍勢どころかセラフィエルの様子すら見当たりません。


「メタトロンの軍勢はまだ来てないのではないですか?」


 メタトロンの軍勢がやられた跡にしては天使の死体が少なすぎます。島に残っている死体はセラフィエルの軍勢の死体しか見当たりません。


「ということは姉様。わたくし達にもまだ活躍するチャンスはあるのではないでしょうか?」


「そうですね。ですが……」


 今の時点でメタトロンが来ていないのはおかしい気がします。もしかして妾達がやり過ぎてしまった所為で、出撃を取りやめてしまったのではないでしょうか? しかしシオン様の【死の呪い】はまだ上空にございます。あれはブラフだと分かっていても、アヴァロンに留まるのは不気味のはず。何かこちらの予想外の展開になっているのではないでしょうか?


 水柱に乗ってアルファ島を上から見下ろします。ですが島にある天使の死体の中にセラフィエルの死体は見当たりません。妾達が見ることの出来ない奥の方まで侵入されたのでしょうか? いえ、それにしては島の設備は壊されておりません。侵入されたとは考えにくいですね。


「メタトロンも気になりますが、セラフィエルも見当たりません。やられた形跡もありませんし、少し調べてみましょう」


 しかし詳しく調べると言ってもどうすればいいのでしょうか? 上陸したらトオル様の邪魔になりそうですし……トオル様に連絡するのも邪魔になりそう。シオン様……イプシロンなら映像を見ているはず。それにシオン様に連絡すれば新たな指示も頂けるかもしれません。そうですね。シオン様に連絡してみましょうか。


「テティス。シオン様に連絡してみましょう」


「えっシオン様に? 姉様……先ほど持ち場を離れて一周したことを咎められないでしょうか?」


 そういえば功を焦るばかりに持ち場を離れて、結果何もせずに一周しただけ。サボっていたと思われても仕方がない行動かも知れません。今更ながらに恐ろしくなってきました。


「だ、だ、だ、大丈夫でしょう。シオン様は寛大な御方。妾達の行動もお許しになるはず……」


「ティアマト姉様……そのご様子ですと、どうやら何も考えてなかったようですわね」


「呆れているようですが、テティスこそ何も言わなかったのですから同罪ですわ」


「わたくしは姉様がちゃんと考えていると思いましたから……それに、シオン様もわたくし達が勝手にしていたのはご存じのはず。止めなかったのは自由を認めて下さったからではありませんか?」


「そうですよ! 本当に咎めるおつもりなら、初めからお止めになっていたはずです」


 もぅ。心配して損しました。少し文句を言われるかもしれませんが、それくらいならば仕方がないでしょう。


「では改めましてシオン様に……」

「姉様っ!? あちらを……」


「今度は何ですか……と、もしかしてあれはメタトロンの軍勢でしょうか?」


 テティスが指した方角を見ると、アヴァロンから天使の軍勢が飛び出してきました。ようやくメタトロンの出陣でしょうか。

 それではシオン様に連絡せずともメタトロンを……。


「姉様!! じぃから火急の連絡との声が!!」


「じぃから? 何と申しているのです?」


 じぃは妾とテティスの執事。第二竜宮城が出来てからは妾に付き従うことが増えましたが、元は魔王の執事として雇っておりました。ですので現魔王のテティスと眷属関係を結んでおり、遠く離れた場所からでも念話が使えます。

 じぃには【スパイラルチェーン】を頼んでおりました。そのじぃが火急の用ですか。嫌な予感しかしないのですが……。


「それが……」


 妾はテティスからじぃの要件を聞くと、すぐにシオン様へ連絡をすることにしました。

ここまでお読みいただき誠にありがとうございます。

既に二日ほど過ぎてしまいましたが、お陰さまで初投稿から一年が経ちました。正直ここまで長くなるのは予想外すが、飽き性の自分がここまで続けられたのは読んでくださる皆様のお陰だと思っております。

七章も佳境に入っており、出来れば今月中を目処に七章を終わらせる予定です。

よろしければ引き続きお楽しみください。

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