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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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閑話 管理者の想い③

今回の閑話はティアマト視点です。

次回は本編、シオン視点に戻ります。

【海中】


「良かったですわねティアマト姉様。わたくし達にも活躍の機会が与えられましたわ」


 先ほど妾達はシオン様からトオル様のサポートとして、アルファ島の天使達と戦うよう命令されました。


「そうね。本当の所を申しますと、【タイダルフォール】や【スパイラルチェーン】のみでは活躍したとは言えませんからね」


「ティアマト姉様。その【タイダルフォール】と【スパイラルチェーン】というのは先ほどの魔法でしょうか?」


「ええ、シオン様が名前がないのは不便だと仰ってましたから、先ほど考えました」


 もう少し時間がありましたら、もっと良い名が思いついたかも知れませんが、今後使用するか分からない魔法。分かりやすい方が良いでしょう。


 今回、妾達の役割は【タイダルフォール】で道化師さんの登場を隠し【スパイラルチェーン】でアヴァロンを動けないよう固定する。これだけでした。

 アヴァロンが動かないように、天使が全滅するまで【スパイラルチェーン】を使い続ける必要があるので、役割としては重要なのですが、如何せん地味。少し物足りなさを感じておりました。

 もっとハッキリと目に見える形でお役に立ちたい! そう思うのも仕方のないことです。


「よいですか、絶対に活躍して虹のメンバー入りを果たすのですよ」


 シオン様は今回の活躍で選ぶことはないと申しておりましたが、そんなことはありません。絶対に今回活躍した方から選ぶに決まっております。


 ライバルはラピスラズリのお二人。双子の兄妹で、人間ながら【魔力の共鳴】という、妾とテティスの【シンパシー】と同じことが出来る方々です。

 姉妹と兄妹。青と水色。【魔力の共鳴】と【シンパシー】。共通点の多い中からシオン様がどちらを選ばれるか……今のところ少し分が悪いと思っています。

 何故なら彼らは人間で妾達は魔族。もちろんシオン様が魔族と人間を差別されないお方なのは知っています。

 ですが、やはりどちらかを選ぶとなると、同じ人間を選んでしまうのが人としての心理だと思います。

 だからこそ妾は、あの二人よりも活躍する必要があるのです。

 聞くところによると、彼らも幻影魔法でなく、ガンマ島で天使と戦うとのこと。負けるわけには参りません。


 それに、こちらが優位な点がないわけではありません。

 それは妾がロストカラーズ出身であること。これはきっと大きなアドバンテージとなっているはずです。

 妾がいれば案内が……もちろん何万年も経っている今、覚えていることは殆どありません。その上【死の呪い】で何もかも変わっているはず。ですがそれは言わなければ分からないこと。メンバーの一員になってから謝罪すればよいのです。


 そうそう、覚えていないで思い出しましたが、シオン様には妾の忘れた過去を教えていただきました。

 正直に申しまして妾がこの星の祖だと言われてもピンと来ないのですが、それでもあの話を聞いたとき、心に空いていた穴がかっちりと嵌まった気がします。


「もうシオン様には返しきれないほどの恩が出来てしまいましたね」


「……ティアマト姉様?」


「あら、思わず声に出してしまいましたわ。今ね、シオン様に妾の過去を教えていただいたことを思い出していたの」


「そうですか。あの話を聞いたとき、わたくしの姉様はとんでもないお方だと改めて思いました」


「ふふっ、何も覚えていないんですけどね」


「覚えておらずとも今、この世界が存在しているのはティアマト姉様のお陰です。わたくしは妹として誇らしく思いますわ」


 テティスが嬉しいことを言ってくれます。


 テティスは妾の実の妹ではありません。妾と親交のあったドーリスの娘です。ドーリスは【禁断の果実】によって狂ったオーケアノスを放っておけないからと箱舟に乗らず残る決断をしました。そこでドーリスは親交のあった者達に自身の子を授けておりました。その時に妾がまだ幼かったテティスを頼まれたのです。

 それ以来、テティスは妾の妹として育てました。今では本当の妹のように思っております。そしてテティスもその事実を知っておりながら、妾を本当の姉のように慕ってくれる。これ程嬉しいことはありません。


「では、その可愛い妹を裏切らない為にも今回の戦い、頑張りましょうね」


 テティスの為にも頑張る必要があります。


「それでは姉様。具体的にはどのようにしましょうか?」


「そうですね。如何せん敵の数が多すぎるので、ここは手っ取り早く広域魔法で一気に殲滅させましょう」


 今回の妾達の役割は敵の幹部を倒すのではなく数を減らすこと。本当は幹部も倒したい所ではありますが、そうするとトオル様に怒られてしまいますからね。


「では今回も【クリスタルコメット】を使いますか?」


「ええ。シオン様にはワンパターンと思われてしまいそうですが、空中にいる敵に攻撃するのは【クリスタルコメット】が一番最適ですからね」


 船や陸上ならば他の魔法でもいいのですが、対空戦となりますと妾には攻撃方法が殆どありません。

 それに前回の戦いで、ネームド天使までは【クリスタルコメット】で倒すことができると判明しました。

 となりますと、妾達が相手をする敵全てに通用するということです。幹部であるセラフィエルとトップのメタトロンさえ倒さなければ他は全滅させてもいいということですよね?


「流石に十万人の天使となりますと、前回よりも規模を大きくする必要がありますね」


 テティスの言葉に大きく頷きます。

 前回三百程度の天使と飛行船。同程度の威力ですと一万までは巻き込めるでしょうが、それ以上は難しいでしょう。


「もちろん全力で当たります。ただし、アルファ島を傷つけないよう注意はしないといけません」


 【クリスタルコメット】の第二段階は、氷の隕石を落とす。第二段階のままではそのまま地上まで落ちてしまいますから、アルファ島にも被害が出てしまいます。そのため、今回は前回使用しなかった第三段階と第四――最終段階まで発動させる必要があります。

 最終段階までご覧になったシオン様がどういった感想をしてくださるのか……少し楽しみですね。


「ティアマト姉様。全力となると、【スパイラルチェーン】はどうしましょうか? シオン様からは見た目だけはそのままでと言われておりますが……」


「ああ。そういえばそうですね。忘れていました」


「姉様……」


 テティスから少し呆れた視線を感じます。どうやら早くも姉の威厳が損なわれてしまいそうです。


「えー、確かに【クリスタルコメット】に全力を出すと【スパイラルチェーン】は消えてしまうかもしれません」


 もちろんその理由は魔力不足ではなく、敵を倒した際に興奮して、妾が【スパイラルチェーン】の存在を忘れてしまうからです。ですがそれは致し方ないことだとは思いませんか?


「そうです! 【スパイラルチェーン】はじぃにお願いすることにしましょう!」


 じぃならば【スパイラルチェーン】の維持は容易いはず。それどころか、妾よりも強固な鎖になるのでは?

 じぃは攻撃に関してはからっきしですが、防御に関しては一級品。じぃにダメージを与えるのは至難の技です。そのじぃが魔力を込めれば、絶対に動くことはないでしょう。


「そうですわね。じぃならば上手くやってくれそうですわ」


 妾の名案にテティスも賛同してくれる。これで姉の威厳を少し取り戻したかもしれないですね。


「では早速じぃにお願いをして妾達は準備に入りましょう」


「はい!」



 ――――


 天使が妾達の遥か上空を飛んでいきます。妾達は海中から見ておりますので天使が気がつく気配はありません。

 今飛んでいるのはラファエルの部隊。ゼロ様のいるファイ島へ向かっているのでしょう。

 ついでにこの部隊も倒しておきたいところではありますが、あまり余計なことをすると怒られてしまうかもしれません。ここは我慢です。


「テティス、よいですか。セラフィエルの部隊が半数ほど過ぎた辺りで攻撃を仕掛けますよ」


「分かっております」


 テティスは少し緊張しているのでしょうか? いつもより声が固い気がします。ここは姉として妾がしっかりとリードしてあげなくてはなりませんね。


「あっ、姉様。あの部隊がセラフィエルの部隊ではありませんか?」


「えっ!?」


 妾が考え事をしている間に、いつの間にかラファエルの部隊は通りすぎており、別の部隊がやって来ました。

 他の部隊は北と南なのでここを通ることはありません。あれがセラフィエルかメタトロンの部隊……先陣でメタトロンの部隊はあり得ませんから、セラフィエルの部隊に間違いありません。


「ではテティス。作戦開始です!」


「はい! 姉様!」


 妾達姉妹の力、天使に思い知らせてあげましょう。

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