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ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
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閑話 十頭卑弥佳③

今回までが閑話となります。

「リカはプラナ様と教皇様に復讐するために、あんな報告をしたの?」


 シオンさんの話が罠だと知っていて、それでもそのまま報告したのは、つまりそういうことだろう。


「名付き天使よりも強く、プラナ様が気にする冒険者。あの人ならプラナ様を倒せるかもしれないからね」


 本当にそれだけなの? あわよくば、トビオを殺したシオンさんもやられることを願っているんじゃないの? ……いけない。悪い方にばかり考えてる。スバルがいなくなった今、残っているのはわつぃとリカだけ。リカを信じなくっちゃ。


「リカは……これからどうするの?」


「そうね。ここから逃げ出して、あの人に庇護でも求めてみましょうか?」


「庇護? シオンさんに? でも私達は敵だって分かってるんでしょ? 受け入れてくれるわけないよ」


「でも、ヒミカはあの人が敵だと知っても、好きな気持ちは変わらないんでしょ?」 


 リカの言葉に、私は返事に詰まった。好きとかじゃないけど……断じて違うけど……でも心の中では私はまだシオンさんを信じていたかった。


「まぁヒミカの恋は実らないと思うけどね。あの時やって来たメイド見た? すっごい美人だったよ。恋人だったりして」


「ちょっ!? ちょっと冗談は止めてよ」


 あのメイドさん。肌が白くて、とても綺麗だった。あんな人が恋人じゃ勝ち目なんて……って、そうじゃない。別にシオンさんに恋人がいても関係ないの!


「まぁ実らない恋かも知れないけどさ。もう一度会いに行くのはアリなんじゃないかな?」


「っとに! しつこいよ! 本当にそんなんじゃないんだから!」


 シオンさんはこの世界で出会った初めての日本人。それだけのはず。

 私はこれ以上揶揄われたらたまったものじゃないと思い、強引に話を逸らすことにした。


「ねえ、リカが本当にここから出て行くって言うんだったら、私も付いていく。でも……その足はどうするの?」


 リカの足はもう動かない。プラナ様もこのままじゃ治らないって言ってた。


「ねっ? どうしようか?」


 リカは軽口のように笑いながら答えるけど、無理してるのがハッキリと分かる。


「ホムンクルスの足になれば歩けるようになるってプラナ様は言ってたけど……」


「それは絶対にしない」


 リカはハッキリと拒絶した。


「ホムンクルスの足になったら、私の居場所がプラナ様に特定されちゃう。逃げようとしてるのに、特定されちゃ駄目でしょ」


 そっか。プラナ様は自身が作ったホムンクルスの居場所が分かるんだった。多分、リカがホムンクルスの足を手に入れたら、リカの動きは把握されることになるだろう。


「でも、歩けなかったら逃げることも……流石に私もずっと背負いながら、逃げ続けられないわよ」


 短時間ならそれも可能だろうけど、逃げながらずっとは多分無理。すぐに追いつかれちゃう。


「まっ、すぐに出て行くわけじゃないから、それは後で考えましょ」


「出ていくとしたら、いつになるのかな?」


「偵察が出発して、全滅するまでの期間かな。偵察中なら私達に注目する人はいない。全滅した後なら、今度は私達が駆り出される。だから、その間に出るわ」


「全滅するのは決定なの?」


「そりゃあ罠を仕掛けて待ってるんだから、偵察隊くらい全滅させることができないと、話にならないでしょ。それに、今回は隠密偵察じゃなくて、威力偵察だからね。必ず戦闘になるわよ」


 ファントムの基地はカラーズ大陸よりも遥か西。隠れて行動できる場所じゃないから、海からでも、空からでも絶対に見つかる。

 だから、今回の偵察は軽く攻撃を仕掛けて、敵の戦力を確認する威力偵察らしい。

 私は偵察って言ったら、隠れて行動することだと思ってたから、そういう偵察もあるんだと初めて聞いたときに驚いた。


「今回の偵察って飛行船を使って、空から行くんだっけ?」


「そうらしいわね。まぁあれを飛行船って言うのには抵抗があるけど……」


 私も飛行船を初めて見たときは驚いた。

 私達の知ってる飛行船じゃなくて、普通の船が空を飛んでるんだもの。宙に浮かぶ魔法結晶を使ってるらしいけど、日本人の私じゃ考えられない光景だったわ。


「……全滅するまで、何日くらい猶予があると思う?」


「出発が数日後で、辿り着くのに数日……早くて十日ってところじゃない?」


 十日……考えてる時間なんてないじゃない!


「分かった! 私それまでに頑張ってリカの足を治す!」


「……どうやって?」


「私のアリエルは癒しの天使。だから、足が動くようになる魔法を考えてみるわ!」


 実は既に回復魔法を試していたのだけれど、効かなかった。でも、そんなんで諦めちゃ駄目だ。プラナ様は足が死んでるって言ってた。なら、根本から作り治すような魔法を考えて……。


「本当に行けるの?」


「任せてよ! ……でも、もし魔法が出来なくても、私が頑張って背負っていくわ!」


「……ふふっ、じゃあ期待しておくわ」


「ええ! 期待してちょうだい!」


 リカの足は絶対に私が治す。絶対に一緒にここを出るんだ!

 そして、あの町に行き、もう一度シオンさんに会う。もしかしたら、プラナ様と戦うためにファントムの基地に行って、シオンさんは居ないかもしれない。

 でも、それならリカと気ままな二人旅に変えるだけ。そっちの方が良いかもしれない。だって、リカからシオンさんを守ることになるから。

 リカが本当にシオンさんを狙っているか、分からない。でも、私はリカも……そして、シオンさんも両方助けたい。その為に、私が出来ることは何だってしてやるんだ!

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