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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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第289話 シクトリーナの様子を確認しよう

「お二人とも。そろそろこっちに戻って来てくれませんか?」


 ちょうど話の区切りが付いたタイミングでティティが呼び掛ける。話し方と言い、なんか少し不機嫌になってないか?


「どうしたティティ。ご機嫌ななめじゃないか?」


「私だって馬鹿にされたりダシにされて二人の世界に入られたら面白くないよ!」


 ティティが頬を膨らませる。相変わらずあざとい。


「別に馬鹿になんかしてないって」


「でも……せっかく頑張って演じたのにお馬鹿って言われたもん」


 おいおい。さっきので本当に怒ってるじゃないか。


「いやいや、別にあれは馬鹿にしていた訳じゃなくて、ただ……そう! 幸せだなぁって思ってさ。こんな戦争中でもティティのような存在がいるから俺達は頑張れるんだってその幸せを噛み締めた意味があったんだよ! なっ、ルーナ」


「えっ!? そ、そうですとも。言い方は少しアレでしたが、ティティのことは頼りにしているのですよ。ですから機嫌を直してくださいまし」


「えー? 少し嘘っぽいけど……」


「何言ってるんだよ! 俺がティティに嘘を吐くわけないだろ。例え他の誰かに嘘を吐いたとしても、ティティにだけは嘘を吐かないって誓ったんだ」


「誓ったって……誰に?」


「誰っ!? えーと、キャメリアかなぁ?」


「そこで私を巻き込まないでくれますか!?」


「だって二人で誓ったのは事実だし……」


 ティティを監視していた事実を二人で墓まで持っていこうと約束したはずだ。


「確かにそうですけど……それをここで言うのはどうかと思いますよ」


「……何で私に嘘を吐かないのをキャメちゃんと話しているのかな?」


「だって直接ティティには誓えないからさ。それにティティは唯一……それこそスーラですら知らない、俺の最大の秘密を知ってるだろ」


《ちょっと!? 私の知らないシオンちゃんの秘密ってなんなの!》

「シオン様っ!? キャメリアともティティとも秘密を……やはりわたくしを蔑ろにしておりませんか!」


 今度はスーラとルーナがうるさくなる。


「あーもう!! 今はそんなこと話してる場合じゃないだろ! ティティも何か話があったんだよな!」


 半分以上は自爆だが、このままじゃ収集が付かなくなる。とりあえずキレて誤魔化すことにした。


「えっ? ……まぁいっか」


 ティティの頬が元に戻る。機嫌が直るというよりはどうでもよくなったみたいだ。……やっぱりあの頬を突ついてみたかったな。


《誤魔化そうとしてるの》

「シオン様……」


 この二人はしつこそうだ。ただここでは追撃してこない。流石に状況を弁えているみたいだ。


「あのね。シクトリーナからまだ連絡が来ないの。ガブリエルの話じゃすぐにでもミカエルが来そうな感じだったのにね」


「「えっ?」」


 デューテとガブリエルが話してから……一時間近く経っている。なのにまだ姿すら見せないの?


「ちょっと連絡してみてくれ」


 もしかしたら既に戦闘中なのかもしれない。ただそれでも通信室から連絡は来そうだが……。


「うん。分かったよ」


 ティティがシクトリーナに連絡を入れることにした。



 ――――


「あっシルビアちゃ……」

『きゃああああああっ』

『ちょっとアンタ! 何やってるのよ!!』


 通じた瞬間、甲高い悲鳴と姉さんの怒号が聞こえた。今の悲鳴……ただ事じゃないぞ。


「お、おい! 何が起こってるんだ!」

「シルビア! 聞こえますか!! 返事をしなさい」

「シルビアちゃんどうしたの!」


 俺達は同時に呼び掛ける。


『あっすいません。今少し立て込んでまして……』


 一呼吸おいてシルビアが返事をする。立て込んでいるのは十分に分かる。


「今の悲鳴を聞けば分かる。何があった!」


『今の悲鳴はヒミカ様の悲鳴で……その、リカ様が自分の足を切り落として……』


「はぁ!?」


 足を切り落とす? どう言うことだよ。だがシルビアはそれに答えず、代わりに少し離れた場所からリカの声が聞こえてきた。


『いっつぅぅ……さぁ! これで私が本気だってことが分かったでしょ!』


『馬鹿なこと言ってないで、さっさとエリクサーを飲みなさい!!』

『そうよリカ! ほらこれ……』


『いや。まだ……サクラさんが頷くまで飲まないわ』


『ちょっと何言ってるのよ!! そんなことより早く飲まないと死んじゃうじゃない!』

『……まさか本当に私がいいと言うまで飲まない気? そんなのただの脅迫じゃない』


『脅迫ととってもらってもいいわ。それだけ私は本気なのよ』


『あーもう! 分かったわよ。ちゃんと連れて行くから早く飲みなさい』


『ホントよね? 飲んだ後でやっぱりなしとか……』


『言わないから!? いいから早く飲まないと、その体にぶっ掛けるわよ!』


『ほらリカ……』


『ありがとヒミカ……それとごめん。ヒミカの研究無駄にしちゃった』


『そんなことどうでもいいよ。それよりも、心配かけたことを謝ってよ』


『あはは。そっちもごめん。……というか、本当に足が生えてくるんだ。なんか不思議な感覚ね』


 声だけは聞こえてきたが……リカが足を切って、姉さんを脅して姉さんが折れた。それは分かったが、いったい何がどうなってこうなったんだ?


「おいシルビア。どう言うことか説明してくれ。というか映像をくれ」


 キャメリアがこっちにいるから、こっちからシクトリーナの映像は分からない。さっきみたいに動画を送ってくれるか、テレビ通話に変更するしかない。

 ティティが一旦通話を切り、映像付きに変える。

 通話相手のシルビアの向こう側に、姉さんとリカ、ヒミカの三人……それから少し離れた位置にシャルティエがいた。そしてリカの車椅子周りにおびただしい血と、無造作に放置させられている二本の脚。随分と痛々しい光景だな。


『あっはい。えーと、では簡単に説明しますね』


 シルビアの説明では、出撃準備を終えた姉さんにリカが自分も連れていけって行ったそうだ。話の流れから城外って意味ではなく、城から離れた場所だということが分かる。

 ただ正直この時点で既に疑問がある。俺は城下町を安全なツヴァイスに転移させて、城で迎撃するように言ったはずだ。それがどうして出撃に変わってしまったのか。


 どうやら転移はギリギリまで行わず、姉さんが一人でミカエル軍を撃退する。姉さんが突破されたら、城下町を転移して、残ったセラ達で撃退する予定だったそうだ。

 何でそんな危険な真似を……と思わなくもないが、おそらくいつもの姉さんの暴走が原因のようだ。城下町を転移させたら後片付けが大変になる。だから自分が出撃した方が早い。そう言ったみたいだ。話の内容的には理解できるけど、後処理よりも目の前の安全を尊重してほしい。もちろんシャルティエはそう進言したけど姉さんは聞く耳を持たず、出撃準備を始めたそうだ。


 その時点でこっちに報告が欲しかったが……その時点ではまだミカエルが来ることが確定ではなかったし、ちょうどこっち側の天使の出撃と被ったみたいで、報告するタイミングを逃したそうだ。


 そして準備を終えた姉さんに、先程ティティがメールにて報告したミカエルが正式に向かっていることを報告。

 満を持して出撃しようとした姉さんに、リカが自分も連れていけって話になったそうだ。


 もちろん姉さんは許可をしない。だが、リカも気が強いから一向に退かない。

 足手まといって言っても、絶対に足手まといにならないと言って聞かない。

 そして、そんな足で役に立つはずがないって姉さんが言った。


「だから足を切り落としたのか」


『ええ。じゃあ足が動けばいいんでしょうって言って……手に魔力を込めて、手刀でスパッと』


 うわぁ……痛そう。確かに魔力を込めれば刀のように斬ることは出来るかもしれない。しかし、無茶しすぎだろ。


「ちょっと姉さんとリカに変わってくれ」


『畏まりました。……サクラ様ぁ! リカ様ぁ! シオン様がからお話がありますって!』


 シルビアがその場で二人を呼び掛ける。すると二人は……。


『えっシオン? ……私には要はないから断って』

『……私も特に話すことはないから不在って言って』


「いや、聞こえてるからね!! 別に怒らないから。少し話を聞きたいだけだから!」


 何で通話中で映像にも出てるのに居留守を使うんだよ。姉さんとリカ。それからヒミカとシャルティエがモニター画面に近づく。

 さて、呼び出したはいいけど何を言おう。本当は説教したいけど、怒らないって言っちゃったし、多分聞く耳を持たないだろうな。

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