表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストカラーズ  作者: あすか
幕間
361/468

日常編 ハンナのお泊まり

今回でハンナの話も終わりですので、更新ペースを数日に一回ペースに戻します。

「おい! 流石にあの水着はマズいだろ!!」


 温泉から出たあと、俺はティティに文句を言いに行った。


「えっ!? ラミリア様……本当にあれを着て、温泉に入ったんですか?」


「……どういうことだ?」


「いや……あれくらい無茶な水着だったら、諦めてくれるかな? と思って」


 諦めさせるつもりであの水着だったんだ。


「ってことは、シオン様は、あのあぶない水着を着たラミリア様を見たんですね? どうでした? やっぱりヤバかったですか?」


「ヤバいとかヤバくないとかのレベルを遥かに越えていた。それ以上は俺の口からは言えない。少なくとも、俺は危険を感じて、逃げることしか出来なかった」


「……なるほど、シオンさんの理性が無くなる危険性ですね」


「そこはハッキリ言わんでもよろしい」


 魔法で常に平常心になるようにしていても、あれは危なかった。


「とにかく、約束だから温泉のことはルーナに報告してもいいけど、水着に関しては、そっちの落ち度だからな。下手なことを言わずに、普通の水着っぽく、報告するんだぞ」


 あんな水着でした。何て報告されたら、それだけで正座の時間が半日増えてしまう。


「……男らしいのか、男らしくないのか、微妙なところですね」


 仕方ないだろ。それくらいあの水着はマズかった。


「んで? このあとはどうするおつもりで?」


「今日はこのまま泊まって、明日ハンプールに帰す予定だ」


「泊まる場所は? もしかして、シオン様の部屋で三人でってことはないですよね?」


 三人で川の字になって寝る。……それも男として経験したい夢の一つである。

 ……しかし、旅行先ならともかく、城では無理だ。


「今回はラミリアの部屋に寝かせることにするよ」


「……随分と悩みましたね」


 そりゃあね。



 ――――


「えええ!? シオンお兄ちゃんと一緒に寝れないの?」


 湯上がりで火照ったハンナは一気に落ち込む。しかし、ここは、心を鬼にするしかない。


「あ、ああ。だから、ラミリアと一緒に寝てくれ」


「そっか……」


 うう……心が痛い。


「別に一緒に寝るくらいいいじゃありませんか」


「えっ? ラミリア?」


 いやいや、何でラミリアがそれを言うの? ラミリアだって困るでしょ!


(おいおい、なに考えてるんだ?)

(……もうさっき以上に恥ずかしいことは起こらないなら、何でもいいです)


 あっ、これさっきので自棄になったパターンだ。


(それに、シオンさんと一緒に寝るのなんて、旅の間はよくあったことです。今さら恥ずかしがりません)


 いや、確かに旅の間は……って、殆どキャンピングカーで、別々だったし。迷いの森の時くらいか?


(それに、さっきの状態ですら逃げ出すヘタレなのですから、手を出されるおそれもありません)


 これはディスられてるんだよな? でもさ、手は出せないよ。


(なら、どうせ怒られる時間が増えるだけです。それなら、最後までハンナを喜ばせてあげましょう)


 怒られる時間が増えるのは俺だけどな! ……結局俺は説得に負けて、三人同じ部屋で寝ることにした。



 ――――


 ティティに三人で寝ることを伝えると、『やっぱり……』と言いやがった。全く信用されてなかったらしい。

 まぁ実際にこうなったから、文句は言えないが……。

 とりあえず、俺のベッドで三人が寝るわけにはいかないから、三人分の布団を準備してもらった。


 あまり利用はしてないが、城を改装してから、俺の部屋は二つある。いつもの部屋と和室の二部屋。たまに落ち着きたいときは、畳の上に横になると、なんとなく心が安らぐ。いつもの部屋の隣だが、今回はここに泊まってもらうことにした。


「ここがシオンお兄ちゃんの部屋なの? 何もないし、変な部屋だね」


 あるのはちゃぶ台と座布団だけ。いや、一応お茶と茶菓子はある。


「ははっ、確かにハンナには変に見えるかもしれないな。ここはな、和室って言うんだ」


「和室?」


「ああ、他の部屋と床が違うだろ? 畳って言うんだけど、この上では靴やスリッパを脱がないといけないんだ」


「へぇー。何かいい香りがするね」


「畳には、い草って植物が使われてるんだけど、落ち着くだろ。さっ、入ってくれ。お茶でも淹れよう」


 俺は二人にを招き入れると、お茶を淹れる。ルーナなら、ちゃんと点てるんだろうが、俺には無理だから、普通にお茶っ葉を使う。


 ハンナは珍しいようで、部屋をウロウロする。襖を開けないのは、流石に教育が行き届いていると言えよう。まぁ開けても何もないけどね。


「さっ、お茶が入ったから、ハンナも座って飲もう。ここにあるお菓子も好きに食べていいぞ」


 ルーナこだわりにより、和菓子の種類だけは豊富にある。


 温泉に入り、三人でまったりと、和室でお茶を飲む。自分の部屋ではあるが……うん。これはこれで旅行気分になるな。



 ――――


 しばらくの間、お茶を飲みながら談笑していると、ドアのノックが聞こえる。

 ティティが布団を持ってきてくれたのかな?


「ちょっと待ってろ」


 俺は二人に断りを入れ、扉へ向かう。そして扉を開け……急いで閉めた。


「る、る、る……ルーナさん。どうされましたか?」


 ヤバいヤバいヤバい。何でルーナがここに!?

 って、考えたら俺の部屋に来る可能性は十分にあった。そして、隣のいつもの部屋に居ないのなら、隣の和室も調べてもおかしくはない。


「シオン様。扉を開けてくださいませんか?」


 怖い怖い怖い。開けたくない。

 だけど……もう居留守は使えないんだから、このままでは、無理やり入ってきてしまう。

 ここは腹をくくって、扉を開けるしかない。そして、ハンナに見つからないように、外で土下座してこの場は抑えてもらおう。


 俺はもう一度扉を開く。ルーナは何も言わずに黙って立っている。それが逆に怖い。


「あ、あのルーナさん? その……どういったご用件でしょうか?」


「用がなければ訪れてはなりませんか?」


「いえ! 決してそんなわけでは……」


 ヤバい。もう今すぐ土下座しよう、そうしよう。


「…………はぁ。別に怒ったりはしませんから、そんなに怯えないでくださいまし。そんなに怖がられると、こちらの方が落ち込んでしまいますわ」


「へっ? 怒らないの?」


 多分この時の俺はひどく間抜けな顔になっていただろう。ルーナがため息を吐く。


「そんなに怒って欲しいのですか?」


「いやいや、そんなことはない。けど……」


 怒られないのは、それはそれで不安が残る。


「それとも、怒られるような……疚しいことをしているのですか?」


 疚しくはない。だが……。


「ほら、ウサギの着ぐるみで放置した件とか……」


「……確かにあれはカチンときましたね」


 やっぱり怒ってるじゃん! というか、三人で仲良く歩いているだけで、嫉妬して追いかけてくるんだぞ。一緒に温泉に入って、寝るって言ったら、疚しいことがなくても、怒られると考えるだろ!


「実は……ティティに少し怒られてしまいましてね」


「はっ? ティティに?」


 怒られるって、ティティがルーナを怒ったの? なんで?


「『ルーナ様はシオン様を信用してないんですか?』……と」


 ん? 意味が分からない。


 ルーナの話によると、ティティはさらにこう言ったらしい。


『ルーナ様はシオン様がハンナちゃんに手を出すと思ってるんですか? それともハンナちゃんが見ている前でラミリア様に手を出すと?』

『シオン様はハンナちゃんの願いを叶えようとしているだけですよね? それを邪魔するのは、メイド長として正しい行動ですか?』

『そもそもシオン様の恋人ですらないルーナ様に、シオン様を止める権利はあるのですか?』

『シオン様は別に相手を無理やり手込めにしているわけではありません。むしろ、誠実に接しております。であれば、そっとしておくべきです』

『今のルーナ様の行いは、ただの嫉妬です』


 ……ティティ。随分とおっとこまえやな。

 これはあれか? 水着の落とし前か? もしくはさっきの俺の本当の気持ちを聞いて……。

 しかし、ルーナを怒るなんて……。やはり、しっかりとしたいい女だ。もっと早くティティの本性を知ってたら、下手したら、惚れてたかもしれん。


「わたくしもシオン様が、ハンナ様を本当の妹のように大事に思っていることは存じております。そして、出来る限りの願いを叶えるおつもりなのも分かっております。それ自体は悪いこととは思っておりません」


「ああ……」


 俺もそこを否定する必要はない。


「わたくしは、確かにシオン様が他の女性――ラミリア様と一緒におられるシオン様を見て、嫉妬していただけでした」


 ルーナの奴。随分と凹んでいるな。それだけティティに怒られたことがショック……いや、怒られた内容がショックだったんだろうな。メイド長に相応しい行動……か。一番ルーナに聞きそうな言葉だ。

 でもさ。自分が慕っている男が他の女性といたら、そりゃあ嫉妬するよ。……って、考えたら、俺は最低なやつだな。


「ですから、ここへは怒りに来たわけでなく、三人分の布団をお持ちしただけです」


 よく見たら、隣にカートがある。ルーナに緊張していて全く気がつかなかった。


「ルーナが持ってきてくれたのか?」


「わたくしはもう何も言いません。シオン様がやりたいように、なさってください。わたくしは信じておりますから……」


「ルーナ……ありがとう」


「ですが!! シオン様も疚しいことがないのでしたら、もっと堂々とハッキリされてくださいまし!」


「はい! すいませんっした!」


 俺は最敬礼で謝る。ようやくいつものルーナらしさが見れた。


「それからティティが、『シオン様は一緒に温泉に入っても、手を出すどころか、ひよって逃げ出すくらいのヘタレだから、絶対に手は出さないから安心して』とも言っておりました」


 アイツ……見直して損した。やっぱりティティに惚れるとかはないな。


「……他に何か言ってたか?」


「……『正妻の座を奪うなら、嫉妬ばかりじゃなく、懐の深いところを見せないと駄目だよ』と」


 ……ルーナが大人しくなった最大の原因がこれだな。……本当にティティは皆のことをよく理解しているよ。



 ――――


「ルーナさん、どうしたんですか? いつもの覇気がありませんでしたが……」


 この状況で、ルーナが何も言わずに布団だけ敷いて出ていったのが、予想外過ぎたんだろう。……けど、覇気て。もう少し言い方があるだろう。


「まぁルーナにも色々あったってことだ。さっ、ハンナ。今日は疲れただろう」


「うん! あのね、ハン――私、真ん中がいい!」


 ハンナは慌てて私と言い直す。癖なんだから、ゆっくり直せばいいさ。


「もちろんハンナは真ん中だぞ」


 川の字何だから、ハンナは真ん中で決定だ。そして、俺はハンナの左側、ラミリアは右側だ。


「えへへ……手繋いでいい?」


「随分と甘えん坊さんだな。お姉さんがそれでいいのか?」


「今日だけ! ねっ、いいでしょ?」


「もちろんいいさ。でも、手を繋いでたら、眠れなくならないか?」


「そんなことないもん!」


「そう? ならいいさ」


 俺はハンナと手を繋ぐ。反対は既にラミリアが握っていた。……いや、本当に寝れるのか?


「シオンお兄ちゃん。何かお話を聞かせて?」


 お話か。……日本の昔話でもすればいいのかな? ……いや。


「そうだな。昔々の話。男の子は一人の女の子に恋をしたんだ。女の子もすぐに男の子のことが好きになった。でも……ある時、女の子がいなくなっちゃったんだ」


「どうして女の子はいなくなったの?」


「うん、男の子にも分からなかったんだ。だから、男の子は女の子を探す旅に出たんだ」


 かなり脚色をしたが、俺は自分がここに来てからの体験談を聞かせることにした。



 ――――


「……そして、機転により、見事に悪の魔法使いの手先を追い返した男の子は……って、寝ちゃったか」


 気がつくと、ハンナは静かな寝息をたてていた。……本当に手を繋いだまま寝てるし。

 ってか、これ、手を離せないよな。……まぁいいか。


「シオンさん。続きは聞かせてくれないんですか?」


 ハンナが起きないように、小声でラミリアが話す。


「続きって……後のことはラミリアも知ってるだろ」


 偽ヘンリーの話までしたんなら、次はエキドナの登場だ。ラミリアだって登場する。


「いいじゃないですか。聞きたいんですよ」


 ……まぁいいか。俺はラミリアに続きを話すことにした。



 ――――


「あーあ。シオンお兄ちゃんのお話、最後まで聞きたかったな」


 ……朝になると、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。何であんな話をしたんだ? やっぱり夜のテンションで話しても、ろくなことにならないな。


「ねぇ、また今度続きを聞かせてくれる?」


「……機会があったら」


 願わくば、その機会が訪れないことを……って、そうなるともうハンナと一緒に寝られないのか? それは少し寂しいな。……忘れていることを願おう。


「心配しなくても、私が最後まで聞いてますから、今度は私が続きを聞かせてあげますよ」


 あっ、ラミリアめ。だから続きを聞きたかったんだな。


「本当? 悪の魔法使いをやっつけて、女の子と再会できた?」


 悪の魔法使いて。今思うと、何であんな設定に……。あー! 本当に恥ずかしい。


「今話してしまうと、お話の楽しみがなくなってしまうでしょ。だからその時まで楽しみに待っててください」


「うー。早くお話を聞かせてね! 私、十日に一回、お休みがあるからね!」


 ラスティンとノーマン……十日に一回しか休みを与えないとか、どんなブラックだよ! ちゃんと週休二日……って、週の概念がないから、せめて五日に一日は休みにしないと。

 って、しかもハンナは孤児院のお手伝いもあるし、弟や妹達の面倒もみなくちゃいけないんだろ? 大変すぎないか?


「ハンナ。そんなに沢山働いて大変じゃないか? もう少し、お休みを増やした方がいいんじゃないか?」


「ううん。平気! だって、私よりもデントおじちゃんの所にいる子の方が大変そうだもん」


 ハンナよりも年上の子はオッチャンの店で働いている。そのため、今回も参加できてなかったのだが……。


「オッチャンの店。そんなに繁盛しているのか?」


 最近全く顔出してないからな。まぁあの味で繁盛しないわけないか。


「うん! 大人気だよ。でも、それだけじゃなくて、今モニカおばさんがいないから、余計に大変なの」


 モニカはお姉さんじゃなくて、おばさんなのか……って!


「モニカがいない? 何で?」


 何? モニカとオッチャン、喧嘩でもした? で、モニカが実家に帰らせて……って、ウチには帰ってきてないぞ。


「あのね。今モニカおばさん、体調崩しちゃってるから、デントおじちゃんが安静にしてなって」


 はぁ? モニカが体調を崩した? 忙しさで疲れたのか? いや、でも俺達に言えば、エリクサーでもポーションでも……人手だって貸せるのに。……なにやってるんだよオッチャン。


 俺はモヤモヤした気持ちのまま、ハンナを孤児院へと送った。

ここまでお読みいただきまして誠にありがとうございます。

ハンナ編。想像以上に長くなってしまい申し訳ありません。

実はハンナの話は長くても二話の予定でした。遊園地や温泉など全てカットして……。ですが、興が乗ってしまって、気がつけばこんなことに。

日常編は折り返しに入りましたので、引き続きお読みいただければと思います。


ブクマと評価。本当に有難うございます。励みにさせていただいてます。

あと、誤字報告も本当にありがとうございます。非常に助かっております。

出来るだけ誤字は無くしたいと気をつけているつもりですが、どうしてもスマホの予測変換ミスなどが……。ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。

今後も誤字報告や感想など頂けますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ