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ロストカラーズ  作者: あすか
第二章 魔王城防衛
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第29話 解放しよう

 偵察隊との戦闘から三日後、魔法結晶へ魔力の補充を終えたグリンと残った兵士(サイラッドと言うらしい)の二人を解放することにした。


 ちなみにランディーはすでに死んでいる。これは二人に対する見せしめも兼ねていた。


 ランディーは俺の魔法、【毒の契約】を受けて、約束が守れずに死亡した。契約内容は『俺に逆らうな』と『この城での出来事を話すな』だ。ちなみにランディーは残りの二人が解放されることを知らない。


 俺はランディーに【毒の契約】を使った後、三人一緒に食事をさせた場所で、すぐに俺達への悪態や愚痴をしゃべり始めたらしい。当然すぐに苦しみ始め死亡した。本当に馬鹿だとしか言いようがない。

 だが、その光景を目撃した二人は絶対に約束を破ることはないだろう。


「じゃあ契約をした後にお前達を解放する。戦闘があった地点までは送るので、その後は自由にするといい。ただし、契約通り余計なことは話さないこと。話すとランディーのようになるからな。ちなみに呪いを解呪しようした場合、解呪よりも先に呪いが発動して、さらに周囲にも影響のある毒をまき散らすから気をつけることだ」


 そう言ってから二人に【毒の契約】をかける。

 契約内容はランディーと同じ、『俺達に逆らわない』『この城のことを話さない』だ。だけど先日の話であったように『全滅した経緯と俺の魔力値のみ。属性は絶対に話さない』が追加されている。


 それから今説明したように、無理に【毒の契約】を解呪しようとするとその瞬間呪いが発動し、死に至る。そしてその毒は体外に出て空気感染をする。まぁ体外に出ると数秒で死滅するから同じ部屋にでもいない限りは感染しない。


 二人には全部説明してあるし、話せない理由、話したらどうなるかは説明できるようにしている。日常生活には問題ない。自分の魔法も使える。

 もし、これで発動したらもうそれはそいつの責任だ。こっちは知らない。


「さて、準備は大丈夫か?そろそろ行くぞ」


 俺はトオルに頼むと伝えた。


 トオルは魔力を練り上げ、発動させると一瞬後には三日前の戦った場所、城のすぐ近くの広場だった。

 三日前よりも転移の感覚が小さくなっている。たった三日で転移の精度が上がったようだ。

 一瞬だけ体が溶かされるような感覚が襲ってくる。やはりシエラの転移と感覚が違うな。すぐに感覚が戻る気がついたらそこはすでに三日前の戦場だった。三日前に転移したときのような不快感は特にない。


「な、ここはっ!? まさかもう着いたのか」

「バカな! まだ城から外にも出てなかったぞ!」

「でも見てみろよあそこ……城が見えるぞ」


 二人は初めての転移魔法に驚いている。前回は気絶していたから初めての転移だろうから無理もない。


「あれ? 転移魔法で送るって言わなかったっけ?」


「いや……送ってくれるとは言ったが、転移魔法でとは聞いていない。と言うか転移魔法が使えるってことはこいつが魔王だったのか!?」


 驚いた表情でトオルを見ている二人。いや、トオルは男だ。


「残念ながら僕は魔王じゃないよ。まぁ転移魔法は魔王だけが使えるわけじゃないってね。あっこれも禁則に入るから絶対にしゃべらないでね」


 トオルは二人に念を押す。


「それにしても、本当に解放されるとは……」


「何? 俺が約束破ると思ってたのか? 心外だな。……まぁいいや、はいこれ。数日分の食料。保存食だから美味しくはないかもしれないが、あまり量はないから計画的に食べろよ」


 そう言って二人に食料の入ったバックを渡す。

 中に入っているのは地球産の保存食品だ。フリーズドライのスープやリゾット、それからカップ麺、乾パンと缶詰だ。飲み物でペットボトルの水だ。こっちではもう手に入らない貴重品ではあるが、買ってから半年以上経つので、カップ麺など一部賞味期限が怪しいやつもある。それにラーメンはもう自分達で作れるから必要ない。要は勿体ないから在庫処理だ。


「こっちは中に入っている食材を器に入れてお湯を入れて三分待つと食べられる。こっちのはここに丸い穴があるだろうここに手を入れて引っ張ると開くから」


 カップ麺や缶詰の食べ方を説明した。流石に食べ方が分からずお湯を入れずに食べてほしくはない。せっかくなら美味しく食べてほしいもんな。


 二人はそれを受け取ると、


「一つ聞いてもいいか? お前たちはいつもあんなに美味しい物を三食も食べているのか?」


 ……そういえばこいつらがこの三日間何を食べていたのか知らないな? 俺たちと同じものか?


「この人達、色々と食べてたよ。主に開発中のものを……」


 トオルは何回か話を聞きに行ってたから、食べていたものを知っていたようだ。


 どうやら彼らは料理の試作品を食べていたようだ。

 ってことはカレーや天ぷらかな。カレーは市販のルゥがないので最初から手作りである。色んな香辛料の組み合わせを試しているようで毎回味が違う。

 香辛料は俺達が来てから栽培もしているし、フィーアスにも採取できる香辛料はたくさんあった。

 香辛料の良さに気がついたドリュアスやオレイアスが採取を手伝ってくれて村ではちょっとした香辛料ブームになっている。


 それにしても試作品を捕虜の食事に使うとはよく考えたものだ。試作品には普段から古くなってきた野菜などを使っているので在庫処分としても丁度よかったのだろう。考えたのは絶対にアレーナだな。


「まぁ確かにカレーは美味いからな。米があったらもっと良いだろうけど」


 半年前に植えたが最近ようやく稲刈りが済んだところだ。秋に田植えをして春に稲刈りもおかしな話だが、大地の精霊であるノーム、太陽の魔法が使えるヒカリ、そして島を覆っている結界がある限り、季節は関係ない。

 このあと脱穀や精米があるため、食べられるのはもう少し先だ。ここにはコンバインのような便利な道具がないため時間がかかってる。せめて千歯扱きくらいは作らないと今後が大変だな。

 と、そういった事情もあり、カレーにはナンのようなパンを作って食べている。まぁそれでも十分に美味しいことに変わりはない。


「結構美味しかっただろう、でもお前達が食べたのは試作品みたいだから、多分この城にいるやつらなら普段からもっと美味しいもの食べてるぞ。それにたった三日だろ? 食べた料理の種類も少ないはずだ。ここではほとんど毎日違う食事だからな」


 朝食はほとんど変わらないし、昼食は麺類か総菜パンとスープが多いが、夕食はその日研究した食事が多い。定期的に出るカレー以外は一ヶ月で同じ主食料理は出てこないんじゃないか? 天ぷらなどは月に何度かあるが食材は毎回違う。

 あと、この世界は元々朝食はなくて、少し早めの昼食と夕食の一日二食が基本だった。だからこの城では俺たちが無理矢理三食にさせた。


「そんな……見たことない野菜に、料理、俺たちはあんなに美味しいものは食べたことがないと思っていたのに、それよりも美味しいものだと!?」


 やはり赤の国の兵士達でもあまり美味しいものは食べれないようだ。


「さて、ここから先は大丈夫だよな? 別に行きと違い隠れる必要がないからこの街道を使えばいい。まっすぐ行けば確か大きな道に繋がるんだろう?」


 まだ驚いている二人を現実に戻すため話を進める。俺は日頃は誰も使ってない、見栄のためにある街道を指さす。


「あ、ああ。その通りだ」


 現実に引き戻されたグリンが慌ててうなずく。


「ならもう行け。二度と会わないと思うが、もし次ぎ会ったら待っているのは死だけだと思うんだな。じゃあな」


 そう言って俺達は二人をおいて転移する。


 転移したのは城ではなくすぐそこの森の中。

 俺たちは小型のドローンを飛ばし、男達の様子をうかがう。


 男達はその場で少し話していたみたいだが、やがて国の方へ歩き出す。


「どうやら何事もなく帰り始めたみたいだな。どうする? もう少し様子見るか?」


 俺はトオルに尋ねた。ここで様子を見ようと言ったのはトオルだったからだ。


「もう少し様子を見ようよ。大きな街道に出るまでは…魔王軍の介入が怖いからね」


 解放した二人をヘンリーが何かする可能性があるかもしれない。そう思って確認をしている。

 まぁもし本当に介入する気があるならここの領地外だろうからあまり関係はないかもしれないが。


 案の定何事もなく二人は領地の入り口、森からでた分岐路までたどり着くことができたようだ。

 これより先は結界の外になるため追跡できない。

 俺達はドローンを回収して城へ帰ることにした。

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