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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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閑話 管理者の想い①

今回は閑話。

各島のキーパー視点になります。

【アルファ島】


「トオル様。準備が整いマシタ」


「ああ。イチカくん。ありがとう」


 どうやらゴーレムの準備も万端のようだね。

 しかし、まさか僕のところにメタトロンが来るなんてね。七大天使のセラフィエルとメタトロン。両方を相手にするんだ。ラッキーというか、アンラッキーというか。メタトロンだけならラッキーだけど、セラフィエルも相手にするのはアンラッキーってとこだね。まぁ二人相手でも、負ける気は更々ないけどね。


 セラフィエルは僕達と同じ日本人が器になっている。ただ、僕にとっては、そんなことどうでもいい。精々運が悪かったね。としか思わない。

 まぁ、シオンくんなら少し感傷に浸るかもしれないし、最近仲間になったヒミカくんとリカくんは、元々仲間だったんだ。色々と思うことがあるかもしれない。……もし、余裕があれば、体だけでも回収してあげようかな?


 ただ、余裕があるとは思えないけど。何せメタトロンもいるからね。

 だけど、シオンくんより先にメタトロンと対峙出来るのは本当に幸運だ。

 これは確証もないただの予感だけど、メタトロンはテュポーンと関係があると思う。

 天使と魔族が繋がりがあるなんて、シオンくんに話しても信じてくれないだろうね。だけど、あのホムンクルスの技術。あれはエキドナを実験して手に入れた技術に違いない。

 多分シオンくんも召喚に関して聞きたいだろうけど、それより先にこっちが聞き取りできるからね。


 にしても……エキドナは心配してるかな?

 こちらとしては、エキドナの所が一番手薄だと聞いて少し安心したよ。エキドナは僕より強いから、負けることはないけど、それでも心配はしちゃうよね。


「トオル様。敵が見えてきました」


「よし、じゃあエンジェルとホムンクルスに関しては、ティアマトくんに任せよう。イチカくん達は、上陸してきた敵をどんどん罠に嵌めちゃって。遠慮する必要はないからね」


 僕はシオンくんと違って容赦はしないからね。精々僕の魔法の実験相手になってもらうよ。



 ――――


【デルタ島】


「うう……トオルは大丈夫じゃろうか?」


 聞くところによると、トオルの元には敵のトップが行くそうじゃ。トオルのことじゃから、負けるとは思わんが……やはり心配じゃのう。


「エキドナ様。トオル様を心配するお気持ちは分かりますが、少しはこちらのことも気にかけてください」


 確かにラミリアの言うことはもっともじゃ。……じゃがのぅ。


「しかしのぅラミリア。ここに来る敵は一番のハズレなんじゃろう? せめてもう少し張り合いがないと、やる気がでんぞ」


 どうやら妾はハズレを引いたらしい。

 トオルの所はトップが。ゼロとデューテの所にはトップの右腕と左腕が。

 そして妾の所には更にその下。しかも、雑魚の数も半分程度という話じゃ。

 やる気を出せと言う方が無理じゃろうて。

 それに妾はウリエルに一回会うておる。あの時はガブリエルに付き従っておっただけで少しも強そうではなかった。

 あの当時の妾でも勝てそうだったのに、この半年。天使との決戦に備えて、シオンから魔力が伸びる飲物を毎日貰った。その妾が負けるはずがなかろう。


「確かに他の島に比べるとワンランク落ちるそうですが、エキドナ様がそのように腑抜けておりますと士気にかかわりますよ」


「じゃったらラミリアよ。そなたが指揮を執ればよかろう」


 そもそも妾は端から指揮などするつもりもない。


「何を言っているんですか!!」


「いやいや。妾は真面目に言っておるぞ。そなたもシオンと旅をして、色々と学んだことも多かろう。妾にそなたの成長を見せとくれ」


 ラミリアは妾の親衛隊長の癖に、ずっとシオンと一緒におった。まぁ妾が進めたのじゃが……。魔力が増えておるのは分かるが、それ以外にどれ程成長したのか。少し楽しみじゃのう。


「……だからといって、サボるのはいけませんよ」


「サボったりはせぬわ! よいか。妾は此度の戦いをさっさと終わらせて、トオルの勇姿を拝むのじゃ!」


 サボって時間が掛かるのなら、そっちの方が勿体ないではないか。


「……ではご自分で指揮を執るのが一番ではありませんか?」


「何を言う。妾が最前列で戦い、撃ち漏らした者をそなた等が叩く。それが一番早く終わるのじゃ」


 まぁラミリアの成長を確認するために、少し多く撃ち漏らす予定じゃがの。


「……また最前列で戦うおつもりですか。エキドナ様はご自身が魔王だという自覚をお持ちですか?」


「無論じゃ。魔王だからこそ、率先して見本となる必要があるじゃろ?」


 部下というものは上司の背を見て育つもの。妾だってそのくらい知っておるぞ。


「……出来ればそのお考えは、戦い以外のことで発揮していただきたいのですが」


 戦いでは駄目なのか?


「まぁまぁそのような些細なことはどうでもよいではないか。それに、そなただって早く終わらせて、シオンの勇姿を見たかろう?」


「……今回シオンさんは戦わないんじゃないですか?」


「何を言うておる。シオンが出てこない訳なかろう。見ておれ。あやつは絶対に飛び出してくる」


 シオンがイプシロンで大人しく見学する玉か? そんなわけなかろう。


「……そうしたら後でお説教ですね」


 そう言うラミリアの顔はとても怒っておる顔には見えぬ。


「ラミリアよ。……そなた随分と嬉しそうな顔をしとるの」


 シオンを説教するのがそんなに楽しいのか? いや、そうではなく、シオンと一緒にいる口実が出来るのが嬉しいんじゃろう。


「ちょっ!? そんなことありませんよ!!」


「別に照れんでもよかろう。そなたがシオンを好いとることは皆が知っておるのだ」


「うう……ですが、恥ずかしいものは恥ずかしいのです。それに……私は勝てないですから」


 いかん。地雷を引いてしまったかのう。


「ルーナか。妾としてはまだ互角じゃと思うておるが……」


「いいえ。私には分かります。あの人は私を大事には思っておりますが、それは恋愛とは違います。最初から……出会った頃から分かっておりました」


 出会った頃は言い過ぎじゃろう。あの頃はまだスミレの方に傾いていたはずじゃ。

 ……あれはいつだっか。そうじゃ、確かナーガの件の時じゃったな。あの時は既にルーナで決まっておった気がする。じゃから妾はシオンに結婚するまではラミリアと仲良うしてくれと頼んだ。

 じゃが、シオンはいつまで経っても結婚せん。最近ではラミリアやティティの方が仲良う見える。そう、最近のシオンはティティが本命ではないかと思うくらいティティとは仲がよい気がする。

 ……妾はまだ可能性があると思うがの。


「シオンも二人を愛するくらいの甲斐性を見せれば良いものを」


 考えてみれば、シオンがルーナとラミリアの両方を嫁にすると言えばいいんじゃ。別にルーナもラミリアも互いを嫌いあっとる訳ではない。第一、王ともなれば複数の嫁を持つのが普通ではないか?


「あの人はそれを不義理だと思う人ですから……。私はあの人の仲間として、一緒にいることが出来ればいいんですよ」


「ふむぅ。不憫じゃのう」


 それではラミリアがあまりにも不憫じゃ。それならばいっそのこと新たな恋を探すのも……。


「それに……今は甲斐性なしでも、五十年か百年も立てば二人を愛するくらい出来るかもしれません。私はゆっくり待ちますよ」


「う、うむ。潔いのか、そうでないのか分からぬの」


 ラミリア……意外としたたかではないか。確かに長寿の者同士、未来は全く分からぬ。

 ラミリア自身千年以上生きておるのじゃから、百年くらい待つのもわけなかろう。


「それよりも、まずは一番楽な私達が早々に敵を倒して、他の島への援護としましょう」


「そうじゃの。妾達が勝つことで、天使の士気が落ちる。それすなわちトオルへの援護となる。よし! やる気が出てきたのじゃ!」



 ――――


【ガンマ島】


「デューテ。ここにはガブリエル――プラナが来るみたいだね」


 プラナと戦えるのは運かと思ってたけど、どうやら向こうが僕に気づいてくれたみたい。


「うん。僕達を騙してケインとクロムを殺した。僕は絶対にプラナを許さないよ! リューもプラナが相手だからって手心を加えちゃ駄目だよ!」


 リューは甘いからね。僕のように、敵対しても許すとか言うかもしれない。


「分かってるよ。僕だって色々と思うことはあるんだ。でも……まさかデューテと一緒にプラナと戦う日が来るとは思いもしなかったよ」


「僕だってそうさ。あの弱虫リューがこんなに頼もしくなるなんてね」


 いっつもケインの後ろを付いて回ってさ。本当頼りなかった。それが、安心して背中を任すことができる男になった。


「相変わらず酷いなぁ。でも、確かにあの頃は皆の後ろを付いていっただけで何の努力もしてこなかったと思う。シオンに出会ってそれがよく分かったよ」


 うん。リューはあの人に出会って本当に変わった。ううん、リューだけじゃない。僕だってあの人と出会って随分と変わったと思う。

 昔の僕なら、こんな面倒な戦いなんて恩も何も気にしないで、さっさとどこかに行ってた。


「まぁそのシオンは僕達を信用してないみたいだけどね」


 僕はジロリと追加メンバーを見る。リンとラピスラズリの二人。元々僕とリューとアイラの三人だったのに、ガブリエルが来ると分かったとたん、三人も追加が来た。


「別に信用してない訳じゃないっスよ。ですけど、ここが敵の数が一番多そうっスからね。万全にして待ち受けるのも大事っスよ」


 確かに……デルタ島に比べたら、ネームド天使やエンジェル達の人数が倍違うみたい。

 そう考えると三人じゃちょっと厳しいかも……。


「それは分かったけど……いい? プラナは僕が相手をするからね!」


「もちろんっスよ。というか私じゃガブリエルに勝てないっスからね。デューテ様の邪魔が入らないように、エンジェル達を狩るっスよ」


 だったらいいや。


「俺達はネームド天使を何体か貰うぞ。ここで活躍して、虹のメンバーに加えてもらわねばならんのでな」


「ガブリエルにさえ手出しをしないんだったら、好きにしていいよ」


 ラピスラズリ……黄の国の闇ギルドにまで名を轟かせていた暗殺者。

 初めて見たときは目を疑っちゃったよ。だってイメージと全然違ったんだもん。

 この二人もシオンと出会って変わった口のようだけど……本当、あの人は色んな人に影響を与えるんだね。


「あの……ひとつだけ相談があるのですが、宜しいですか?」


「うん? なんだい?」


 妹ちゃんの方は人見知りなのか、あまり喋ったことはない。アイラとだけは仲がいいみたいだけどね。それと、最近シオンのように肩にスライムを連れている。


「私達の魔法は主に水と氷なのですが、雪を降らせることも出来ます。もちろん吹雪のようにすることも可能です」


「だから?」


「吹雪と雷。合わせると、面白いことになると思いませんか?」


 普通、雷と合わせるなら雨だよね。吹雪の中で雷の威力はどうなるのかな?


「いいね。楽しそうだ」


 威力が低くなることはないと思う。どんな相乗効果を得られるか……。もしかしたら全滅しちゃうかも!?


「デューテさんが話の分かる人で良かったですわ。では敵が来る前に、少しだけリハーサルをしませんか?」


「そうだね。奥に実験場があるから試してみよう。あっ、リューはここでお留守番ね。敵が来たらすぐに知らせること。いいね?」


「えっ? 僕は付いていっちゃ駄目なの?」


「だってリューは関係ないじゃん」


「デュー。私は付いていく」


「うん。じゃあアイラはおいでよ」

「そうですわ! アイラちゃんも一緒に行きますわよ!」


 ……なんか妹ちゃん。急にキャラが変わらなかった? さっきまでそんな話し方だっけ?


「アイラだって関係ないじゃないか……」


「アイラはいいの!」


 だってアイラは可愛いもんね。普段は無口だけど、ちゃんと自分の意思をしっかり持ってる。それにあまり表情には出さないけど好奇心旺盛で、何にでも首を突っ込みたがる。危なっかしくて思わず守ってあげたくなるんだ。

 それに僕のことをデューって呼んで慕ってくれるし……もちろんその呼び方はアイラしか許さないけどね。


「リュー。私だって二人の役に立つ」


「いや、アイラは赤だから、吹雪とは真逆だよね? それこそ打ち消されちゃうよ」


「……そんなことない。リューは頭が固いから、分からないだけ」

「そうですわ! アイラちゃんはきっと役に立ちますわよ!」

「アイラ。リューなんかほっといてさ。さっさと行こうよ」


 正直リューの言う通り、アイラがどうするつもりかさっぱり分からない。けど、いいよね?


 僕達は、リンとリューだけ残して最後の調整を行うことにした。

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