表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストカラーズ  作者: あすか
幕間
358/468

日常編 ハンナと遊園地③

「あっ!! じょーしゅさまー!!」


「おっ、ラーワじゃないか。どうだ? 楽しんでるか?」


「うん、すっごく楽しい!」


「そうかそうか。それは良かった」


 俺はラーワの頭を撫でてやる。


「わーい! じょーしゅさま、ありがとー」


「そういえば他の子達は?」


 辺りを見渡しても、ラーワしか見当たらない。


「あっちでエイミーおねえちゃん達と、ご飯を食べてる。私はじょーしゅさまの匂いがしたから飛んできちゃった」


 匂い……そんなに匂うのかな? いや、ラーワはスプライトだ。微かな匂いにも敏感なのだろう。


「ラーワちゃん! 突然飛び出して……って、シオンさんでしたか」


 ラーワを追いかけて、エイミーがやって来る。


「うん! じょーしゅさまの匂いがしたから飛んできちゃった」


(にお)い……」


 エイミーがちょっと後ずさる。


「あっ、お前、今(くさ)いと思ったな。違うからな。ラーワが特別なだけだからな」


「あっ、そうだ。ラーワちゃん。いきなり飛んでっちゃうから、皆が心配してたよ。何か嫌われるようなことしちゃったかな? って、落ち込んでる人もいたから、早く戻ってあげて」


 エイミーめ。それで誤魔化したつもりか?


「えっ!? そうなの? うん! じゃあ急いで戻るね。じょーしゅさま。偶にはフィーアスにも遊びに来てね」


「ああ、分かったよ。今度遊びに行くから」


「絶対だよー!!」


 ラーワは元気よく返事して、皆の所に飛んで戻った。


「エイミー。ラーワ達は皆と仲良くやってるか?」


「ええ、ラーワちゃん達は妖精みたいで可愛いですから、すぐに皆のマスコットですよ。ナンちゃんの食べる姿も可愛いって、皆から食べ物を貰って、口いっぱいに頬張ってました。ミケちゃんも毛並みがいいですから、皆に触られまくってます」


「……それって、仲がいいってより、ペット扱いされてるんじゃ……」


 本当にそれでいいのか?


「ラーワちゃん達は嫌がってないですし、いいんですよ。そもそも、最初は相手がどんな人なのか分からないから、見た目で判断するしかありません。それで仲良くなったら、今度は本当のお友達になればいいんです。心配しなくても、あの子達ならすぐに本当のお友達になれますよ」


「……エイミー。お前、初めて良いこと言ったな」


 確かにエイミーの言う通りだ。初めての――まして相手が魔族だと、どう接していいか分からない。ましてや、ラーワ達のように、身体的特徴がハッキリしているなら、そこを取っ掛かりにするのは仕方がない。要はそこからどうやって仲良くなっていくかだ。


「初めてって何ですか! 初めてじゃないですよ……多分。頻度的には多くないですけど……せめて偶にはって言ってください」


「……偶にでいいのかよ」


 しかも自分で多分とか言って……もっと自信持てばいいのに。


「まぁ私のことはいいんですよ! それよりも……これがシオンさんの目指していた夢なんですね」


「えっ?」


 いきなり何を言い出してるんだ?


「ほら、魔族も人間も……全ての種族が仲良く暮らせるようにって、言ってたじゃないですか。子供達とラーワちゃん達を見ていたら、こういうことなんだなって。このまま今の子供達が大きくなって、魔族に偏見が無くなったら、将来もっと仲良く……それこそ、フィーアスと城下町が、自由に行き来できるようになるんじゃないかと。シオンさんの夢は、今はもう私の夢でもあるんですよ」


 もしかしたら、一番フィーアスのことを見てきたエイミーには、俺以上に感慨深いものがあるかもしれない。


「じゃあ私も戻りますね。早く戻らないと、ナンちゃんが食べ過ぎで飛べなくなっちゃいます」


「ああ、あまり食べ過ぎないように見張っててくれよな」


 エイミーも頑張ってるんだな。俺はエイミーの後姿を見ながらそう思った。


「えへへ……シオンお兄ちゃん! 肩車して!」


「どうしたハンナ? 急に甘えん坊さんになったな」


 そう言いつつも、俺はハンナを抱えて肩車する。


「なんでもなぁい!」


 まぁハンナに甘えられるのは、大歓迎なんですけどね。


「ねえシオンお兄ちゃん! スーラちゃんの所にも行ってみようよ!」


「そうだな……結構時間も経ったし、行ってみるか」


 スーラハウスか。嫌な予感しかしないな。



 ――――


「……やっぱりいたよ」


 広場に造られたスーラハウス。そこに陣取っていたのは、自称親友さんのリースだった。


「姉ちゃん。それ何個目だよ!」

「リース姉! そんなにボールを集めたら、僕達が投げる分が無くなっちゃうよ!」

「お姉ちゃん! お姉ちゃんは大きいんだから、あまり跳ねると怖いよ!」


「嫌ですわ! こんな可愛らしいスーラちゃんボールを投げるなんて、集めてコレクションにするんですの。ああ……スーラちゃんの中ってこんなにも暖かくて楽しいものなのですね」


 スーラハウスのトランポリンで、はしゃぎながら、一人でボールを抱え込むリース。


「もう! おい、皆で姉ちゃんに攻撃して追い出すぞ!」

「でも弾を取られてるから、攻撃手段がないよ」

「大丈夫、弾はお願いすれば沢山降ってくる。お願い! 弾頂戴!!」

「あっ本当だ! いっぱい降ってきた!」

「よし! 姉ちゃんを一斉攻撃だ!」

「「「おおー!!」」」


「ちょっ!? 一斉攻撃は卑怯ではありませんか?」


《ラクウェルちゃん。独り占めは良くないの。一旦外に出て入りなおすの》


「えっ? スーラちゃん?」


 突如リースのいた場所に穴が開き、リースがすっぽりと穴に落ちる。


「そんなぁ……スーラちゃあああん!!」


 穴は滑り台になっていたようで、リースはそのまま滑って……俺達の前まで降りてくる。


「……おい。お前は一体何をやってるんだ?」


「えっ? ……あっ、自称スーラちゃんの相棒さん」


「自称じゃねーよ! お前こそ、自称スーラの親友だろうが! ってか、俺はお前に子供達の見張りを頼んだはずだぞ。何で子供達の邪魔してるんだよ!」


「あっ、いえ、最初はちゃんと見張っていたのです。ですが……スーラちゃんが催し物を始めたと聞きまして、居ても経っても居られず……」


 本当にこの娘は……スーラのことになると、おかしくなるな。


「あのなぁ。リースがスーラのこと大好きなのは知ってるけど、もっと他の人とも仲良くなった方がいいぞ」


 せっかく友達の良さを知ったんだ。スーラだけじゃなく、他の人とも仲良くなるべきだ。


「あら、私だって、お友達は増えましたのよ」


「……そうなのか?」


 それはそれで驚きなんだが……。


「その奇特な人は一体誰なんだ?」


「奇特って!? 随分失礼ですね。私の親友二人目はアイラさんです!」


「ア、アイラ?」


 また、予想外のところと繋がったな。……いや、この間まで砂漠で一緒に修行していたから、仲良くなってもおかしくはないか。

 しかし、あの場にはデューテや姉さん、リュートなど他の人もいたはずだ。何でアイラなんだろう?


「ええ、アイラさんとは、寝食を、そしてあの辛い修行の苦楽を共にした親友ですのよ。それに、私の話を黙って真剣に聞いてくださいましたの!」


 ……アイラは基本寡黙だからな。リースが勝手に話しまくってただけじゃないのか? まぁそれでも打ち解けようとしているのは良いことかな。


「……貴方には感謝してるんですよ」


 少し照れたようにリースは言う。


「……どうしたんだ。いきなり」


「兄様と私を解放してくれたこと。兄様は貴方のお陰で、もうギルドの言いなりになることはなくなりました。感謝してもしきれません」


「リース……」


「それに、私はスーラちゃんと親友になれました。アイラちゃんもいますし、きっとまだまだこれからも沢山お友達が増えます」


 今まで苦労ばかりしてきたんだ。リースはこれから青春を楽しむんだろうな。


「……今度、スライムの仲間が大勢いる第二の島を案内しようか?」


「本当ですか!? ……いえ、別に私はスライムとお友達になりたいわけではなく、スーラちゃんがいれば……本当に案内してくれるのですか?」


 めちゃくちゃ気になってるじゃねーか!


「ああ、いいぞ」


「では、それを楽しみにしています。では、私はもう一度スーラちゃんの中へ……今度は負けませんわよ!」


 リースは走ってスーラの中へと入っていった。……何と勝負してるんだろうか?


「ハンナもスーラハウスで遊んでいくか?」


「ううん。皆楽しそうだから大丈夫!」


 確かに子供達はリース相手に楽しそうにスーラボールを投げ合っている。同じ目線で遊んでくれる大人がいるのは、子供達にとってもいいかもしれないな。


「ねぇ、シオンお兄ちゃん。スーラちゃんのお友達が沢山いる島があるの?」


「ああ、色んなスライムがいっぱいいるぞ。あと、もふもふなワンワンも沢山いる」


「……シオンお兄ちゃん。私もその島行きたい」


「じゃあ、今度はその島に行こうか」


「うん!」


 どうせ近いうちに視察には行くんだ。その時に、リースとハンナも誘ってあげよう。


「そういえば、アイラお姉ちゃんもいるんだよね? どこにいるのかなぁ?」


 リースとの会話で、アイラの名前が出てきたからな。ハンナも気になったのかな?

 アイラは多分、俺達の中で、一番孤児院に顔を出しているはずだ。ハンナも俺とラミリアの次にアイラに懐いている。


「この遊園地のどこかにいると思うけど……まぁ遊びながら探してみようか?」


「うん! だから、シオンお兄ちゃん! また肩車して!」


「おっ? また肩車か?」


「高い方が探しやすいもん」


「そっか。じゃあ……」


 よいしょとハンナを持ち上げる。さて、アイラを探しますかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ