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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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第256話 条件を提示しよう

 二人の亡命を手助けする三つの条件。


『なに? 言っておくけど、出せるものって言ったら、私の体くらいしかないわよ』


「だから自分を安売りするなって前にも言っただろ。そんなんじゃなくて、もっと普通のことだ」


『……なに?』


 さっきよりも若干不機嫌な声になった。まぁ普通は怒るよな。


「まず一つ目。今までのような悪事は今後働かない。俺達だけじゃなく、どんな相手にもだ」


『まぁ元々ヒミカは悪いことしてないし、私も少し憂さ晴らしって感じで、やりたい訳じゃなかったから別にいいわ』


「別に……じゃなくて悪いことしたって、反省してほしいんだけど」


『なに? これでも悪いとは思ってるのよ? それとも形で現さないと駄目? 被害者に土下座しようか?』


 言い方が全然反省してるように聞こえねーんだよ! まぁこれは今後の生活態度次第だろう。


「二つ目は、天使の能力を捨ててもらう」


『あら? 亡命じゃなくて捕虜扱いなの?』


「別に魔法の使用を禁止する訳じゃない。まぁリカの魔法は人間相手に使用して欲しくないがな。じゃなくて、天使が駄目なんだ。いつ体を乗っ取られるか分からないし、天使の能力を利用されかねない」


『まぁ仕方ないでしょうね。最後の一つはなんなの?』


「二人に契約の呪いをかけさせてもらう。日常生活に影響はないが、二つの条件が破られたら呪いが発動して死に至る」


『物騒ね』


「別にそこまではないさ。約束を守って悪いことをせずに、天使の英霊を手放せばいいんだからな」


『その呪いはどうやってかけるの?』


「二人が許可を出したら、このケータイの能力を使って、カプセルを二つの送る。それを飲めば契約は完了だ」


 俺の【毒の契約】をカプセルにして二人に飲ませる。カプセルだから、ケータイよりも小さくて送ることも出来る。


『ちょっと! それじゃあ天使の能力をどうやって手放すの! 自力じゃ手放せないわよ』


「慌てるな。カプセルを飲んだ時点で契約は完了だが、発動はしない。発動はこっちに来てから、天使を剥がして、発動させる。ただ、こっちに来てから暴れられてもらったら困るから、保険で先に飲ませるんだ」


 そのために、錠剤じゃなくて、溶けないカプセルにした。二人がこっちに来たら、俺がカプセルを割ればいい。


『……飲んだ振りをしたら? こっちの状況は見えないんでしょ?』


「転移魔法に、体内にカプセルがないと、転移できないような仕組みを施してある。こっちに来るためには、絶対に飲まないと来れない」


『用意周到だこと』


「当たり前だ。まだ完全に信じたわけでもないし、天使の力はいつ暴走するかも分からない。出来る限りの準備は怠らないさ」


『そうやって、私達が来るのを待ってたのね?』


「そういうことだ。それで? 条件を飲むか?」


『流石にヒミカに相談しないと駄目だわ。少し時間を頂戴』


「分かった。話がまとまったら、リダイヤルをすれば俺に繋がる。使い方は大丈夫だよな?」


『当たり前でしょ。これでも去年までは女子高生だったのよ。スマホくらい使えるわ。それよりも通話以外のアプリは使えないの?』


「メールとカメラ位だな。ネットには繋がってないから、アプリをダウンロードすることは出来んぞ」


『面白くないわね。色々と落としときなさいよ』


「無茶言うな。それよりも、充電出来ないんだから、無駄に使わない方がいいぞ。俺から連絡することはないから、普段は電源を切っといた方がいいかもな」


『はぁ!? ちょっと! 充電器も渡しなさいよ』


「そのケータイを送るだけで精一杯だったんだ。まぁ節約すれば数日は持つだろうよ。だから、早く結論を出して、電池がなくなる前に連絡することだな」


『分かったわよ。じゃあ話し合いが終わったら、連絡するわ』


「あっ、最後に一つ。通話が終わったら、後ろの電池パックを開けといてくれ。部位欠損を治せるエリクサーを送る。これは条件を受けようが断ろうが、勝手に使ってくれて構わない」


『それ……使うときは、足を切らなくちゃいけないんでしょ? 嫌よ』


「じゃあ使わなければいいさ。もしくはヒミカに渡してやれ。足を治す魔法のヒントが得られるかもしれない」


『……そうね。私の足はヒミカが治してくれるから、ヒミカに渡しておくわ』


「まっ、無理そうだったら、俺が麻酔魔法で痛みをなくしてから切断してやるよ」


『……貴方やっぱり危ない人なんじゃないの?』


「失敬な。親切で言ってやってるんだぞ」


『分かったわよ。じゃあ多分今晩にでも連絡するから』


「了解」


 そう言って通話を切った。後は二人がどんな判断をするか……それは任せることにしよう。


「この男は随分と親し気に話してやがりましたね。フラグを立てた人とは、別の人ですよね?」

「一人じゃ満足できなかったってことっスかねぇ?」


「……さっトオル。ラピスラズリの元に向かおうか!」


 このままここにいては、また色々と言われてしまう。俺はさっさと出て行くことにした。



 ――――


 シクトリーナで、ラピスラズリの二人はまだ砂漠にいると聞いたので、俺とトオルはアインス砂漠までやって来た。


「俺の魔法でも、無い物は作り出すことは出来ない」


 二人に会うや否や、リースは俺からスーラを奪取し、愛でる時間に突入した。しばらくは話を聞いてくれそうもないので、ラースから話を聞くことにしたのだが……。


「そっか……ラースでも無理か」


 出来るかも……と期待したが、どうやら無理のようだ。


「ねぇ。ラースくんはどうやって幻を映してるんだい?」


「俺の魔法は別の場所に存在しているものを、任意の場所に見せることが出来る魔法だ」


「蜃気楼のような感じなのかな?」


「そうだな。ほぼ同じだと考えていい」


 蜃気楼か。砂漠の何もない場所にオアシスが見えるってイメージがあるけど……あれって、別の場所にあるオアシスが光の屈折やらなんやらで見えるんだよな?

 ラースの場合、原理は違うだろうが、魔法でイメージするんだったら、原理なんて知らなくてもいいんだろうな。


「そういえば、あの時は姿も消してたよな? 消えてても幻を出せるのか?」


「あれは光の反射で姿が見えないようにしているだけだ。実際に消えている訳ではない」


 そうなのか。光の屈折なら動いたら見えそうだけど、それも魔法のなせる業なのかな?


「ラースって青の属性で、水魔法なんだよな? なんでそんなことが出来るんだ?」


「シオンくん。水の入ったコップの中に硬貨を入れたら、硬貨が消えるって手品知らない? 多分似たようなものだよ」


 何故そこでトオルが説明するのか……まぁ間違ってはいないんだろうな。


「まぁってことはラースもゼロと同じように、第一の島の城塞都市を見えなくすることは出来るけど、城塞都市の幻を出すことは出来ないってことか」


「そんなことはない。第一の島と同じ城塞都市を第四の島に投影させることは可能だ」


「そんなことが出来るのか!?」


 別に城塞都市が投影されるのなら、同じ都市でも問題ない。ってか、遠目ではまず気がつかれない。


「だが、中央の塔は無理だ。元がないんだからな」


「塔だけならハリボテでも間に合うと思うよ。それで……どのくらいの時間持ちそうだい?」


「持って数時間といったところか。魔力回復ポーションを飲みながらでも、精神的に半日が限界だろう」


 思ったよりは持ってくれそうだが、それでも半日か……。偵察隊を瞬殺したとしても、正確な到着時間を知らないといけないな。

 しかし、飛行船を偵察するとなると……ホリンか、エキドナに頼んでヒポグリフか……ゼロの蝙蝠ってのもあるが、隠れる場所がない大空で偵察は危険すぎる。相手に見つかって、警戒されてしまうのがオチだ。


「……トオルの透明魔法で姿を消して偵察したらバレないかな?」


「どうだろうね? 恐らく白の国同様、一定範囲内に魔物や魔族が入ったら、間違いなく気がつかれると思うよ」


 だよなぁ。


「それよりも、下から見張れば十分じゃないかな?」


「下から?」


「海からだよ。ティアマトくんとテティスくんに頼んで、見張りの魔物をだしてもらおうよ。流石に飛行船から、海の魔物を倒しには来ないでしょ」


 確かに空からの偵察よりも、海からの偵察の方が安全そうだ。海から見えないレベルで飛んではないだろうしな。


「じゃあ、次はティアマトの所にお願いに行こうか」

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