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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第263話 ファントム会議をしよう②

 天使の派閥。それから名前付き天使の人数。

 ガブリエルもラファエルも、派閥争いで、躍起になってここに攻めてくる可能性がある。

 元々七大天使を含む全軍と争うつもりで今回の作戦を考えていたが……。


「予想以上に名前付きの天使の数が多いな」


 正直五十人以上は予想外だ。俺は半分の二十人程度だと思っていたぞ。


「でも、名前付き天使は全員サハクィエルと同じくらいの強さよ。貴方達なら楽勝じゃない?」


 楽勝って……。まぁあの戦いを見ていたらそう思うのは無理ないか。


「無茶言うな。正直あのレベルの魔法が使えるのはゼロとエキドナくらいだ」


 サハクィエルを倒せるとなると、トオルやデューテ、姉さんでも可能だろう。だが、さっきの魔法は規格外だ。あのレベルとなると、対抗できるのはエキドナとゼロくらいだろう。


「そういえばファントム四天王って言ってたわね。その二人と、あと一人は誰なの? シオンさん?」


「いや、俺じゃない。ルーナだ」


「へっ? わたくしですか?」


 ルーナが本気で驚いている。まぁ勝手に四天王になってたら驚くよな。


「ああ、どうやら現魔王が四天王らしいぞ」


「そうなのですか!? って、それではティアマト様とゼロ様は四天王ではないではないですか!」


「でも私よりも姉さまの方がお強いですし、四天王になるなら姉さまの方が良いと思いますよ」


 テティスはやんわりと四天王を辞退する。


「そういえばカミラはまだ来ていないし、代わりにゼロが四天王になるのか?」


「俺はそんな面倒なのは嫌だぞ。どうせその内カミラが来るからカミラでいいではないか」


 やっぱりゼロは遠慮するか。まぁ本当なら隠居した身だもんな。


「というか、そもそも四天王とか必要なのか?」


 俺は最初から考えていた疑問を口に出してみた。ここには魔王に以外にも強い人はいる。あえて四天王なんて作る必要はないだろう。


「うーん、既に天使に四天王のことは敵に伝わってると思うから、一応きちんと考えた方が良いかもしれないね。それに、人数も増えて来たし、四天王以外にも各部署の役職や呼び名は必要かもしれないよ」


 そっか。通信で四天王の話は既に聞かれているのか。……体裁だけでもあった方が良いのかもしれないな。……シクトリーナのメイド隊みたいな部隊を考えないといけないのかな?


「俺は島にも名前がないのはどうかと思うぞ。いつまでも第一の島じゃ格好がつかん」

「妾は名前付き天使って呼び名は面白くないと思うのじゃ。何かよい呼び名はないのか?」


 ゼロとエキドナがここぞとばかりに意見を出す。

 でも……うん。島の名前も、天使の呼び方もずっと気になってた。

 でも……名前を付けるのって苦手なんだよな。……あっそうだ!


「よし、じゃあ島の管理者に、自分の島の名前を決めてもらおう。中央の島はルーナな」


 これなら俺は決めなくていいから、文句も言われない。自分で考えるんだから変な名前も付けれないだろうしな。


「……じゃあ島の名前は個人で考えることにしようか」


 意外や意外。まさかのトオルが賛成してくれた。言っておくが、第一の島はトオルが考えるんだぞ?

 そして他の人からも文句は出ない。皆何か考えていたのかな?


「じゃあ名前を考えないで済むシオンくんが、天使の呼び名と、四天王や他の役職を考えてね」


「ちょっ!? なんで俺が役職を考えるんだよ!」


 そういうのって皆で考えるんだろ?


「だって僕達は島の名前の方で忙しいしね。それにシオンくんがこのチームファントムのリーダーじゃないか」


 いやいや、島の名前一つだけだろ? 俺だけなんか多くない?

 それに、チームファントム……。いつの間にかチーム名まで決まっていた。ってか、やっぱり俺がリーダーなのか。いや、薄々は感じていたよ。でもさぁ……面倒だよなぁ。


「……じゃあ考えておくけど、俺が決めるってことなら、どんな役職を押し付けられても文句言うなよ」


 やりたくなかったとか、そんな話は受け付けるつもりはない。


「まぁどんな肩書を得てもやることは変わらないしね。シオンくんの城主みたいなものだよ。ただ、センスが問われるけどね」


 ……肩書が増えても仕事が増える訳じゃない。俺の城主みたいなもの……。俺のセンスだけどか理不尽じゃね?

 まぁ役職や名前決めは会議が終わった後に考えることにしよう。



 ――――


「さて、敵の戦力はリカくんのお陰で把握できた。ただ、今までは敵がいつ頃来るか、どの程度の規模で来るか。ある程度情報があったけど、次はいつ、どの程度の規模で来るか。情報は全くなくなっちゃった」


 ルーアンの時は立地的なところから一ヶ月程度で来ると予想が出来た。今回はリカとヒミカのお陰で、飛行船を使うことと、出発の時期が分かった。


 でも、次はどうなるか分からない。また偵察隊が来るのか、それとも本隊が来るのか。来るのはガブリエル派なのかラファエル派なのか。はたまた同時に来るのか。

 そして、来るにしてもいつ来るのか。すぐに来るのか、それとも一年後なのか。敵の情報は全くない。


「うう……本当に申し訳ありません」


 ティアマトは申し訳なさそうに謝る。全滅させたことを気に病んでのことだろうが、これはあまり関係ないよな?


「別にティアマトくんを責めてる訳じゃないよ。たとえ生き残りがいたとしても、盗聴器を仕掛ける余裕はなかったから……。どちらにしても、状況は変わらなかったかもね」


 確かにあの場にトオルは居なかったのだから、盗聴器を仕掛ける余裕はなかった。まぁトオルならそれでも何かしら考えていたかもしれないしな。……この状況も考えてなかった? もしかしたら実は対策済みなんじゃないのか?


「……天使はこれからどうすると思う?」


 とりあえずトオルが何を考えているか知る必要がある。


「とりあえず、同じように偵察隊を派遣することはないと思うんだ。また全滅するのが目に見えてるからね」


「ああ、俺もそう思う」


 それは俺も同じ考えだ。


「問題はいつ、どんな規模でってことだよね。正直何も分からないよ」


 流石のトオルも予想が立てられないか。


「で? 今は何待ちなんだ?」


 予想が立てられないのは何かを待ってるからだ。それ次第で対策を考えるに違いない。


「……一応機能するか分からない保険はあるけどね」


 やはり何か仕掛けていたか。


「その保険って?」


 素直に教えてくれるのかな?


「ほら、あの時ヒミカくんやリカくんに盗聴器を仕掛けたじゃない」


 トオルがそう言うと、リカとヒミカが素早く反応した。


「そういえば全部聞かれてたのよね。女性に盗聴器を仕掛けるなんて最低よ」

「あああっ思い出させないで! 恥ずかしい」


 二人には笑い事じゃないもんな。特にヒミカは色々と暴露されたし恥ずかしい気持ちは分かる。


「でもその盗聴器はケータイと交換したし、第一二人はここにいるんだから、もう盗聴器はないんじゃないのか?」


「そうだね。二人の盗聴器はもうない。……けど、あの時回収されたのは、二人時だけじゃないよね?」


「……まさかっ!?」


 あそこにいた二人以外の人間って言ったら……。


「トビオくんの死体にも盗聴器は仕掛けていたんだよ。教皇の所に連れて行かれたそうだから、もしかすると話が聞けるかもね」


 コイツ……死体にと言ってるが、実際に仕掛けたのは死体になる前の筈だ。おそらくヒミカとリカに付けた時に一緒に付けたんだろうな。全く抜け目がないというか何というか……。


「それだけじゃないでしょ。貴方のことだからスバルにも付けてるわよね?」


 リカがトオルを責めるような口調で聞く。確かに……トオルならやりかねない。


「うーん。これはあまり言いたくなかったんだけど、確かにスバルくんにも盗聴器は仕掛けたよ」


「言いたくない理由を聞きましょうか? ……辛いことは分かってる。スバルはどうなったの?」


 俺は分かってないが、リカは何かを察しているようだ。


「……ガブリエルが何かヒントがあるかもって、教徒に解剖させて、特に何も見つからなかったから、そのまま死体置き場に廃棄されたよ」


「酷い……」


 ヒミカが悲しそうに呟く。俺も聞いてて思わず顔をしかめた。


「そう、ありがと」


 リカは無表情で呟く。ヒミカのように悲しむわけではない。怒り狂う訳でもない。それが逆に怖かった。……一体何を考えているんだ?


「辛いだろうけど、話を戻すね。トビオの死体の方は教皇に献上されたんだよ。この会議が終わったら、盗聴データを確認するよ。何か分かったらいいんだけど、分からなかったらお手上げかな。その時は潜入捜査も考えないとね」


 流石のトオルもそれでネタ切れか。


「なら、今後の方針はトオルの情報待ちってことで、今はまた城塞都市開発に戻っていいかな?」


「そうだね。まずは城塞都市を完成させないと話にならないしね。ただし、今後は今まで以上に警備を強化しようよ。場所も完全にバレちゃったから、隠密に長けた天使が潜入するかもしれないしね」


「では、海の見張りは妾達に任せてくれませんか?」


「うん、ティアマトくん達が手伝ってくれると助かるよ」


「トオルよ。妾も空から見張りをした方が良いか?」


「うん、エキドナには最初から頼むつもりだったよ。その辺りの打ち合わせは帰ってから、ハーマインくんとも相談しようか」


「うむ。妾も久しぶりにシンフォニアに帰りたいしの」


 どうやらトオル達はこの後一旦シンフォニアに戻るようだ。どんなに早くても数日は敵には動きはないだろうし、問題ないだろう。


「じゃあ俺達もシクトリーナに一旦帰ろうか」


 だから俺も帰ることにした。またすぐに忙しくなるだろうし、少し位ゆっくりしても良いだろう。


「はい。それではアレーナに食事の準備をさせますね」


 アレーナの作った食事か。久しぶりだから楽しみだな。

 俺達は解散して、それぞれの居場所で、久しぶりに安息を迎えることにした。

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