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ロストカラーズ  作者: あすか
第七章 天魔戦争
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第269話 ジョーカーズと修行しよう

 俺は持ってきていた布袋から銀のボールを取り出す。ボーリングの球くらいの大きさと重さがある。

 袋の中にはそれが十個……正直メチャクチャ重かった。


「今からお前達にはこのボールを使って修行してもらう」


「それを使って? ……一体何をされるので?」


「使い方の前に……お前らってさ。ヴァンパイアだから、やっぱり聖なる魔法に弱かったりするの?」


 前の魔王のヘンリーは銀や聖属性が弱点だった。ゼロは……あまりルーナに苦手意識を持っていなさそうだけど、やはり苦手だと思う。


「そうですね。我々はアンデッドではありませんが、それでも聖なる魔法は苦手ですね。色なら白や……シオン様の奥さまの銀。特に銀は相性が最悪ですね」


「お、奥さまじゃねーし!?」


 ハーレクインは何を勘違いしているんだ?


「そうなのですか? では【魔王のヒモ】は……」


「ちっがーう!! ちゃんと働いてるだろうが!! ってか、なんでお前らがそんなこと知ってるんだよ!!」


 あれは人間の国の噂だろ? 魔族側に浸透しているわけがない。


「私達はフォーチュンからシオン様の情報を伺いましたが……」


 俺はフォーチュンを見る。


「私は占いで旅をしていましたから……人間の国にもよく出入りしていたのですよ」


 人間の国を旅する占い師の魔王クラスのヴァンパイア……この事実が知れ渡ったら、人間の国は大混乱だろうな。というか、旅の占い師がその噂を知っているくらいに浸透している二つ名なのかよ。


「いいか、【魔王のヒモ】は完全なるデマだ。俺は働いてるし、ルーナと結婚もしていない。今後絶対に使うんじゃない」


「わ、分かりました」


 俺の剣幕に、全員が怯む。うん、これくらい睨みを効かせれば、金輪際言うことはないだろう。こうやって、少しずつ噂を沈めていくしかないな。


「話を戻すぞ。とにかく、お前達が聖属性が苦手なのは分かった。ってことは、天使との相性は最悪なわけだ」


 天使は殆どが白や聖属性。片やこっちはジョーカーズは全員が黒属性。こっちの方が強いかもしれないが、弱点なのが怖い所だ。


「ですが、天使どもも、我らの属性は苦手なはず。こちらだけが不利ということではありません」


 確かに天使も黒属性は弱点になるだろうけど……。


「うん。でもさ、天使相手にノーガードの戦いは好ましくない。なにせ、今回の戦争で、俺達は誰一人死ぬことは許されないのだから」


 いくら天使が全軍で攻めてこようとも、こちらは犠牲者ゼロ。今回の戦争は完全勝利が最低条件なんだ。


「だから、お前達には聖属性に耐性を付けてもらう」


「耐性と言っても……体質的なものですので、こればっかりはどうにも……」


「別に完全に克服しろとまでは言わないさ。ただ、少しでも耐性を付けて、相手からの威力を抑えれるようになろうって話だ」


 完全には無理でも、受けるダメージが少しでも少なくなればいいんだ。


「そこでこれだ」


 先程取り出した銀色のボール。これが弱点克服の為の秘策だ。


「今回の修行用にルーナにお願いして、昨日作ってもらった。本当は道化師達用に用意したけど……また後でルーナにお願いするから、今回は一人一つずつ使え」


 道化師五人分が両手に……って考えて、十個準備していたから、とりあえず一人一個にすれば、ジョーカーズ分はある。


「使えって……どうするんです?」


「ほらっ」


 答える代わりに、俺はボールを投げた。

 ハーレクインがそれを手で受け取り……。


「ぎゃああああああ!!」


 ハーレクインは女性が出しちゃ駄目な悲鳴を上げながら、ボールを地面に落とす。


「おいおい。ちゃんと受け取ってくれよ」


「無理ですよ!! 見てくださいよこれ。少し触っただけなのに……」


 ハーレクインの両手は皮膚が焼き剥がれ、白い煙が立っていた。


「うわぁ痛そう」


 俺と一緒に他のジョーカーズの面々も顔をしかめる。


「痛そう……じゃありませんよ! もう少し触っていたら、手が消滅するところでしたよ! ……一体なんなのですかこれは?」


「見て分かるだろ? 普通のボールだ。ただし、銀属性のルーナが、召喚したボールだけど」


 要するに普通の人にとってはただのボールでも、ジョーカーズにとっては、存在自体が弱点の危険なボールだ。


「……手だから火傷ですみましたけど、体で受け止めてたら、死んでたかもしれませんよ」


「はっはっは。大袈裟だなぁ」


 攻撃魔法じゃないから多分死ぬことはないはず……だよね?


「大袈裟じゃありません! 全くなんてことしてくれるんですか!」


「まぁまぁ。とにかくこれが修行だ。まずは、これを持ったまま平気な状態になること。一番の厄介な銀属性。しかも、天使よりも強い【銀乙女】特製だ。これが平気になれば、天使からの攻撃なんて、余裕だろ?」


「確かにそうですが……触れもしないものをどうやって……」


「……お前らは魔力でガードするってことを知らんのか?」


 まさかどうやってって聞かれるとは思わなかった。……もしかしてコイツ等、魔力のコントロールとか知らないんじゃ……。


「おい、お前ら普段どうやって戦ってるんだ?」


「どうやって……ですか? 普通に魔法を唱えて攻撃したり、ヴァンパイアの特性を生かして霧になったり、コウモリに化けたり……ということでしょうか?」


 ハーレクインの言葉にマジシャンとフォーチュンが頷く。


「わたくしはこの鎌でサクッと首を狩るのが……」

「俺は薬で動けなくした後に、解剖するのが……」


 だからリーパーとドクターは怖いんだって!! コイツ等には常識から叩き込む必要がありそうだ。そして、ハーミットは……うん、分からないから放置しておこう。


「ちなみに相手の攻撃を防ぐ場合は?」


「それこそ霧になるので、避ける必要がありません」

「危険そうな攻撃なら防御魔法を唱えてますね」

「敵の攻撃なぞ、この鎌で撃ち落とせば……」

「そもそも敵が動かぬから攻撃を受ける要素がない」


 うん、コイツ等脳筋だ。元々の魔力の高さとヴァンパイアとしての特性が優秀だから、今まで苦労したことがなかったんだろう。魔力の基礎を怠けた結果、魔力によるバフデバフはもちろんのこと、魔力のコントロール自体がガバガバだ。

 これは……もしかしたら、想像以上に苦労しそうな気がする。


「いいか、俺の手をよく見て見ろ。魔力で覆っているだろ? 俺も銀属性が弱点だから、このボールを素手で持つとダメージを食らうんだ。だけど、こうやって魔力を手に集めて、弱点を補っているんだ」


 俺の紫属性も、白や銀は弱点だ。多分俺が使っている魔法が毒魔法だからだろう。浄化や回復がイメージの聖属性とは対極になっているんだろうな。


「ほら、同じように手に魔力を集めて持ってみろ。魔力でレジストするんだ」


 ハーレクインは言われたように、魔力を手に集め、恐る恐るボールを手に持つ。基礎はガバガバでも、多少の魔力のコントロールは出来るみたいだな。


「……確かに、魔力でガードすれば、持ち上げることは出来ますね」


 それを見て、俺は袋から人数分のボールを置いていく。投げたら全員落としかねないもんな。


「よし、じゃあ全員持ち上げて見ろ……ハーミットはどうする?」


 テントの中に入れるのか? でも上手くコントロールが出来なかったら、テントの中で死んでしまわないかな?

 俺が悩んでいると、三角錐だったテントの頂点がボコっと凹む。まるで台座のような……ここに置けと?


「いいのか? 置くぞ?」


 もちろん返事がないけど……嫌がっている様子はないし、問題ないだろう。俺がテントの凹んでいる部分にボールを置くと……ボールがテントに当たらず、数ミリ浮いている。どうやら凹んでいる部分に魔力を集めているみたいだ。……意外と器用だな。


 どうやら俺がハーミットに構っている内に、全員がボールと持つことに成功したみたいだ。


「全員大丈夫みたいだな。いいか? 弱点だから、ボールに込められた魔力よりも下回ると、ダメージを受けるから気をつけろよ。それから怖がって魔力を集めすぎると、すぐに魔力が切れちゃうから上手くコントロールして、ギリギリの魔力で持つようにするんだ」


 基本的に攻撃と防御だと、防御側の方が有利だ。例えば攻撃魔法と防御魔法の盾。もし攻撃魔法で盾を壊そうとしたら、防御魔法の三倍の魔力が必要だ。だけど、それが弱点だったら、等倍で壊せる。

 仮に今手に持っているのが銀じゃなく、同じ魔力量の火の玉だったら、半分以下の魔力で十分にガードできる。弱点だからこそ、常にボールに込められた魔力と同じ量を維持しないといけないのだ。


「まずは適正な魔力コントロールに慣れること。持つだけじゃなくお手玉みたいに、一旦離して持ったりしてみろ。それが出来たら、次は手以外の場所でも試すこと。体中何処に当たってもダメージを受けないようにな。それから、対になってキャッチボールをしてみろ。落としたら罰ゲームな。とりあえず今日はそこまででいい」


 本来一時間でやろうとしたことを、一日かけてやることになるとは……先が思いやられるな。

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