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ロストカラーズ  作者: あすか
幕間
353/468

日常編 ゼロの旅立ち

「シオン。今回は世話になったな」


「いや、俺の方こそ色々と助かったよ」


 久しぶりにゼロに誘われたので、俺達は二人で酒を飲んでいた。


 二人で飲むのは、青の国に出発する前以来だな。……思えば、あれが今回の全ての始まりだったな。


「結局、旅行は殆ど楽しめなかったな」


 男だけの気兼ねしない旅行。結局、十日の予定が、二泊三日で終わってしまった。しかも、釣りしかしてない。バーベキューすらやってないよな。


「ああ、すまん」


「別にゼロが謝る必要はないさ。旅行以上に大事なことが出来ただけなんだから」


 海を助けることが出来た。それだけで、旅行分の価値があったってもんだ。


「だけど……全部終わったら、またあのメンバーで行きたいよな」


 あっ、でも、次は流石にリュートも誘わないと、今度こそ拗ねてしまうよな。ラースは……いや、絶対にリースがついて来るから無理だな。


「そうだな。シオンには釣り勝負の借りもあるしな」


「……まだ覚えてるのかよ」


 だが、他の奴と違い、ゼロは三百キロ級のマグロを釣ったんだ。流石に完敗だ。


「まぁ確かにあれは俺の敗けだ。よし、俺に出来ることがあれば、何でも言うこと聞くぞ」


「では頼みがある。お前達が今開発している島。俺が管理する島があったよな?」


「第四の島だな」


 まさか管理を降りるって言うんじゃ……? いつもの面倒くさいが発動するのか?


「天使との決戦が終わってからでいい。あの島を俺にくれないか?」


「はぁ?」


 島が欲しい? まさかそんな話をされるとは思わなかった。しかし何であの島……。


「理由を聞いてもいいか?」


 今のゼロがこだわる理由は一つしかないから、何となく予想はつくが、はっきりと聞いておきたい。


「あの島がティアマト様のいる竜宮城に近いからだ」


 やっぱり。


「ゼロは……夜魔城に戻らないのか?」


「戻るもなにも、元々俺は隠居した身だ。隠居場所を移すと思えばいい。それに、トオルに頼めば、夜魔城とゲートを繋いでくれるだろうよ」


「なんだ。じゃあ今と変わらないじゃないか」


 結局転移があれば何処にいてもそう変わらない。心配して損した。


「俺も、我が父と同じく、トオルの助けがないと、海中で過ごすことはできんからな。それならば、せめて近くにいたいと思っただけだ」


 全く献身的なことで。


「しかし、あの島に一人で住むのは大変だな。カミラ達も移住させるのか?」


「いや、カミラにはカミラの暮らしがある。と、そうだ。カミラ達だが、次の戦争には参加させぬことにした」


「えっ? そうなの?」


 結構な戦力として期待してたんだけど……ってか、それなら第四の島はどうなるの?


「ああ。トオルが言うには、ドライにだけ戦力を集中させるのは危険と言うんだ」


 そういえば、俺の正体に気づいてる可能性があるから、シクトリーナを無人にするのは危険って言ってたな。同盟は公表してるから、夜魔城にも来る可能性があるのか。だとしたら、無理してドライに来てもらうことは出来ないな。


「だから、俺は部下を呼ぶことにした」


「ゼロの部下? カミラ達以外で? ……あの、なんちゃってレイスか?」


「おそらく貴様が言ってるのは、フレアのことだろうが……。アレはなんちゃってではなく、ちゃんとしたレイスだ。そもそもこの流れ、旅行前にもしたぞ。いい加減、名前を覚えてやれ」


 ……確かに旅行前にも殆ど同じ会話をした記憶がある。


「だけどさ。俺はあのレイスと一回しか会ってないんだ。名前だけ聞いても、流石に覚えられないよ」


 俺がフレアに会ったのは、最初にゼロに会いに行った時だけだ。その時も、エキドナがあしらっただけで、俺は会話もしてない。

 泣くと幼女化するって面白要素がなかったら、存在すら忘れてる自信がある。


「一度しか会ったことが無いと言うが、フレアはよくこの城に遊びに来てたと思うが?」


「それは、遊びじゃなくて、メイドの研修だろ? 流石にメイドの研修に顔は出さないぞ」


 顔を出したところで、追い返されるに決まってるしな。


「そうか。シオンはあの時しかフレアと会ってないのか。では今度挨拶するように言っておく」


「いや、わざわざ挨拶なんていいよ」


 幼女化するのは面白かったけど、実際に話すとなると、面倒くさそうだ。というか、今後もあまり接点はないに違いない。


「まぁ無理にとは言わんが……。トオルとはよく遊んでいるようだぞ」


「なに? トオルと?」


 初耳だぞ。一体どんな繋がりなんだ?


「ああ。トオルにはよく懐いているようだ。一時期は、もうひとつの人格になる度に『トオル君に会いに行ってくる』と飛び出してたぞ。そして、毎回途中でエキドナに追い出されて、泣きながら帰ってきていた」


「なにその面白イベント」


 自分でやるには勘弁して欲しいが、端から見るとすごく楽しそうだ。

 そもそも、トオルにそんなイベントが発生していたことに驚きだ。


「どうやら、トオルはフレアを妹のように可愛がっているようだが、エキドナがそれに嫉妬して……のようだ」


「妹のようにねぇ? そもそもトオルはフレアのことが嫌いっ言ってたぞ。そもそもそれが理由で喧嘩を売ったのに、いつの間に仲良くなったんだ?」


 トオルも俺と同じく、最初の一回しか会ってないはずだが?


「俺の勘違いでなければ、喧嘩を売ったのは、トオルではなく、シオン。貴様だった気がするんだが? それから、トオルは謝罪に来た際に、フレアと話をしているぞ。戻ってきたフレアが『トオル君に遊んでもらった』とはしゃいでいたからな」


 ああ、謝罪はエキドナに任せてたから、俺は行ってないけど、トオルは行ったのか。


「あれはトオルに言われて喧嘩腰になっただけだ。……今だから言うけど、あの時は殺されるかと思って、内心は冷や冷やだったんだぞ」


「そのわりには、俺をジジイ呼ばわりした上に、呪いまでかけやがって。あれの解呪は苦労したぞ」


「……俺の【毒の契約】を自力で解呪したのは、後にも先にもゼロだけだよ」


 しかも、あれは全力以上のドーピングをした上でだ。それを聞いて、絶対に敵わないと思ったもんな。


「あの時の貴様はまだ弱かったからな」


 弱いって……。一応魔王のヘンリーよりは強かったんだけど。


「……それが、今や俺より強くなるとはな」


「強くって言っても、魔力だけだろ。経験や知識を考えると、ゼロにはまだ勝てる気がしないよ」


 あと、エキドナにも。ティアマトだって、理性がある状態ではどうなるか……。俺もまだまだだよな。


「っと、話が逸れたな。んで? 結局、フレアと二人であの島に住むのか? 結構大変だと思うぞ」


「誰が二人と言った」


「えっ? でも、カミラ達じゃなくて、ゼロの部下って、フレアしかいないんじゃ?」


「そんなわけあるか。俺だって、元は魔王だったんだ。俺に従う幹部はそれなりにいた」


 ……そういえば、ずいぶん昔――ゼロに会いに行く前に聞いた気がする。ゼロが魔王を引退した際、幹部はヘンリーに従わず、ゼロと一緒に去っていったって。

 んで、ゼロから聞いたヴァンパイアの説明では……。


「なぁ。その幹部って確か……」


「エルダーヴァンパイア。第三世代のヴァンパイア達だ」


 やっぱり!


「……それって、ヘンリーやカミラより強いんじゃ?」


 第四世代のヴァンパイアのヘンリーやカミラよりも上の世代。……弱いはずがない。


「当然だな。それどころか、魔王に引けを取らん者もおる。名前付き天使にだろうが負けはせん」


「おいおいおい。めちゃくちゃ強力な戦力じゃないか! ……協力してくれそうなのか?」


「知らん。これから交渉するんだからな」


「交渉……これから?」


「奴らは俺が隠居した後に各々の道を進むと言って、散っていった。頻繁に便りを寄こすものもいれば、俺が隠居して二百年、全く連絡しない奴もいる。竜魔王にケンカを売って返り討ちにあった奴もいたな」


 おいおい、危ない奴じゃないよな?


「ああ、そういうわけでシオン。俺はしばらくの間留守にする。あいつらを探すところから始めるから……一ヶ月。いや、二ヶ月は帰ってこん。だが、心配するな。天使との戦争前には必ず戻る」


「はぁ!? いや、そんな急に……第一島の開発はどうするんだよ?」


「トオルに任せる。細かな所は、カミラかフレアに聞けば、俺の好みに仕上げてくれるはずだ」


 おいおい、マジかよ。


「シオン。貴様には俺が不在の間、ティアマト様をお任せする。もし、ティアマト様に何かあれば、ただでは済まさんからな」


「いやっ!? 俺、そもそも一人で海に入れな……」


「よし、では行ってくる!」


「えええ!? 今から行くのかよ!」


 これからって今からって意味だったのかよ!


「善は急げだ。元々近日中に出る気だった。だが、今シオンと話して興が乗った」


 いや、興が乗ったって……。話ながら、テンションが上がったから、思わずってことだろうが、急すぎないか? って、俺が考えている間にもう居なくなってるし……。


 にしても、エルダーヴァンパイアか。楽しみであり、不安でもあるな。ゼロが上手く手綱を握るんだろうけど……。でもまぁ本当に来てくれるんなら、対天使への強力な戦力になるのは間違いないな。期待して待つことにしよう。

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