表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストカラーズ  作者: あすか
第六章 青に忍び寄る白
330/468

第250話 現場に急行しよう

 潮風亭に向かいながら、スーラから説明を聞いていた。


 スーラの話によると、トビオはスバルを殺す時に、自分のことをベラベラと喋っていたらしい。三人はトビオの魔法は全く知らなかったようだから、死ぬ前に自慢……いや、相手に後悔させるために話したんだ。


 昨日の三人の態度は、トビオを随分と虐げていた。それは恐らく日本にいた頃からに違いない。

 今回の凶行は、それの復讐だろう。今まで溜まりに溜まったものを吐き出したんだ。

 だからこそ、殺す前に色々と暴露したんだ。復讐を正当化するために……。

 バラバラに刻むのも、歪んだ性癖も、全て相手を傷つけるために……。


 トビオは、元々今回の旅で、三人を殺す計画を立てていたらしい。

 トビオの実力なら、三人まとめて殺すことも可能らしい。

 だが、復讐という名の歪んだ行為をするために、一人の所を狙っていた。


 昨日はリカが一人の状態で出会っていたので、リカを襲うことも出来たらしいが、二人を殺した後で、気分が高揚していて、止めたらしい。命拾いしたってことだ。


 スバルはヒミカとリカが出て行った後、トビオの部屋に行き、一歩も出歩くなと命令した。

 昨日の話の通り、言うことを聞かないなら足を折って縛りつけると脅した。


 それにトビオが反撃した形となった。


 トビオの属性は闇色らしい。それすらもスバルは知らなかったようだ。トビオが自慢げに語ったらしい。

 闇色……黒っぽい色なのか? 黒は本来は魔物か魔族しか持っていないはずの色だ。人間で持っているのはトビオだけだろう。なるほど、死のイメージに近そうだ。アズラエルを取り込めた理由かもしれない。


 トビオの魔法は、視界に入った人物を、念じるだけで相手を殺す能力らしい。

 視界に入っただけで殺すとか……どうやって防げばいいんだ?

 とりあえず、俺以外が視界に入らないようにしなくてはいけない。


 それ以外にも、腕だけ、足だけのように部分的に殺すことも出来るらしい。

 足を殺されたら、足が動かなくなる。死んでるから回復魔法も効かない。スバルの手足を殺した後、そう自慢気に説明したらしい。どうやらトビオは誰にもこの魔法について説明してなかったようだ。まぁ説明されていたら間違いなく危険視されていたに違いないもんな。


 あと、一緒に召喚されたサクもトビオが殺したらしい。そもそも、五人が召喚されたのはサクが天使の器に選ばれたかららしい。

 サクがトビオを虐めていたかは不明。だが、トビオにとってサクは鬱陶しい存在だったに違いない。ヒミカ達三人に慕われていて、トビオがこの世界に来れた理由。まさに物語の主人公のような人物だったんだろう。眩しくて……それが妬むようになって……殺したんだ。


 それよりも、サクがセラフィエルの器に召喚されたのか。召喚理由もスミレの時と似ている。……やはり、教皇が召喚主の可能性が高いな。

 ってか、サクが死んだのならセラフィエルの器がなくなった!? ……いや、相性がいい器がなくなっただけで、ケインのように、自我を失わせれば、別に他の人でも構わないはずだ。


《分かったことは、これくらいなの》


 いや、十分すぎるくらい情報が入ったな。

 特に魔法の種類が分かっただけでも価千金の価値がある。



 ――――


「リンはここで待機だ。逃げ遅れた人間がいないか、確認を頼む」


 宿の入口に辿り着いたので、リンとはお別れだ。トビオの魔法が、念じただけで死ぬんだったら、リンは連れていけない。周辺に人の気配はないようだから、上手く避難は出来ているようだが、それでも残っている人はいるかもしれない。


「分かったっス。シオン様も気をつけるっスよ!」


 足手まといになるのが分かってるから、リンは素直に従う。

 俺はリンに見送られながら中へと入った。


 宿に入ると異様な気配を感じた。結界とは違う。ただの気配だ。禍々しくも強力な……これが人間が出せる魔力なのか?


「スーラ、トビオはどこにいる?」


《三階の奥の部屋なの》


 三階か。俺達は二階に宿泊していたので、それよりも上か。

 俺は急いでフロアの奥の階段から向かうことにした。


「いやあああ!!」


 階段の下に辿り着くと、上階から女性の叫び声が聞こえてきた。

 今のは多分リカだな。すでにトビオと対峙しているみたいだ。

 俺は階段を一気に駆け上がり、三階へと向かった。


「うっ」


 三階に辿り着いた俺は、思わず顔をしかめる。そこはまさに地獄絵図だった。

 扉や壁は破壊され、大きなワンフロア状態。フロア中至る所に、血と肉片が飛び散っていて、ひどい臭いだ。


 人影は四人。これを作り出した男と、足元に、裸で四肢を切断されている女性。手足は見当たらない。恐らくフロア中の肉片と血が手足だったのだろう。これだけ大量の血を流しているんだ。

 四肢を切断されていた女性――スバルは既に事切れていた。


「シオンさん!」


 少し離れた場所にいたヒミカが、俺を見て叫ぶ。俺とトビオのちょうど中間……いや、俺の方に若干近い位置にいた。

 ヒミカはしゃがみこみ、リカを支えている。リカは……生きてはいるが、その場にへたり込んで動く気配がない。


「二人ともこっちへ!」


 そう叫ぶが俺が近づいた方が早そうだ。俺はヒミカの下へ駆け出した。


「また新しいバグが……」


 トビオが俺を見てブツブツと呟く。バグ? なんのことだ?

 それを考える間もなく、突如足に違和感を感じた。もしかして今の言葉って魔法の発動だったのか!? で、これが足を殺す……だが、足に感じた違和感は一瞬だけで、何も起こらない。あれっ? 今のが足を殺す魔法じゃないのか? 普通に動くし、痛みも何も感じない。平気そうなので、このままヒミカの元へ向かった。


「二人とも大丈夫ですか?」


「私は大丈夫なんですけど、リカが……」

「何でよ!! 何で足が動かないのよ!」


 どうやらリカの足が殺されたようだ。二人はまだトビオの魔法の効果を知らないのか?


「ここは危険です。ヒミカさん。リカさんを連れて逃げてください。ここは私が食い止めます」


「危険ですよ!」


「私なら大丈夫です。どうやら彼の魔法は私には通用しないようなので……」


 トビオの表情を見れば分かる。ひどく驚いた表情。まるで信じられないものを見ているようだ。

 そして、連続して、体の至ることろに感じる違和感。全て一瞬だけ感じて、すぐ消える違和感。

 さっきのは不発とかじゃなく、やはり死の魔法だったのだ。

 理由は分からないが、どうやら俺はトビオの魔法を完全に無効化しているようだ。状態異常無効化が関係しているのか?


「リカさんの状態を察するに、おそらく状態異常系の魔法でしょう。でしたら、さっきお見せしたアレが防いでくれてるのでしょうね」


 ここでも役に立つスミレのペンダント。アレとぼかしたのは、トビオを意識しているように見せるためだ。


「だから、彼は私に任せてください。それよりも早く……」


「逃げる? 何言ってるのよ! アイツがスバルを殺したのよ!! 絶対にぶち殺してやる!」

「リカ!! 動けないのにどうするのよ! 一旦立て直しましょ!」

「だから何で……何で動かないのよ!」


 半狂乱になっているリカを無理やり背負うヒミカ。暴れるリカを連れて脱出を試みる。

 俺はトビオとヒミカの間に入り、二人が魔法を受けないようにする。


「シオンさん。ありがとうございます」


 ヒミカとリカは無事に階段を降りていく。よし、これで邪魔者はいなくなった。後は目の前のトビオを倒すだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ